原晋監督「近い将来バトンタッチ」数年後引退示唆も3連覇、2度目3冠意欲「狙える」
青山学院大・原晋監督(57)が初優勝した15年以降で8度目の総合優勝を飾った。
04年の就任以来、常識にとらわれない発想で常に指導法をアップデート。学生長距離界のレベルを引きあげ続ける名将は箱根駅伝の未来にも思いをはせつつ、早くも来季の大学3大駅伝「3冠」と3連覇へ意欲を示した。
◇ ◇ ◇
8度目の優勝も格別だった。東京・大手町のゴール地点。原監督は選手たちの手で8度宙を舞った。「最高です。これほど幸せなことはない」。優勝回数と合わせた胴上げに「私も重いので。気分的には天高く上がっていったけど、6回目くらいからは『そろそろ辞めよう』と言って」とほほ笑んだ。
近年は胴上げの高さこそ低くなってきたが、学生長距離の天井は押し上げ続けてきた。十数年前は1万メートル28分台のランナーは主流ではなかったが、当時から「チームで10人そろえる」と明言。実際に22年大会では、史上初めてチームエントリー16人全員を28分台のランナーで並べた。「常識を変えることが大切」。全体でも1万メートルのレベルは上昇。27分台の選手は前回大会で11人だったが、今大会は20人に上った。青学大も2区黒田朝日、3区鶴川正也、5区若林宏樹と過去最多となる3人が27分台。いずれも区間1桁台前半と好走した。「当たり前の基準が上がってきた」と実感する。
箱根の区間距離のほぼ倍となるマラソンへも、在学中から積極的に挑戦させる。「駅伝を通じて、30キロを走る距離は仕上がっている。残りの10キロなんて楽勝」。箱根でリセットするのではなく、2月以降のマラソンを視野に入れた指導を実践。昨年は10人が挑んだ。今大会4区区間賞の太田も挑戦する予定だ。
3月に58歳となる名将はビジョンにも言及。「近い将来に監督をバトンタッチする。強化を続けながら引き継ぎもしていく」と数年後の引退も示唆した。ただ、意欲は衰えない。「3連覇のチャンスがあるのは私たちだけ。狙えない布陣ではない。2度目の3冠も目指す」。黄金時代はまだまだ続く。【藤塚大輔】
青学大の連覇もたらしたのは…トガった個性派集団の4年生たち 田中悠登主将明かす
青学大が10時間41分19秒の大会新記録で、2年連続8度目の総合優勝を飾った。2位駒大に迫られる場面もあったが、復路は1度も首位を譲らず、2分48秒差で逃げ切った。“個性派集団”を9区田中悠登主将がまとめあげ、6区野村昭夢が区間新記録を獲得するなど4年生が中心となって躍動。15年からの4連覇以降、実現できなかった連覇を達成。青学大の新時代へ、最高学年がチームを引きあげた。
◇ ◇ ◇
出走した6人の4年生はゴール地点の東京・大手町に笑顔で集結した。前日に突然婚約発表し、同期から“宇宙人”と呼ばれる4区太田。3区鶴川のインスタグラムをブロックする5区若林。仲間から「転がり落ちろ!」と書かれたシューズを履き6区区間新記録を更新した野村に、練習中のジョギングで絶対に先頭を譲らない7区白石。その手で主将田中が宙に舞う。個性的な6人が、一様に人さし指を突き上げ喜んだ。
往路は鶴川がつなぎ、太田、若林の4年コンビで逆転に成功。2位に1分47秒差の復路で、その波に乗った。野村で3分49秒に突き放し、白石が巻き返されても、田中で再び突き放す。6人の力を結集させ、「4年生で勝たせよう」の誓いを実現させた。
主将は4年間を振り返る。「同期がみんなトガっている。まとめるのが大変だった」。実力が突出するがゆえに“21年入学組”は言動も飛び抜けていた。23年1月。箱根で3位に終わり、V奪還に向けて膝をつきあわせた。当時2年の田中らは3年に訴えかけた。「本当にこんなチームで勝てるんですか」。勝ちたい気持ちが先走り、盾をついた。先輩が受け入れ、チームはまとまり前回24年箱根奪還に結びつけた。
迎えた新体制。初のミーティングで、どこからともなく声があがった。「副キャプテンって意味あるの?」。例年は主将、副将、主務、寮長の「四役」を選出する。しかし今季は満場一致で副将を廃止。異例の「三役」とした。役職を設けずとも、副将の役目を意識。奇抜な集団だからこそ、全員が責任感を自負。過去2年は主将が箱根を走れなかったが、負担が軽減された田中は3年ぶりにジンクスを打破し出場を果たした。「最高の仲間と最高の景色を見られてよかった」と、同期の支えに感謝した。
昨年1月3日は寮で祝勝会を行った。走れなかった仲間には「(来年は)お前らに走ってほしい」と熱い言葉が飛び交った。1年後に鶴川、白石、田中が思いに応えた。9月に、数億円かけて改修工事した寮が完成。この日の夜は、新寮で初の晴れの席。王者の称号を手に、4年間に思いをはせる。【飯岡大暉】
