【箱根駅伝】往路V青学大・原監督、余裕の主力3枚残し
◆報知新聞社後援 第93回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)(2日、東京・読売新聞東京本社前―芦ノ湖、5区間=107・5キロ)
2位早大は青学大と逆転射程圏の33秒差につけた。5区安井雄一(3年)が区間4位の快走で、小田原中継所で1分29秒あった差を詰めた。復路は前回9区区間賞の井戸浩貴(4年)らを投入し、11年以来となる逆転優勝を狙う。対する青学大も田村和希、下田裕太(ともに3年)ら主力3人が補欠でスタンバイ。盤石布陣で迎え撃つ。
青学大にとっては想定外の往路V3だった。
「4分負けなら『厳しい』。2分負けなら『頑張るぞ』。1分負けなら『よし、やれる!』。そう考えていた。逆に33秒勝ったことはうれしい誤算だ」と原監督は胸の内を明かした。往路の優勝インタビュー。「ドンと構えて、3連覇と3冠にチャレンジしたい。サンキュー! まだ、早いか。フライングしました」と指揮官の舌はなめらかだった。
混戦を予測して、3本柱のうち一色を除いた田村、下田を補欠に登録し、勝負どころに投入する準備をしている。往路では1人も当日変更カードを使わなかったため、復路で最多4人まで補欠を投入可能。学生3大駅伝5回出場中4回区間賞の田村を7区、マラソン10代日本最高記録保持者の下田を8区に起用することが濃厚。そして、アンカー10区は好調の安藤主将に託す構えだ。
「復路、補欠の選手も調子がいい。特に8区の下田は区間新記録も狙える」と原監督。この1年間、4区を走ることを熱望し、練習を積んできた下田に対しては同郷の静岡出身の古田哲弘(山梨学院大OB)が1997年大会でマークした最古の区間記録更新という新たなターゲットを与え、やる気を引き出している。
6区には前回2位の小野田を擁する。「小野田は上り坂が強い。最高点に達するまでの5キロで勝負をつけたい」と指揮官はもくろむ。9区には関東学生対校ハーフマラソン2連覇の池田と盤石な布陣だ。往路を終えた時点で2位とは前々回の初V時が4分59秒、前回は3分4秒差があった。今年は33秒差だが、今の青学大に死角は見当たらない。(竹内 達朗)
【箱根駅伝】往路V青学大“不思議系ランナー”3区の秋山、2年連続区間賞で奪首!
絶対王者の青学大は“不思議系ランナー”3区・秋山雄飛(4年)が2年連続区間賞の快走で首位に立ち、5時間33分45秒で3年連続の往路優勝を飾った。秋山は11日前の練習で女子中学生レベルの大ブレーキを演じたが、その3日後に奇跡的に回復。原晋監督(49)は「大ブレーキが怖かった」と明かしたギャンブルに大勝ちし、3日午前8時スタートの復路では史上6校目の箱根3連覇と史上4校目の年度3冠を目指す。同時達成なら初の偉業となる。(曇り、気温6・9度、湿度63%、無風=スタート時)
「サンキュー大作戦」ならぬ“3区”大作戦の大ばくちだった。秋山は首位の神奈川大から38秒差の2位でスタート。後ろ姿を運営管理車の原監督は祈るように見つめていた。「大ブレーキも覚悟した」
それも、そのはず。昨年12月22日の5キロ走。秋山は21分を要した。県大会レベルの女子中学生、あるいは市民ランナーの中級者並みの記録。そのペースで3区を走った場合、約1時間30分の歴史的な大ブレーキになる計算だった。
