≪10/9≫
「特に気持ち的には変わらずに今までやってきたことがあると思うので、まずは初戦で出せればいいかなと思って準備しています」。
ロッテの小川龍成は、12日から始まる日本ハム(エスコンフィールド)とのクライマックスシリーズ・ファーストステージに向けてこのように意気込んだ。
小川は昨季52試合に出場しCSには1試合の出場だったが、今季はシーズン自己最多の119試合に出場し、打率.241、21打点、20犠打、10盗塁、5月は月間打率.339、7月は月間打率.386をマークするなど、今年は中心選手としてCSを迎える。
ただ、7月まで打率.280だったが、8月以降の打率は.163だった。9月5日に取材した時には「波が本当に大きくて不調の時間が長いというのは技術的に不足しているところだと思うので、調子が良いのが持続できないのは、単純に実力不足というか、技術が足りないところかなと感じています」と明かしていた。
現在の打撃の状態については「ちょっとずつ戻ってきています」とし、「マリンの最終戦でも自分の理想のバッティングができましたし、もう少し状態を上げていけたらなと思います」と、3日の日本ハム戦(ZOZOマリンスタジアム)では取り組んできた反対方向の打撃で、達孝太のフォークをレフト前に弾き返した。
9日のZOZOマリンスタジアムで行われた全体練習では、「短期決戦になったらバントを一発で決めると言うことがより重要になってくると思うので、そこはサインが出た時にミスしないように練習しています」と、室内練習場でのバントマシンを相手に黙々とバント練習を行った。
7月30日の西武戦では、三塁前にセーフティバントを決めてサヨナラ勝ちを収めるなど、三塁側のセーフティバントも武器にしている。夏場以降は、セーフティバントに備えて相手チームの三塁手が前に出てくることが増えた。
「打席に立って守備位置を確認した時にサードが前だと、すごくやりにくいですし、構えた時だったり、セーフティを試みたときのチャージの仕方だったり、声かけもそうですしそう言ったところも警戒されているなというのはあるので、やりにくくなっているというか、ちょっと考えてやらないといけないなというのは前よりも感じています」と9月5日の取材で話していた。
「出た時に自分の役割をシーズンと同じように全うすれば、チームに貢献できて、チームも勝てると思うので、自分の役割を意識してやりたいなと思います」。CSでも持ち味である粘りの打撃、小技、走塁、守備でチームに貢献していく。
取材・文=岩下雄太
9日のZOZOマリンスタジアムで行われた全体練習では、「短期決戦になったらバントを一発で決めると言うことがより重要になってくると思うので、そこはサインが出た時にミスしないように練習しています」と、室内練習場でのバントマシンを相手に黙々とバント練習を行った。
7月30日の西武戦では、三塁前にセーフティバントを決めてサヨナラ勝ちを収めるなど、三塁側のセーフティバントも武器にしている。夏場以降は、セーフティバントに備えて相手チームの三塁手が前に出てくることが増えた。
「打席に立って守備位置を確認した時にサードが前だと、すごくやりにくいですし、構えた時だったり、セーフティを試みたときのチャージの仕方だったり、声かけもそうですしそう言ったところも警戒されているなというのはあるので、やりにくくなっているというか、ちょっと考えてやらないといけないなというのは前よりも感じています」と9月5日の取材で話していた。
「出た時に自分の役割をシーズンと同じように全うすれば、チームに貢献できて、チームも勝てると思うので、自分の役割を意識してやりたいなと思います」。CSでも持ち味である粘りの打撃、小技、走塁、守備でチームに貢献していく。
取材・文=岩下雄太
(ベースボールキング)
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≪10/10≫
隠れたファインプレー
ロッテはレギュラーシーズン、チーム防御率はリーグ5位の3.17だが、勝利したゲームは投手陣を中心に守り勝ってきた。12日から始まるクライマックスシリーズでも、少ない点数を守り勝っていく形になっていくことだろう。試合終盤の外野の守りで欠かせない存在になりつつあるのが、現役ドラフトで今季西武から加入した愛斗だ。