青山学院大・原晋監督(57)が初優勝した15年以降で8度目の総合優勝を飾った。
04年の就任以来、常識にとらわれない発想で常に指導法をアップデート。学生長距離界のレベルを引きあげ続ける名将は箱根駅伝の未来にも思いをはせつつ、早くも来季の大学3大駅伝「3冠」と3連覇へ意欲を示した。
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8度目の優勝も格別だった。東京・大手町のゴール地点。原監督は選手たちの手で8度宙を舞った。「最高です。これほど幸せなことはない」。優勝回数と合わせた胴上げに「私も重いので。気分的には天高く上がっていったけど、6回目くらいからは『そろそろ辞めよう』と言って」とほほ笑んだ。
近年は胴上げの高さこそ低くなってきたが、学生長距離の天井は押し上げ続けてきた。十数年前は1万メートル28分台のランナーは主流ではなかったが、当時から「チームで10人そろえる」と明言。実際に22年大会では、史上初めてチームエントリー16人全員を28分台のランナーで並べた。「常識を変えることが大切」。全体でも1万メートルのレベルは上昇。27分台の選手は前回大会で11人だったが、今大会は20人に上った。青学大も2区黒田朝日、3区鶴川正也、5区若林宏樹と過去最多となる3人が27分台。いずれも区間1桁台前半と好走した。「当たり前の基準が上がってきた」と実感する。
箱根の区間距離のほぼ倍となるマラソンへも、在学中から積極的に挑戦させる。「駅伝を通じて、30キロを走る距離は仕上がっている。残りの10キロなんて楽勝」。箱根でリセットするのではなく、2月以降のマラソンを視野に入れた指導を実践。昨年は10人が挑んだ。今大会4区区間賞の太田も挑戦する予定だ。
3月に58歳となる名将はビジョンにも言及。「近い将来に監督をバトンタッチする。強化を続けながら引き継ぎもしていく」と数年後の引退も示唆した。ただ、意欲は衰えない。「3連覇のチャンスがあるのは私たちだけ。狙えない布陣ではない。2度目の3冠も目指す」。黄金時代はまだまだ続く。【藤塚大輔】
青学大の連覇もたらしたのは…トガった個性派集団の4年生たち 田中悠登主将明かす
青学大が10時間41分19秒の大会新記録で、2年連続8度目の総合優勝を飾った。2位駒大に迫られる場面もあったが、復路は1度も首位を譲らず、2分48秒差で逃げ切った。“個性派集団”を9区田中悠登主将がまとめあげ、6区野村昭夢が区間新記録を獲得するなど4年生が中心となって躍動。15年からの4連覇以降、実現できなかった連覇を達成。青学大の新時代へ、最高学年がチームを引きあげた。
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出走した6人の4年生はゴール地点の東京・大手町に笑顔で集結した。前日に突然婚約発表し、同期から“宇宙人”と呼ばれる4区太田。3区鶴川のインスタグラムをブロックする5区若林。仲間から「転がり落ちろ!」と書かれたシューズを履き6区区間新記録を更新した野村に、練習中のジョギングで絶対に先頭を譲らない7区白石。その手で主将田中が宙に舞う。個性的な6人が、一様に人さし指を突き上げ喜んだ。
往路は鶴川がつなぎ、太田、若林の4年コンビで逆転に成功。2位に1分47秒差の復路で、その波に乗った。野村で3分49秒に突き放し、白石が巻き返されても、田中で再び突き放す。6人の力を結集させ、「4年生で勝たせよう」の誓いを実現させた。
主将は4年間を振り返る。「同期がみんなトガっている。まとめるのが大変だった」。実力が突出するがゆえに“21年入学組”は言動も飛び抜けていた。23年1月。箱根で3位に終わり、V奪還に向けて膝をつきあわせた。当時2年の田中らは3年に訴えかけた。「本当にこんなチームで勝てるんですか」。勝ちたい気持ちが先走り、盾をついた。先輩が受け入れ、チームはまとまり前回24年箱根奪還に結びつけた。
迎えた新体制。初のミーティングで、どこからともなく声があがった。「副キャプテンって意味あるの?」。例年は主将、副将、主務、寮長の「四役」を選出する。しかし今季は満場一致で副将を廃止。異例の「三役」とした。役職を設けずとも、副将の役目を意識。奇抜な集団だからこそ、全員が責任感を自負。過去2年は主将が箱根を走れなかったが、負担が軽減された田中は3年ぶりにジンクスを打破し出場を果たした。「最高の仲間と最高の景色を見られてよかった」と、同期の支えに感謝した。
昨年1月3日は寮で祝勝会を行った。走れなかった仲間には「(来年は)お前らに走ってほしい」と熱い言葉が飛び交った。1年後に鶴川、白石、田中が思いに応えた。9月に、数億円かけて改修工事した寮が完成。この日の夜は、新寮で初の晴れの席。王者の称号を手に、4年間に思いをはせる。【飯岡大暉】