練習での大失態後、原監督を筆頭に関係者全員が秋山を諭した。「この4年間を否定するのか」と。すると3日後、16キロ走では学生トップレベルの走りを取り戻した。「500%起用するつもりはなかった。10区間で一番、悩んだ」と指揮官は半信半疑で起用を決めたが、秋山自身はスタートラインに立った時、自信に満ちあふれ、冷静だった。
この日、駅伝の魂とも言うべき青学大のタスキにトラブルが発生。タスキの端を穴に通す時によじれが生じ、1区の梶谷は走りながら何度も掛け直した。2区の一色はさらに乱れ、校名が全く見えないほど。梶谷が「走りにくかった」と言えば、一色は「僕の掛け方、最悪でしたね」と苦笑いした。
しかし、秋山は違った。受け取ってすぐ異変に気付き「走りながらよじれを直した。時間がかかりましたけど」。胸に校名がはっきり見えるように掛けると徐々にペースアップ。13・1キロで神奈川大の越川を逆転し、首位浮上。区間2位に29秒差をつける圧勝で2年連続の区間賞を手にした。「僕はメンタルが弱い。でも、弱っている時、みんなが励ましてくれた。魔法をかけてくれた」とチーム内で秋山隊長と呼ばれる最上級生はチームメートに感謝した。
実は秋山は9月にも5000メートル学内記録会で21分台を記録している。「その時も血液検査をして体に問題ないことは分かっていた。問題はメンタル。ただ、いい意味で思考回路は単純。昨年の成功体験を思い出させたら“湘南の神”になった」。原監督はギャンブルに勝ち、往路を勝ち、満面の笑み。当日の区間変更はなし。3年連続2区の一色は本調子ではなかったが区間3位でまとめ、梶谷、4区の森田、5区の貞永と箱根初出場組もほぼ計算通りに走り切った。
V3&3冠を目指し、原監督体制で臨む9度目の箱根路。感謝の意味も込めて「サンキュー大作戦」と命名された。「今、サンキュー指数は93%。総合優勝して139%としたい」と原監督は絶口調。前々回は「ワクワク大作戦」で初優勝。前回は「ハッピー大作戦」で連覇を果たした。3年連続で青学大の「大作戦シリーズ」が成功する可能性は高まった。(竹内 達朗)
【箱根駅伝】逆転劇は青学大アクシデント発生時のみ…復路展望
“自力優勝”の可能性を持つチームは青学大だけだろう。2位・早大、3位・順大、4位・東洋大、5位・駒大はわずかに優勝の可能性を残すが、その大逆転劇は自らの力を最大限に発揮した上で、青学大にアクシデントが発生した時だけに起こり得る。
ライバル各校は青学大を止めるため、定石通りの先手必勝で往路にほとんどの主力を投入した。それでも、青学大に勝てなかった。直近の学生3大駅伝6戦で5勝、2位1回。絶対王者は復路にも田村、下田らエース級を残す。選手層の厚みは他校を圧倒している。原監督は現在の「サンキュー指数」を93%と表した。優勝確率も93%といったところだろう。(箱根駅伝担当・竹内 達朗)
【箱根駅伝】往路V青学大・エース一色、区間賞ならず
青学大の大エースが仲間に助けられた。出雲、全日本で優勝のゴールテープを切った一色は3年連続の2区に登場。4位でタスキを受け、1・5キロで首位・東洋大をとらえ、6チームで先頭集団を形成した。だが「今回が一番きつかった。集団で走るのは難しかった」と振り返るように、なかなかライバルを突き放せない。すると16キロ過ぎの神奈川大・鈴木健の仕掛けについて行けず。最後は駒大・工藤をかわしたものの38秒差の2位でタスキリレーした。