10月4日のソフトバンク戦、「難しい打球を難しいように捕るのは誰でもできる。難しい打球をいかに簡単に捕れるか、簡単に捕っているように見せるかが大事だと思います」と、0-1の7回一死二塁で牧原大成が放ったレフト後方のフライ、前進守備を敷いていたが、何事もなかったかのようにキャッチした。
「僕の中では余裕というか、当たり前のプレー。ベンチに戻ってナイスプレーにみんなに言われたので、あれはいい守備だったのかなと。先頭バッターの甲斐さんのレフト前を捕りたかったなというのが一番ですね」と振り返った。
9月8日の楽天戦では、7-5の8回二死二塁で小深田大翔が放ったライトの前安打を捕ってから素早く送球し、二塁走者・小郷裕哉の生還許さなかった。「2アウト二塁からランナー・小郷さんで、ライト前に打たれました。“小郷さんが還らなかったの?”となったら、打球が強かったなとか思うと思うんですけど、なんで(楽天の三塁コーチャーが)止めたかと言ったら僕が早く(ボールを)離したから。そこを突き詰めて僕はやってきているのでずっと」と、愛斗の見えないファインプレーもあり、2点リードのまま8回裏へ進み、ソトの2ランで9-5とした。試合を決めたのはソトだったかもしれないが、8回裏の得点に繋げたのも愛斗の守備があったからこそだ。
練習日にキャッチボールが短い理由
CSでも守り勝っていく中で、1点を争う試合終盤の守備は勝敗を分け、いつも以上に大事になってくる。
「特別何かを変えるわけでもないと思う。僕もそうだし、みんなも今までやってきたことしか出せないと思う。自分のやってきたこと、チーム、ピッチャー、キャッチャーを助ける。それが守備だけじゃなくて、走塁もバッティングもと、思ってずっとやっています」
「それが守備の機会で来るんだとしたら、僕が出る時は大体接戦で勝っている時なので、1点もやれない状況。常にその状況を意識してやってきているので、別にミスしてもしょうがないくらいの気持ちで僕は練習に取り組んでいますし、他人よりも(守備のことを)考えています」
外野の守備に絶対的な自信を見せる愛斗は、試合のない練習日ではキャッチボールする時間が他の選手よりも短く、数球投げただけで打球捕に入る。
「そうっすね、僕が教えてもらってきたのは、高卒で入った時に大崎(雄太朗)さんという外野手の方がいたんですけど、“一軍でレギュラーを取るために守備固め、代走、代打から始まるから、その時っていきなり来るんだよ”って言われたんですよ。キャッチボールができない状況でも、全力で投げないといけない時が来ると言うのを教わったんですよ」。
「大崎さんだけでなく、栗山(巧)さんも言っていて、それを聞いて確かにそうだなと。自分が体験してみて、本当にそうじゃん、そんなことあるのかよと思っていましたけど、1年目なのでわからないじゃないですか。年数を重ねて4年目に守備固めで出るようになった時に、それをめちゃくちゃ感じました。その時は(西武が)強い時で自分のやるべきことが決まっていた。愛斗は代打がいったところの守備固めと言うのが決まっていたから、自分で予測して動かなければいけなかったけど、ここにきて1年目で流れとかわからないじゃないですか。1本のホームランで流れが変わったりするので、いきなりいけと言うのもあると思うんですよ。それでいけってなった時に、キャッチボールしていないから投げられませんじゃダメでしょう。だから僕が意識しているのは球数少なく、肩をどれだけ作れるかなんですよ」。
試合のない練習日にほとんどキャッチボールをしないのも、試合終盤に突然、守備固めでの出場があった時に備えてのもの。12球団でもトップレベルを誇る愛斗の外野守備の裏には、根拠、そして理論がある。
「自分のできること、やるべきことをやるだけだと思います」。CSでも高い外野の守備力で、目の前の打球を確実にアウトにしていく。
取材・文=岩下雄太
(ベースボールキング)
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≪10/10≫
「50-50」達成のニュースに、日本中が沸いた。今年の野球界は春からドジャース・大谷翔平選手の話題が溢れる一年になっている。地区優勝を果たしポストシーズン進出。テレビをつければいつも大谷の話題が取り上げられている。