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26年大会の展望 3連覇狙う青学大ら「3強」V争い軸 早大、中央大も可能性秘める
青山学院大(青学大)が10時間41分20秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。2位に駒澤大、3位に国学院大が続き、前評判が高かった「3強」が上位を占めた。
興奮が冷めやらぬ中、来年の第102回箱根駅伝を展望する。
◇ ◇ ◇
青学大、駒大、国学院大の上位3校が優勝争いの軸となる。
3連覇がかかる青学大は今大会の出走メンバー6人が卒業するが、新チームも実力十分。エースが集う2区で区間3位と好走した黒田朝日(3年)と2年連続8区区間賞の塩出翔太(3年)に加え、1年生ながら10区区間賞となった小河原陽琉ら力のある選手がそろう。
3年ぶりの王座奪還を狙う駒大は7区で区間新記録を打ち立てた佐藤圭汰、5区区間4位の山川拓馬、6区区間2位の伊藤蒼唯の“3本柱”が最終学年となる。いずれも過去の3大駅伝で実績があり、どの展開でもレースを動かす力がある。ルーキーの谷中晴と桑田駿介も往路で好走しており、伸びしろは十分だ。
大学3大駅伝「3冠」を逃した国学院大は山区間でともに2ケタ順位と苦戦を強いられたが、平地の8区間は全て1ケタ順位。昨年2月の大阪マラソンを制したエース平林清澄(4年)は卒業するが、復路は下級生4人で順位を3つ上げた。今季の出雲、全日本は逆転優勝しており、単独走の能力にもたけている。
4位の早稲田大(早大)は下級生のみの出走となった往路で3位と健闘。5位の中央大も平地区間を全て下級生が担った。両チームともにレースの流れを一変させられる選手が育てば、上位3校に割って入る可能性を秘める。【陸上担当=藤塚大輔】
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中大5位 往路2位から8区で区間最下位も 藤原監督「やっぱり強かった」
中大は往路2位から総合順位は下げたが、善戦した。藤原監督は「昨年はあんなことがあったけど、やっぱり強かったなあっていうことはね、知ってもらえたと思う」。
1年前は大会直前にエントリー16人のうち14人が発熱やせきを発症。今回は8区の1年生佐藤が区間最下位で3位から6位に順位を落としたものの、最後は5位に。指揮官は「今年1年が本当に勝負」と意欲的だった。
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日体大12位、8区で9位も粘れず…7年ぶりシード返り咲きならず
日体大は10位前後を浮き沈み、最後は12位。7年ぶりのシード返り咲きはならなかった。
往路10位から区間5位の快走をみせた8区の分須を終えて9位。そこから粘れなかった。予選会から78年連続78度目の出場を目指す。
日体大は10位前後を浮き沈み、最後は12位。7年ぶりのシード返り咲きはならなかった。
往路10位から区間5位の快走をみせた8区の分須を終えて9位。そこから粘れなかった。予選会から78年連続78度目の出場を目指す。
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立大13位 往路8位も復路で後退 シード権63年ぶり獲得ならず「力負け」監督
立大は往路8位から挑んだ63年ぶりのシード権獲得はならなかった。7区を終えて圏外の13位に後退すると、巻き返す力はなかった。
昨春に就任した高林監督は予選会1位通過で臨んだ本戦に「復路は取りこぼしもあった。争いに加わることすらできなかった。力負け」と認めた。10位以内へは各区間10位前後を重ねる必要性を痛感し「もう一段階上げないといけない」と来年を見据えた。
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中央学院大14位 指導歴40年の川崎監督「情けない結果、後任に引き継げない」
中央学院大は往路12位からさらに順位を下げ総合14位に終わり、6年ぶりシード復帰はならなかった。
川崎監督は「吉田礼のような大砲が来年はいない。今のままでは間違いなく予選会で落ちる」と危機感を募らせた。指導歴40年の指揮官は「私もそろそろと思っていたが、こんな情けない結果では後任に引き継げない」と厳しい表情だった。
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法大15位 昨年総合6位が…大島発熱で往路欠場の影響が最後まで