それでも続く3区の秋山が逆転し、3年連続の総合優勝。ゴールで貞永を迎え入れるとようやく笑みがこぼれた。「きょうは力負け。僕の凡走を秋山がプラスに変えてくれた。きょうは総合力で勝った」。台風で中止になった14年出雲駅伝を除き、学生3大駅伝皆勤賞。エース区間で区間賞はなかったが、常に上位争いを繰り広げた一色は、最後に改めて最高のチームワークをかみしめていた。
【箱根駅伝】青学大OB”山の神”神野大地観戦記…見えた史上初3冠V3
青学大OBの「三代目山の神」神野大地(23)=コニカミノルタ=が、スポーツ報知に観戦記を寄せた。15年大会は5区区間新記録で金栗四三杯(MVP)を獲得し、往路と総合初優勝に貢献。2年連続の3区区間賞で往路優勝の立役者となった秋山雄飛(4年)を「湘南の神」と絶賛した。2位早大とわずか33秒差だが、復路にも主力を残す母校の3連覇に太鼓判を押した。(構成・榎本 友一)
今大会は、距離変更された4区と5区が見どころの一つだった。去年よりも2・4キロ延びた4区は、見ていて終盤バテている選手が多かった。速いランナーより、どんな状況でも高いレベルの結果を残せる強いランナーが求められる印象。風や日差しの強さもあり、去年までよく起用されていた1年生には、タフ過ぎる区間になったように見えた。
山上りの5区は距離は2・4キロ短くなったが、やはり今年も1番タイム差がつく区間だった。区間8位の青学大・貞永君と区間賞を取った駒大・大塚君は2分17秒差も開いた。他の1区間では逆転困難な差。8人抜いた上武大・森田君のように一発逆転もできる。箱根駅伝を勝つためには、これからも5区の大切さは変わらないと感じた。
青学大には、箱根対策で太ももの前後の筋肉を鍛える「山上り補強」がある。簡単に言えば前傾姿勢をしながらのスクワット。地面やバランスディスクの上で取り組み、負荷を上げる。僕は一昨年、けがで走る練習の量はこなせなかった。それでも、年間通して山上り補強を続けたら5区区間2位で走れた。「神野もやっていた」と貞永も昨夏から取り組んでくれたと聞いた。僕の成功体験が、青学大の山上りの伝統になっていってくれたらうれしい。
2位の早大とは33秒差。とはいえ、青学大の箱根駅伝3連覇と大学駅伝3冠はかなり見えたと感じる。原監督は復路逆転Vを想定していたが、3区の秋山君が予想以上に走った。日テレの中継に出る話を頂いた僕は、大みそかに「(不調の)秋山が頑張ったら放送の中で『湘南の神』って言いますよ」と佐藤基之トレーナーと約束した。秋山君が2位でタスキを受けた時点で神奈川大と38秒差もあった。だから自分のペースを刻んで入った。力みなくいい笑顔で楽しんで走った結果、快走につながった。2年連続の区間賞インタビューでは「湘南の神になったね」と僕から声を掛けました(笑い)。
復路と総合Vの行方は6区次第。青学大・小野田君が区間2位(58分31秒)だった前回のように快走し、早大との差が開くようなら、5分差で青学大圧勝の可能性もある。ただ、ゴールまで何が起こるか分からないのが箱根。復路も気温が上がる予報なので、脱水症状にならないよう、徹底できるかもカギになる。
◆神野 大地(かみの・だいち)1993年9月13日、愛知・津島市生まれ。23歳。中学1年で陸上を始め、中京大中京高から2012年に青学大総合文化政策学部入学。箱根駅伝は2年で2区6位、3年で5区区間新。4年は5区2位。3、4年時に箱根駅伝総合優勝。卒業後は実業団のコニカミノルタ入り。家族は両親と兄。165センチ、45キロ。AB型。