中学3年、初対戦の記憶
マリーンズの澤田圭佑投手にとって、その大谷は同じ1994年生まれのスーパースターだ。誰よりも早い時期に、その存在を認知した一人でもある。同年代ということでメディアから大谷に関して聞かれることも多いが、普段は多くの事を語りたがらない。しかし、中学時代の思い出だけは特別な事として教えてくれた。
初めて会った時のことは鮮明に覚えているという。中学3年生の夏。2009年のことだ。7月24日から7月28日の5日間にわたって行われた「全日本リトル野球協会 リトルシニア東北連盟 創立35周年記念全国選抜野球大会」。会場は仙台だった。7月25日、関西連盟「愛媛西チーム」の澤田は東北連盟「一関チーム」と1回戦で対戦した。
蝉の鳴き声も騒がしい夏の暑い日。そこにひときわ背の高い選手がいた。大谷である。今も実家に大事に保管されている当時のパンフレットには身長184cm、体重58kgと表記されている。一方の澤田は身長176cm、体重83kg。小学校6年生時にはすでに身長168cm、体重75kgもあったという。将来が嘱望されていた四国では名の知れた巨漢中学生だった。
忘れられない「消えたスライダー」
二人は共にエースでクリーンアップを任されていた。衝撃を受けたのは澤田が初めて打席に立ち「投手・大谷」と対戦した時だ。澤田が振り返る。
「ストレートはもちろん速かった。ただそれよりもスライダーが凄かった。今でも忘れられないのがインコースのスライダー、普通に消えました。打とうと思ったら軌道から消えた。それはボクにとって初めての経験でした。鮮明に覚えています」
追い込まれてからボールがストーンと消え、空振り三振に倒れた。それが大谷と間近に接した最初の思い出である。四国では名の知れた天才中学生はこの打席で、世の中は広いのだ、という事を痛感した。ただ、澤田も負けなかった。天才対天才。ますます燃えた。必ず次の打席もあのボールを投げてくるはずと、その自慢のスライダーに狙いを定めた。
「投手・大谷」から9得点
2打席目。狙い通り、またスライダーが来た。「しめたと思った」と今度はしっかりとボールの軌道を意識しスイングした。忘れもしない。一塁線を抜ける二塁打を記録した。そして3打席目も再びそのスライダーをライトへ二塁打。4打席目はストレートを弾き返し二塁打。澤田の活躍もありチームは大谷から9点を奪い、勝利した。
「ボクらのチーム、強かったんですよ。四国・中国地方だったら負けるチームがないくらい。2年生から3季連続でシニアの全国大会ベスト8ですから。でも全国にいくと大谷のように凄い選手がいる。関西や関東にはボクらより強いチームがある。全国大会はだから楽しかった。まだまだ頑張らないとアカンとなる。刺激的でした」
一方で、「打者・大谷」と「投手・澤田」の対戦はどうだったのか。覚えているのは1打席目に投じたインコースのストレート。自信満々で投じた渾身のボールを弾き返された。間一髪、ショートライナーとなりアウト。しかし、鋭い打球だった。本人いわく「めちゃくちゃ強烈な打球」。ただ、なぜかその後の打席での結果は覚えていない。記憶が飛んでいるのだ。
思い出せない「その後の結果」
ある時、ふと結果はどうだったかと気になり、思い出そうとしてみた。たがどれだけ記憶を遡っても湧いてくることはなかった。当時のチームメートにも電話やLINEで尋ねてみた。もう誰も野球をやってはいない。地元で消防士や警察官を務めている友がいた。夜勤終りの早朝に、ようやく返事が返ってきたが「ゴメン。昔のことで覚えていないなあ」という返事だった。
結果的にこの大会、澤田を中心とした愛媛西はベスト8で敗退したが、チームメートの間では一回戦で大谷を擁するチームと対戦した試合が強烈な記憶として残っている。今でも、年末に地元で同窓会が行われるたびに語り明かすほどだ。そして、あの日、試合後に大谷と会話を交わしたことも忘れられない。
「試合が終わって時間があったので話をしました。進路の話になって彼は『花巻東高校にいきたいと思っている』と教えてくれた。ちょうどボクらが中学生の頃は菊池雄星投手が花巻東高校のエースとして甲子園に行って有名だった。菊池選手がいたあの学校か、凄いなあと思った。そしてボクも『大阪桐蔭にいきたい』と話をした。短い会話だったけど、よく覚えています」