法大は昨年は総合6位だったが15位、シード権を逃した。
往路16位で折り返し、圏内まで3分22秒差で復路に挑んだが、1つしか順位を上げられなかった。7区宮岡が区間6位と奮闘したが、そのほかは2ケタ順位。1万メートルチームトップのタイムを持つ大島の発熱による往路欠場の影響が、最後まで尾を引いた。
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専大17位 出場4年連続最下位免れる「シード権獲得が目標だったので残念」監督
専大は予選会2位突破の勢いで臨んだ2年ぶりの箱根は、総合17位に終わった。
出場4大会連続の最下位こそ免れたが、長谷川監督は「シード権獲得が目標だったので残念」と厳しい表情。「4区と5区が全体を占う上でも流れが決まる区間」と、1年後を見据えて強化に励む。
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大東大19位 真名子監督「無力感」前回シード獲得から上位狙うも暗転
大東大は往路19位からの浮上はかなわず、真名子監督は「素直に言うと無力感」と肩を落とした。
仙台育英高で全国制覇し、22年に就任して3季目。前回は10位で9年ぶりシード権に返り咲き、さらに上位を狙ったが暗転した。8区のエース西川こそ直前に足を痛めていたが、他に体調不良者はいなかった。指揮官は「箱根は別物。優勝となると、いまのままじゃ100年たっても無理」と現実を見つめた。
(以上 日刊)
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第101回東京箱根間往復大学駅伝競走復路(3日、神奈川・箱根町芦ノ湖駐車場-東京・大手町=109.6キロ)
青学大が10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を飾った。原晋監督(57)は選手たちの手で8度宙を舞い、「これほど幸せなことはない」と万感の思いを語った。就任21年目の指揮官は「原メソッド」と呼ばれる指導法で選手を鍛え上げ、寮母も務める妻の美穂さん(57)の献身的なサポートも受けながら、常勝軍団を作り上げた。
大手町のゴールで歓喜の瞬間を待つ原監督は笑顔で満ちあふれていた。就任21年目で8度目の総合優勝を達成。手塩にかけて育てた部員たちの手で8度、宙に舞った。
「学生たちに胴上げしてもらって、私も3月で58歳になるが、こんな58歳はいない。これほど幸せなことはない」
時代の変化や学生たちに合わせて変化させる指導法は「原メソッド」と呼ばれる。正月の箱根を軸に、春はトラック、夏は走り込みなど、1年間を4期に分けた強化サイクルで選手を鍛え上げた。歴代最強の布陣をそろえた今大会。「今年勝てなかったら、『原メソッド』を根本から変えないといけないと思っていた」と不退転の決意で臨み、前回大会のチームを上回る大会新記録で2度目の連覇を達成した。
部員62人と原監督夫婦の「チーム青学」で成し遂げた優勝だった。昨年秋、神奈川・相模原市内の寮がリフォームされた。寮母を務める妻の美穂さんが業者と2週間に1度の打ち合わせに参加し、充実した調理場や交代浴ができる風呂場など、選手ファーストの新拠点が完成。同校OBのシェフと美穂さんが栄養満点の食事を提供し、トレーナー陣が常に寮でケアを施すなど、全国屈指の厳しいトレーニングの中でも、故障を防ぐ環境が整った。
献身的なサポートで支え続けた美穂さんには、胸に秘めた思いがある。レース後に「そろそろ後任に譲らなきゃいけない時期になった」と寮母の役割をバトンタッチする考えを明かした。原監督に続いて、3度胴上げされ、「すごく貴重な経験をさせてもらった」と満面の笑みで喜んだ。
指揮官が発案した「あいたいね大作戦」は大成功。「300%。言うことはない。勝つことで多くの出会いが待っている。いろいろな出会いがこれからも待っているものだと思う」と胸を張った。
新チームは2016年度以来の大学駅伝3冠と、箱根3連覇に挑む。大学陸上界の名将は「決して狙えない布陣ではないと思っている」と力強く宣言した。(児嶋基)
青学大が往路の5区から一度もトップを譲らず、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。6区の野村昭夢(あきむ、4年)が56分47秒の区間新記録で後続を突き放すと、8区の塩出翔太(3年)、10区で大学三大駅伝初出走の小河原陽琉(ひかる、1年)も区間賞に輝いた。野村は金栗四三杯と大会MVPをダブル受賞。往路4位の駒大が5時間20分50秒の復路新記録をマークし、2分48秒差の2位に入った。