【箱根駅伝】往路3位順大、4区栃木が区間賞!骨折同僚の分まで
順大の10年ぶり総合優勝が見えてきた。3年生エースの栃木が、今大会から2・4キロ延びた4区で区間賞を獲得。往路の鍵となる準エース区間で10位から6位まで押し上げ、上位戦線へ引き戻した。「思い描いた通り。(リオ代表の)塩尻の走り(2区5位)をいかに生かせるか考えてきたのでうれしい」と胸を張った。
背中を押された。腰痛を引き起こす「強直性脊髄炎」を抱えながら今大会メンバー入りも、先月中旬に両すね疲労骨折で出場が絶たれた花沢に、平塚中継所での付き添い役を頼んだ。1万メートルで28分台の自己記録を持つのに、箱根を走れない同級生と共に戦いたい一心だった。花沢はスタート前「気楽に頑張れ。来年は一緒に走るぞ」。栃木が奮い立たないはずがなかった。「緊張もほぐれた。いてくれてよかった」と感謝した。
5区では、初出場の山田が3位へ浮上した。昨夏の士別合宿で、OBの“元祖・山の神”今井正人(32)=トヨタ自動車九州=から授かった「キツい時こそ笑顔になれ」の金言を生かし快走。運営管理車の長門俊介駅伝監督(32)が、レース中に思わず「後ろ姿が今井にそっくりだ。そのまま行け!」と声をかけるほどだった。復路も9区の聞谷主将ら戦力がそろう。長門監督を擁した07年以来の総合Vへ目が離せない。(細野 友司)
【箱根駅伝】往路4位東洋大、2区3位も口町ら4年が挽回
3大会ぶりの王座奪還へ、東洋大は4位と不完全燃焼に終わった。昨年2区区間賞の兄・勇馬(現トヨタ自動車)からエースを受け継いだ服部が1区区間賞も、ペースが上がらず6位まで8秒内の接戦。「後続との差をつけなければいけなかった」という酒井俊幸監督(40)のプランが崩れ、2区で8位に沈む、苦しい展開となった。
それでも、今季苦しんだ4年生が嫌な流れを断ち切った。3区で右足甲の故障で出雲と全日本の両駅伝を欠場した口町が8位から4位に押し上げ、同大会で区間7位、11位と不振だった4区・桜岡も1つ順位を上げ、粘って優勝戦線にとどまった。
復路は、2分40秒差で青学大を追いかける。「復路はミスなく走り、最低でも3位に入る」と指揮官。服部は「練習してきたことに自信を持って走ってほしい」と逆転Vを託した。(小林 玲花)
【箱根駅伝】往路5位駒大、山のエース大塚が意地の4人抜き区間賞
山のエースとして、駒大の大塚が意地を見せた。4区で今大会の1万メートル日本人最速記録を持ちながら、右足底の故障に苦しんだ中谷が区間18位のブレーキ。9位に転落し「ごめん…」と力なく受けたタスキを、大塚は「自分は自分の力を出すだけ」。序盤からハイペースで追い上げ4人抜きの区間賞。小田原でトップ青学大と6分18秒あった差を4分1秒の5位まで戻した。
前回は区間4位。「学生のうちに出たかった」というマラソンも箱根後の体調不良で出場できなかった。今季は5区のリベンジと3月のびわ湖毎日出場を目標にスタミナを強化。強風に苦しみながら「きつさもあったけど、なんとしても区間賞が取りたかった」と力を出しきった。
チームの大黒柱・中谷は「最後にかける思いは強かったのに、その走りができなかった」と肩を落とす中、ともに走ってきた仲間として「中谷はずっと引っ張ってきてくれた」。ミスを取り戻す走りで復路にタスキをつないだ。(遠藤 洋之)
【箱根駅伝】往路6位神奈川大、2区鈴木健“神ってる”走りで区間賞