大阪桐蔭の寮のテレビで…
かくして澤田は関西の名門・大阪桐蔭へ。大谷は東北の名門・花巻東へと進学していく。澤田の脳裏には、その後もずっとあの夏の日に対戦した背の高い選手のことが焼き付いていた。その存在を再び目撃するのは高校2年の夏だ。大阪桐蔭の甲子園出場は叶わず、寮のテレビで見ていた花巻東の試合でその姿をみつけた。
「わあ、あの時のあの選手が、甲子園にでている!と思いました。凄いなあ、と。2年からエースで試合に出ていて刺激を受けました」
身体はさらに一回り大きく見えた。画面越しに見た150kmを超える剛速球にまた刺激を受けた。しっかりとコツコツと力をつけ、順調に道を進んでいるように見えた。それが嬉しくもあり、刺激的でもあった。
大谷、藤浪、由伸の共通項
だがその後、2人がマウンドと打席で対峙することはなかった。大阪桐蔭は同学年のエース・藤浪晋太郎を軸に3年時には春夏連覇を達成する。澤田も2番手投手として活躍するが、そこに大谷との対戦の記録はない。唯一、花巻東とぶつかった春の選抜の一回戦でも対戦する縁には恵まれなかった。プロでは立教大学からバファローズに入団した1年目の2017年の1シーズンだけ同じパ・リーグで時間を共有しているが、オープン戦や練習試合を含めて対戦はない。そして大谷は海を渡っていった。
「中学校の時に大谷と対戦して高校で藤浪とチームメートになった。そしてプロに入ってからバファローズで(山本)由伸と一緒のチームになる。今思うとすごいピッチャーを間近で見ることが出来ている。3人共通項は野球に対してめちゃくちゃ真面目な事だと思う。ずっと野球の事を考えていると思う。大谷とは一緒になにかをしたわけではないから分からない部分はあるけど、たぶん一生、野球の事を考えてそうだなあと思う。振り返るとここまで沢山の伝説的なピッチャーにめちゃくちゃ身近で会うことが出来ましたけど、やっぱりみんながそうだった。ボクもやるしかない」
食堂のテレビの向こうで
10月6日、レギュラーシーズン全日程を終えたマリーンズはエスコンフィールドで行われるファイターズとのクライマックス・シリーズ(CS)ファーストステージに向けて本拠地ZOZOマリンスタジアムで練習を行っていた。昼食時、食堂のテレビには、メジャーリーグの中継が映し出されていた。僅差の緊迫したゲーム展開に誰もがテレビにくぎ付けになり見入っていた。
テレビの向こうで行われていたのはドジャースタジアムでのドジャース対パドレスの地区シリーズ第1戦。この試合で大谷は2回の第2打席で同点3ランを放つなど活躍を見せていた。テレビでは何度もそのシーンが繰り返し紹介された。澤田はその映像を静かに見つめていた。あれから長い時間が経過しお互い立派な大人になっているが、どこかあの日の面影を感じることが出来て懐かしい。活躍する姿に刺激を受け、いつも見えないエネルギーを充電しているような気分になる。
伝説の投手から受けた刺激
澤田は今、野球中心の日々を送っている。「寝ている時間以外はほとんど野球の事を考えています。野球中心に過ごすようにしている。そうしないともったいない。それは一度、ケガをしてリハビリをしている時に気が付いたことでもあるし、大谷、藤浪、(山本)由伸、そしてこれまで出会った様々な伝説の投手たちの姿に接して気が付いたことでもある」と言う。
今年のレギュラーシーズンは、途中で不調の時期もあり、登板21試合で2勝8ホールド(防御率3.60)という結果になった。不完全燃焼といえる。それでも今、万全の状態を取り戻し、一軍ブルペン陣の一角としてCSに挑むことができる。
海の向こうで大谷はスーパーヒーローのように大暴れしてチームを牽引している。そんな姿に、マリーンズの背番号「66」も燃えている。今も頭に焼き付いている、中学時代のあの夏の日の記憶。15年経った今も大一番のマウンドに上がれる幸せを噛み締めながら、澤田はマリーンズを日本一へと導くピッチングを披露することを思い描いている。
梶原紀章(千葉ロッテ広報)
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