青学大は個性派集団。主将の田中悠登(4年)は卒業後に競技を引退し、地元のテレビ局「福井放送」にアナウンサーとして就職予定だ。9区で区間2位の快走を披露した主将は、アンカーにたすきを渡す際に「青山学院大学、トップでたすきリレー」と自ら実況した。往路で4区区間賞の太田蒼生(4年)はレース後に婚約を発表。5区区間新の若林宏樹(4年)は卒業後に引退し、一般社員として日本生命に就職する。チームを結束させた主将は「まとめるのが大変だったが、その個性をつぶしてもよさが出ない。箱根で勝つ共通認識を持って、普段よりもミーティングを重ねた」と感慨深げに1年間を振り返った。
(以上 サンスポ)
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青学大 大会新で連覇 笑顔で会えた!喜びあえた!“あいたいね大作戦”大成功に原監督「言うことない」
往路首位の青学大が、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。優勝回数は駒大に並び、史上6位タイとなった。6区の野村昭夢(4年)が区間新記録の快走。8区の塩出翔太(3年)も区間賞を獲得するなど、往路4位から追い上げた駒大を振り切った。原晋監督(57)が掲げた『あいたいね大作戦』は、大会新記録&2連覇という最高の形で完結した。
この景色にあいたかった。両ほおに人さし指を当てるチャーミングなポーズでゴールに飛び込んだ小河原陽琉(1年)を、チームは歓喜の輪で包んで胴上げした。青学大8度目の優勝を記念して、原監督は8度宙を舞った。初めてフィニッシュエリアに入った寮母を務める妻・美穂さんも照れながら胴上げされた。
「奥さんと比較して私はまだ太い。(胴上げ終盤は)そろそろやめようという雰囲気が出ていた」と得意のジョークを飛ばした指揮官は、しみじみと言った。「最高でしたよ。これほど幸せなことはない」。掲げた『あいたいね大作戦』は「(笑顔で)あえましたし、300%でしょ!往路、復路、総合優勝で言うことない」と完全成功を宣言した。
少しヒヤリとしながらも、後続に逆転のすきは与えなかった。6区・野村が衝撃の区間新。復路の『ピクニックラン』がちらついたが、7区で駒大の佐藤圭汰(3年)に猛追された。「最後まで胃がキリキリした」と指揮官。ただ、8区・塩出、10区・小河原が区間賞と全員でつないだ。「よく耐えてくれました」と圧巻の内容をねぎらった。
15年の初優勝から11年間で8度優勝。今年も原メソッドがぴたりとはまった。「箱根駅伝は山上り、下りを持っていれば優勝だけでなくシードでも優位になる。タイム差が一番広がりやすいし、そこを攻略しなければ昨今の箱根駅伝は勝てない」。5区の若林宏樹(4年)、6区の野村はともに区間新。山のスペシャリストを育て上げたことも、8度目優勝に大きくつながった。
箱根路に愛を注ぎ続ける名将も3月で58歳。「近い将来バトンタッチがきます。普通は定年よ。だから上手にね、上手に引き継ぎもしつつ、強化もしつつの時期にきている」と引き際も考え始めている。昨年9月に選手寮がリフォームされ、新しい食堂にはOBのシェフを呼んだ。原夫婦がいなくても回るチームを少しずつ築いている。
「いろんなことを犠牲にして、夫婦でこの箱根駅伝を人生かけて戦っている」-。フレッシュグリーンを一番に背負う立場は、あと少しかもしれない。だからこそ、1年1年に込める力も強まる。「来年は2度目の(大学三大駅伝)3冠と(箱根駅伝)3連覇をしたい」。大学駅伝界の夢を再びかなえ、陸上界に衝撃を与え続ける。
◇原 晋(はら・すすむ)1967年3月8日、広島県三原市出身。世羅高から中京大に進学し、中国電力に入社。サラリーマン時代は省エネ空調機の売り上げで実績を重ねる「伝説の営業マン」だった。2004年に青学大の監督に就任。箱根駅伝は09年に33年ぶりの出場に導き、15年の初優勝から4連覇を含む8度のVに導いた。現在は青学大陸上部長距離ブロック監督、同大学の地球社会共生学部教授など多方面で活躍。2014年度にデイリースポーツ制定「ホワイトベア・スポーツ賞」を受賞した。
青学大・野村昭夢“初代”MVP 山下り6区で初の56分台「本当にうれしい」金栗四三杯も受賞
往路首位の青学大が、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。優勝回数は駒大に並び、史上6位タイとなった。6区の野村昭夢(4年)が区間新記録の快走。8区の塩出翔太(3年)も区間賞を獲得するなど、往路4位から追い上げた駒大を振り切った。
原晋監督がキーポイントに挙げた6区で、野村昭夢が快走した。史上初の56分台となる56分47秒の区間新記録で、2位中大との差を2分以上も拡大。7区に控えていた駒大の“怪物”佐藤でも追いつけない大きなアドバンテージを稼いだ。