神奈川大の鈴木健が、“神ってる”走りで「花の2区」を制した。青学大の一色、山梨学院大のニャイロら各校のエースを置き去りにし、先頭で戸塚中継所に駆け込んだ。「区間賞なんて驚いた。最後は苦しかったが、攻略法は根性だと思って死ぬ気で走った」。1時間7分17秒は歴代8位(日本人5位)の好記録。2区トップ通過は神奈川大史上初めての快挙となった。
思い描いていた作戦がピタリとはまった。「(14キロ地点の)権太坂までに力を出し切ると失速する。勝負は後半のラスト3キロと8キロになる」。5位でタスキを受けるとすぐに一色らの先頭集団につき、権太坂を上り切った残り8キロで「ここだ」と最初のスパート。残り3キロ地点でさらにペースを上げ、後続との差を50メートル以上に広げた。大会MVPにあたる金栗四三杯の最有力候補にもなり、「素直にうれしいです」と照れくさそうに笑みをこぼした。
愛媛・宇和島東高、神奈川大でもタイトルとは無縁だった。しかし、大後栄治監督(52)は、前回の箱根で2区14位に終わった鈴木健に「日の丸をつける選手になる気持ちでやらないと意味がない」と“世界”を意識させた。そして「練習で走れないと『もう一回やらせてください』と泣いて言ってくる」練習の虫を、3年生ながら主将に任命した。
2020年東京五輪出場を見据え「みんな平等にチャンスがあると思う」とマラソン挑戦を決意。来年2月の東京マラソンでのデビューを目指す。「自分の強みはコツコツ努力を積み重ねること」と背中でチームを引っ張る3年生主将は、12年ぶりのシード権獲得へ「今年はすごくチャンスなので、みんな自分の力を発揮してほしい」と仲間に思いを託した。(勝田 成紀)
◆鈴木 健吾(すずき・けんご)1995年6月11日、愛媛・宇和島市生まれ。21歳。宇和島南高3年時に全国高校駅伝に出場している父・和幸さん(46)の影響で、愛媛・番城小時代に陸上を始める。宇和島東高時代は「3年の時にインターハイ5000メートルで10位ぐらい」が最高成績。昨年10月の箱根予選会では58分43秒で日本人トップ。箱根駅伝は15年大会6区19位、16年大会2区14位、17年大会2区1位。好きな食べ物は「止まらなくなるぐらいミカンを食べる」。163センチ、46キロ。
【箱根駅伝】往路7位中央学大、山の采配的中!細谷が5区3位大健闘「気合でいった」
山の采配が的中した。中央学院大は5区の細谷が、区間賞の大塚(駒大)と22秒差の3位と大健闘。「気合でいった。山へのイメージづくりができていた。チームを少しでも(目標の)5位に近づけたかった」と往路7位に満足げ。2~4区が区間2ケタに沈んでいただけに、川崎勇二監督(54)も「よく走ってくれた。救世主ですよ」とねぎらった。
文字通りのぶっつけ本番だった。昨年8月に疲労骨折した右足甲の回復が思うように進まず、全体練習と完全別メニュー調整で何とか間に合わせた。「監督に信じて使ってもらえて良かった」と細谷。大学史上初の3年連続シード権獲得へ、指揮官は「守った気持ちでは無理。6区から攻めていく」と気合を入れた。
【箱根駅伝】往路8位上武大、5区・森田主将が8人抜き快走!初のシード獲得見えた
上武大の主将・森田が5区で8人抜きの快走を見せた。「10位を抜いた時はシード権が頭に浮かんだけど、あとは1秒でも早くゴールすることしか考えていなかった」。区間賞には3秒届かなかったが、16位から8位に引き上げゴールした。
“ノールック走法”だった。3度目の山上りは、初めて腕時計をつけずに走った。「見ると焦っちゃうので」。最後まで自分の走りに集中した。1年間、エレベーターを使わずに下半身を鍛えた。階段は1段抜かし。最も高い所で9階を駆け上がった。「4~5階くらいなら息を切らさずにいける」という階段トレが実を結んだ。
近藤重勝監督(42)は、花田勝彦前監督(45)からの電話に第一声で「森田がやってくれました!」と叫んだ。「なんとか往路で10位以内に入っておきたかったんで」。初のシード獲得が見えてきた。
【箱根駅伝】往路9位創価大・瀬上監督、シード権獲得へ「ウチは守るものはない」
2年ぶり2度目となった箱根路で、創価大が9位と大健闘した。2015年大会は往路、復路、総合すべて最下位(20位)の屈辱。リベンジを期した大会で予選会3位の勢いそのままに快走し、瀬上雄然監督(54)は「1ケタ順位を目標にしていたのでうれしい」と目を細めた。
2区のケニア人留学生・ムイル(1年)が17位から10位に押し上げると、4区・セルナルド主将(4年)が「大学生活最後にすべてを出し切ってくれた」と監督もたたえる区間5位の力走で、一時は5位に浮上した。「サークルからアスリート集団になった」(久保田満コーチ)と、出るだけだった2年前からチームは格段に成長。「もっといい順位に行ける」とムイル。シード権獲得に向け、瀬上監督は「攻めていくしかない。ウチは守るものはない」と力を込めた。
【箱根駅伝】往路10位日大、石川&ワンブィ伸びず…武者駅伝監督「1区と2区でもう少し」
予選会10位通過の日大は1区・石川主将が脱水症状を起こして区間16位、2区・ワンブィが同7位とダブルエースが不発ながら5区の川口が区間6位と健闘。シード圏内ギリギリの10位で往路を終えた。武者由幸駅伝監督(33)は「1区と2区でもう少し行きたかったけど、5区の川口は自信があった。いい走りをしてくれた」と笑みをこぼした。
ただ、11位の帝京大とは11秒差。14位の拓大とも41秒差の僅差で、3年ぶりのシード権獲得には、復路での踏ん張りが必要になる。指揮官は復路スタート6区の町井をキーマンに指名した。「6区である程度順位を上げて、あとは大手町まで粘ってくれれば」と青写真を描いていた。
【箱根駅伝】熱いシード争い41秒以内に5校!20校参加で2番目の接戦
往路を終え、来年のシード権(10位以内)を獲得する最下位の10位の日大と、14位の拓大までの差はわずかに41秒だった。
16年にも10位の拓大から14位の中央学院大まで37秒差の接戦で、現行の20校以上(オープン参加除く)が参加する制度になった07年以降では2番目の接戦となっている。
【箱根駅伝】往路11位帝京大、5区佐藤が区間18位“まさか”の失速
4区で4位まで順位を上げたが、5区の佐藤が区間18位と失速してシード圏外の11位に後退。中野孝行監督(53)は「箱根には上り坂、下り坂、まさかの3つがあるが、『まさか』だった。4区までの4人と同じような練習ができていたが、うまくいかなかった」と悔やんだ。
シード権争いは激戦となった。10位・日大との差はわずか11秒だが、12位・法大が12秒差、13位・日体大が23秒差で追っている。中野監督は復路について「6、7、9区がカギになる」とし、「6区から反撃の流れに乗れるオーダーにしたい。チャレンジャーとして、(前に)見えるチームは全部抜いていってほしい」とシード獲得だけでなく上位進出を見据えた。
【箱根駅伝】往路12位法大・坪田駅伝監督「100点。よく走ってくれた」シード権争いに自信