夢の56分台は新チーム移行直後の4月に掲げた目標だったという。3年時まではけがに泣かされたが、体が強くなった4年は万全の練習と調整ができるようになり「継続したことをできるようになったことが一番結果に結び付いた」と胸を張った。
総合優勝の立役者として金栗四三杯を受賞。今大会から新設された“初代”MVPにも選ばれ、「どちらか取れれば良いと思っていた中で、W受賞だったので本当にうれしい」とダブル受賞の喜びを口にした。
青学大・田中悠登 つないだ!伝えた有終の9区2位 卒業後はアナウンサー 自分で実況しちゃった
大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした青学大をまとめ続けたのが、9区の田中悠登(4年)だった。卒業後にアナウンサーの道へと進む主将は、1時間8分40秒の区間2位と好走し、走りでもチームを鼓舞した。11度目の復路優勝を果たした駒大が2分48秒差の2位で、出雲全日本選抜、全日本を含む大学駅伝3冠に挑んだ国学院大は3位。10位の帝京大までが来年のシード権を獲得し、7秒差の11位は順大だった。
「青山学院大学、トップでタスキリレー!」。最終10区につなぐ大役を全うし、息も絶え絶え。それでも、地元・福井放送のアナウンサーに内定している田中は、鶴見中継所で小河原陽琉(1年)にたすきを手渡すと、生き生きと将来の予行演習をした。
思い描いた悲願がかなった最高の瞬間。目尻を下げながらも「キツかったですね。あっという間で。楽しかったですね」と、アナウンサーらしく簡潔に振り返った。だが、笑顔の裏には常勝軍団をまとめる苦悩があった。
新チーム体制の下、昨年3月に新主将に選出。しかし、10月の出雲全日本選抜、11月の全日本は国学院に優勝を阻まれた。青学大の主将として箱根だけは譲れない。11月以降は週に一度必ずミーティングを行い、チームの課題を話し合って即座に修正。「違和感があったら箱根まで間に合わない。最後は詰めていった」と、我の強いチームメートをまとめ上げていった。
自身も万全だったわけではない。全日本から箱根までの2カ月は神経痛に悩まされ、練習ができない時期もあった。だが、苦しい終盤は主将として積み上げた努力と苦労が力に変わった。「本当にキャプテンとしてつらかったこと、悩んだことはたくさんある。そういったこともよみがえった」と必死に足を動かした。
ラストランを終え、選手としては箱根を“卒業”する。いつかはアナウンサーとしてマイクを手に再び箱根へ。話し上手な原晋監督から「言葉の力を学んだ。同じ内容を言っていても監督が話すとそうだなと。伝える力が大事」と、学んだ4年間は最高のアナウンサー修行だった。
青学大 原監督の妻で寮母・美穂さん 初の胴上げ 世代交代見据え「準備をしていかないと」
往路首位の青学大が、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。優勝回数は駒大に並び、史上6位タイとなった。6区の野村昭夢(4年)が区間新記録の快走。8区の塩出翔太(3年)も区間賞を獲得するなど、往路4位から追い上げた駒大を振り切った。
青学大の圧倒Vを陰で支えた1人が、原監督の妻で寮母の美穂さん。指揮官に引っ張られる形で胴上げされると、照れながら「わー!」と歓声を上げて3度宙を舞った。箱根路のフィニッシュラインで選手を待ったのは初めて。「すごく高かった。空がきれいでした」とほほ笑んだ。
優勝を見守った後は「もうそろそろ、私も監督もしゃべってるんですけど、終わりを迎える、後任に譲らなきゃいけない時期にきてまして」と、青学大を思う故の考えも明かした。
世代交代は少しずつ始めていくといい「すぐにというわけにはいかないので、準備をしていかないといけない」と見据えている。「いつまでも続いていくわけではない」と気を引き締めるからこそ「今回、勝たせてもらったのは貴重な経験」とかみ締めていた。
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駒大・佐藤圭汰 復活の区間新 意地の激走で貢献 故障明けも“怪物”の走りで果たした昨年の雪辱
往路首位の青学大が、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。優勝回数は駒大に並び、史上6位タイとなった。
まさに“怪物”の走りだった。駒大は2位に終わったが、当日変更で7区・佐藤圭汰(3年)の激走で意地の復路V。1時間0分43秒の区間新記録をたたき出し、ケガ明けと思わせない快進撃を見せた。