4大会ぶりのシード権獲得を目指す法大は10位まで23秒差の12位と好スタートを切った。坪田智夫駅伝監督(39)も「100点。よく走ってくれた」と選手たちを絶賛。1区では坂東が区間9位の力走で流れをつくり、4区では土井が11位から8位に順位を上げた。
今季は、3回に分けて行われた夏合宿を故障者ゼロで乗り切り、11月下旬の記録会では10人が自己ベストを出すなど底上げに成功。指揮官は「今のチームは下級生に突き上げられている」と評価し、復路は今勢いのある1、2年生を中心にシードを取りに行く。坪田駅伝監督は「往路と同等の力の選手をそろえた。おもしろいレース展開になればシードも十分いける」と自信たっぷりに言い切った。
【箱根駅伝】往路13位日体大・渡辺駅伝監督、復路の秋山に期待「5~6校はつかまえられる」
日体大は3年生の力走で往路13位。10位と34秒差でシード権争いに踏みとどまったが、渡辺正昭駅伝監督(54)は「まだ弱い。力がないということ」と厳しかった。出雲駅伝1区区間賞の小松はスタートで13位と出遅れ。4区で富安が15位から12位に上げ、続く5区では前回大会12月31日にエントリー変更され、悔しさにまみれた辻野が区間9位で粘った。
今季のチーム目標に掲げる「総合3位内」は諦めていない。復路は前回大会6区区間新で山下りのスペシャリスト・秋山が控え、指揮官は「前回と同じ走りをしてくれれば、秋山で5~6校はつかまえられる」と巻き返しを狙う。
【箱根駅伝】往路15位東海大、不振1年軍団
1年生4人を起用する大胆な采配で挑んだ東海大は、まさかの15位に沈んだ。1区の鬼塚翔太(1年)が区間2位の快走を見せるも、2区を務めた1万メートル28分台の1年生エース・関颯人(はやと)が区間13位に終わるなど経験不足を露呈。奇策は完全に裏目に出た。
東海大1年生軍団の箱根デビューは、ほろ苦いものになった。メンバー変更を含め往路オーダーに4人を起用し、フレッシュな走りに懸けたが、15位発進。両角速(もろずみ・はやし)監督(50)は「何とかなると思ったが甘かった。こらえきれなかった。連鎖反応でしたね…」と自身の決断を悔いた。
1区・鬼塚が「役目は果たせたと思います」と東洋大と1秒差の2位でタスキをつなぐ快走を見せた。しかし、想定通りだったのはここまで。2区を務めたエースの関は先頭集団のハイペースな走りについていけず、区間13位に撃沈。4区の松尾、5区の館沢の1年生コンビもそれぞれ区間12、13位に終わり、期待に応えられなかった。
2015年12月の全国高校駅伝で「花の1区」(10キロ)を走った上位6人中5人が入学するなど補強に成功。「常勝への先駆け」をテーマに掲げ、エントリーメンバーの半数を1年生で固めた。青学大の原晋監督(49)が「東海大の1年生は何をしでかすか分からない。ブレーキするかもしれないし、神懸かった走りをするかもしれない」と警戒するなど下馬評は高かったが、奇策は裏目に出た。
復路は一転、6区の中島以外は経験十分な4人の上級生が登場する。両角監督は「明日は上級生が中心になってくる。この苦い経験を生かして、シード圏内(10位以内)に目標を切り替えて頑張っていきます」と前を向いた。プレッシャーに押しつぶされたルーキーたちの失敗を、経験豊富な上級生がカバーできるか。東海大の挽回劇に期待だ。(岡島 智哉)
【箱根駅伝】往路16位山梨学院大、Wエース不調で大苦戦!