「自分の力通りに走れば(区間記録を)1分は更新できると思っていたので自信はあった。復路優勝に貢献できてうれしい」
恥骨の疲労骨折のため、昨年3月から10カ月ぶりのレースだった。「(調子は)70%くらい。走る前は緊張していて本当に20キロも走れるのかなと思った」と不安が頭をよぎった。それでも「いざ走ってみれば余裕を持って走れた」と堂々の“怪物”っぷり。3位でたすきを受け取り、快調な走りで中大をかわし、青学大に1分40秒差まで詰め寄った。
悔しさも晴らした。昨年は3区を走ったが「自分の中では良い走りをしたと思っているけど、それ以上にすごい走りだった」と、青学大の太田蒼生に抜かれた苦い思い出があった。だが「(今回は)ある程度目標通りに走れたので良かった」と、2020年の明大・阿部弘輝の区間記録を57秒も更新。自信も蓄えた。
次に目指す舞台は9月に東京で開催される世界選手権。「出場権を得られるように5000メートル12分台を目標に。明日から1500、3000、5000メートルで日本記録を出すことを目標にやっていきたい」。まずは箱根で新たな歴史を刻んだ。さらなる大舞台へ、記録を塗り替えていく。
◇佐藤圭汰(さとう・けいた)2004年1月22日、京都市出身。幼少期から運動が好きで、体力づくりのために小学3、4年生頃から陸上を本格的に始めた。名門・洛南高時代は1500メートルで3分37秒18、3000メートルで7分50秒81、5000メートルで13分31秒19の高校記録を出した。5000メートルの自己記録は13分9秒45。座右の銘は「上には上がいる」。184センチ、69キロ。
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国学院大3位 ケツメイシ大蔵の長男・吉田がデッドヒート制す「来年は優勝」桜舞い散る中のような栄光へ
往路首位の青学大が、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。優勝回数は駒大に並び、史上6位タイとなった。
“ケツ”の10区で、国学院大のタスキを託された吉田蔵之介(2年)が大役を果たした。4位でスタートし、1秒差で前にいた早大にピタリと背後について並走。しっかりと脚を温存し、17キロ付近でギアを上げて抜き去ると、そのまま逃げ切って過去最高に並ぶ3番手でゴールテープを切った。しびれるデッドヒートを制し「絶対に諦めないつもりだった。仕掛けて攻め切れた」と胸をなで下ろしつつ、「もっと離したかったが、力不足。来年は優勝したい」と歯を食いしばった。
父は音楽グループ・ケツメイシの大蔵。蔵之介という名前も、父の「蔵」の字を取ってつけられた。高校時代までは親子であることを周囲に隠していたが、全国高校駅伝のアナウンスで暴露された。「いつか区間賞とかを取れたら、自分で言おうかと思っていたが、ちょっと早かった(笑)」。レース前にだけ聞く勝負曲は、ケツメイシの「覚悟はいいか」。憧れの箱根路を目指し、覚悟を持って臨んできた。
1年時の前回大会は9区で区間5位と奮闘。今回は3冠も懸かっていたチームのアンカーに抜てきされた。直前には父から激励の電話もあった。「レースを楽しんで走ってきて」。残り3キロ付近では、3時間前から一番乗りで待っていた父・大蔵が、「蔵之介」と書かれた特製タオルを掲げているのが見えた。「うれしかった。元気が出た」。大歓声の中で声は聞こえなかったものの、その姿だけで十分だった。
父の代表曲「夏の思い出」にちなみ、「冬の思い出」を誓ったものの、チームとしては3冠の夢は霧散した。「苦い冬の思い出になった。来年はうれしい冬の思い出にしたい。最強世代が卒業して、主力と言ってもらえるように」。桜舞い散る中のような栄光を目指す。
◇吉田蔵之介(よしだ・くらのすけ)2005年2月15日、東京都出身。父はケツメイシの大蔵。東京・代々木中、埼玉栄高と進み、国学院大2年。箱根駅伝は1年時の24年大会で9区を走り区間7位だった。1万メートルのベストは29分9秒05。182センチ、62キロ。
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早大 来年へ希望の4位 3位までわずか10秒届かず アンカー菅野は涙 レベルアップ誓った
往路首位の青学大が、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。優勝回数は駒大に並び、史上6位タイとなった。
7年ぶりの3位にはわずか10秒届かなかったが、早大が4位に食い込んだ。4位国学院大に1秒差をつけて、10区をスタート。最後は前に出ることができず。アンカーの菅野雄太(4年)は涙が止まらなかった。2017年以来の3位以内を逃し、花田勝彦監督は「菅野に負担をかけてしまった。申し訳なかった」と悔やんだ。
3位から出て、6区で順位を一つ下げた。8区で3位に上がり、9区も3位をキープ。指揮官は「なんとか3位を死守した中で順位を守る作戦だったが、7、8、9(区)で貯金を作れなかった」と分析した。
ただ、5区では『山の名探偵』工藤慎作(2年)が快走するなど、来年への希望は十分。悲願の優勝へ「守りに入らないというか、実力で優勝をもぎ取る、3位以内をもぎ取る。自信を持って走れる力をつけないといけない」とレベルアップを誓った。
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東京国際大 昨年他界・横溝前監督に捧げる3年ぶりシード 左胸に喪章つけ激走 思い乗せつかんだ8位
往路首位の青学大が、10時間41分19秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝を果たした。優勝回数は駒大に並び、史上6位タイとなった。
天国の恩師にささげる3年ぶりのシード獲得に、東京国際大・中村悠太監督代行は天を見上げた。昨年11月に亡くなった横溝三郎監督のチームを引き継ぎ、最後まで大混戦だったシード争いを制して8位。「今年のチームでシードを取って来年につなげることが、横溝さんへの恩返しとチームで話していた。最後にいいお土産を用意できた」と胸の内を語った。
選手たちも横溝監督の思いを背負って、箱根に向けて一致団結した。グラウンドの横にあるトレーニングセンターの中に横溝監督の写真を飾っており、チームは練習前後に手を合わせているという。
「許可も得られれば、監督の写真も一緒に車に乗りたい」。選手たちは左胸に喪章をつけて走った。指揮官の思いを乗せて挑んだ箱根路だった。
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箱根で赤門リレー実現 東大・秋吉→東大大学院・古川「幸運で素晴らしい経験」教授も給水で“活躍”
異例の“赤門リレー”が実現した。オープン参加の関東学生連合は、東大の秋吉拓真(3年)が8区で7位相当の1時間4分45秒で快走。さらに、当日変更で9区に投入された古川大晃(29)=東大大学院=にタスキをつなぎ、古川は1時間11分52秒で力走した。
戸塚中継所で“赤門リレー”が実現した。東大生の秋吉から、東大院生の古川にタスキがつながれた。東大として1984年大会に一度だけ出場しているものの、連合チームで東大ランナー同士によるリレーは異例。古川は「(同じチームで)苦楽をともにした秋吉とリレーできて、僕にとって史上最強のチームメートだったので、彼とタスキをつなげたことは幸運で素晴らしい経験」と感慨を込め、東大生として箱根経験もある近藤秀一コーチ(29)らも協力しており「東大総動員で戦った」と胸を張った。
さらに、目を引いたのが横浜駅前の給水所だった。力走する古川を白髪の男性が待ち受けていたが、長く部長を務めてきた八田秀雄教授(65)だった。「乳酸代謝、運動と疲労」を研究する権威で、古川が熊本大生時代からランナーとして目をかけてくれており、研究活動でも相談に乗ってもらった恩人に今回給水を打診。「最近は毎日のようにメールで励ましの言葉と給水の打ち合わせをして、『右から渡すか、左から渡すか』『どのくらい(ドリンクを)入れるか』とか、丁寧に付き合ってくれた」と笑った。
東大教授の“力水”に古川自身も感激。「八田先生、こんなに走れるんだ、って。結構(長く)並走してくださって感動した。打ち合わせではボトル1本だけ渡せればということだったが、水とドリンクの2本も渡してもらえて」。八田教授の心からのバンザイも背に、エネルギーに変えた。
現在、集団走のメカニズムを力学的に解明する研究に取り組んでいるという29歳。夢の箱根路を経て、今後の目標については「世界で一番の博士号ランナーになりたい」と、マラソンでの2時間10分切りを掲げた。
◇古川大晃(ふるかわ・ひろあき)1995年10月9日、熊本県出身。熊本・八代高、熊本大と進み、九州大院を経て東大院に進学。博士号を取得した。自己ベストは5000メートルで14分3秒20、1万メートルは29分08秒79。176センチ、61キロ。
◇秋吉拓真(あきよし・たくま)2003年5月23日、千葉県出身。兵庫・六甲学院中を経て六甲学院高から東大に進学。自己ベストは5000メートルで13分50秒09、1万メートルは28分49秒27。173センチ、55キロ。
(以上 デイリー)
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