2区のケニア人留学生、ドミニク・ニャイロ(2年)が区間9位に終わった山梨学院大は16位。シード権を目指し復路に臨む。
22年ぶりの総合優勝を目指す山梨学院大は、ダブルエースの不調で序盤から大苦戦となった。当日変更で伊藤に代わり1区に起用予定だった日本人エースの佐藤孝哉(4年)は体調不良で出場取りやめ。「厳しい戦いになることは分かっていた」と上田誠仁監督(57)は表情を曇らせた。伊藤は5キロ過ぎで早くも集団から離され最後尾に。20位でタスキを受けた区間賞候補の2区・ニャイロも1時間8分31秒と区間2位の前回(1時間7分20秒)には遠く及ばず区間9位。順位を2つ上げるのが精いっぱいだった。
「ニャイロは2週間ほど前から右くるぶしに違和感を覚え、調整しながらのレースだった」と明かした指揮官。担当医とも話し合い、慎重に決めた起用だったが、結果につながらなかった。ニャイロは「最初からひとりだったので、うまくペースが上げられなかった。他の留学生にも負けたくなかったのに」と万全な状態でないレースに「悔しい」。疲れ切った顔で言葉を絞り出した。
5区では上田監督の次男・健太が初の山上り。区間7位とチーム内最高位を記録したが、往路は総合16位。シード権内(10位)まで2分1秒と厳しい状況にある。「最終ラウンドまでめった打ちにされても諦めずに戦うチームでありたい」と指揮官。31年連続で指揮を執った経験を武器に、復路での巻き返しを誓った。(大津 紀子)
【箱根駅伝】往路17位明大、1区で出遅れ浮上できず
明大は末次が1区明大ワーストの18位と出遅れると、その後も浮上できずに終わった。「悪い流れをいい流れに変える力は今のウチにはない。堅実な走りをするしかなかったが…」と西弘美監督(64)は残念がった。「選手層が薄い中で、故障者が3人出た」ことで当初予定していた10区間中、7区間を12月中旬に変更せざるを得なかったことが響いた。「私の配置の失敗が、こういう結果になってしまった」と自らを責めた。
【箱根駅伝】往路18位大東大、奈良監督の長男・凌介5区19位…奈良監督「調整不足」
奈良修監督(45)の長男・凌介が山の洗礼を浴びた。区間19位に沈み「中盤から体が動かなくなった。10キロ過ぎから覚えていなくて。簡単にはいかないなと…」。涙で言葉は続かなかった。
前回の山梨学院大・上田監督、次男・健太に続く大会史上2組目の現役監督、選手の「父子鷹」実現だった。奈良監督は大東大時代に4年連続で5区を走り、2度、区間賞に輝いた山のスペシャリスト。「腕を振れ」と叫ぶ父の声は聞こえても、体が反応しなかった。
奈良監督は「調整不足。今日に合わせられなかったということ」と反省を促した。3区・下尾主将が9位まで順位を上げながら、往路は18位。「3区までは予定通りだったが、4区、5区の1年生の走りは先輩に対して申し訳ないものだった」と厳しい言葉が続いた。「まだ明日、半分あるので切り替えていきたい」。2年ぶりのシード獲得を諦めてはいない。
【箱根駅伝】往路19位国学院大、2年ぶり出場も粘れず苦戦
国学院大が2年ぶりの箱根路で19位と苦戦した。1区・細森が区間11位と粘ったが、2区以降は記録を伸ばせない。一般入試からはい上がった5区・市川も区間17位に終わった。目標のシード権獲得は厳しい状況。前田康弘監督(38)は「なぜこうなったかは分からないが、これが結果だから。あした取り返していくしかないぞ」と選手を励ました。
【箱根駅伝】往路20位国士舘大、まさかの最下位で折り返し
国士舘大がまさかの最下位で折り返しとなった。5区・藤江が11キロ過ぎに両太ももの裏をつり大きく遅れるなど、3選手が区間最下位に沈んだ。藤江は「みんなに申し訳ないです…」とうつむいた。27年ぶりのシード権獲得は絶望的。添田正美監督(39)は「あしたはあしたのレースがある。流れに乗れるようにしたい」と前を向いた。
【箱根駅伝】往路VTR…5区間の区間賞全て異なる5大学
◆報知新聞社後援 第93回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)(2日、東京・読売新聞東京本社前―芦ノ湖、5区間=107・5キロ)
【1区】序盤は10キロ通過が30分54秒の超スローペース。5.5キロで山梨学院大・伊藤が離れたが、12キロ過ぎまでは20チームが集団で展開。残り1キロを切って仕掛けた東洋大・服部が追いすがる東海大・鬼塚を振り切りトップでリレー。青学大・梶谷は4位でつないだ。
【2区】青学大・一色らが1.5キロで東洋大・山本に追いつき6人の先頭集団に。16キロ過ぎに神奈川大・鈴木健が仕掛けて首位に浮上し、同大学初の同区区間賞を獲得した。外国人留学生では拓大のデレセが10人抜きの力走で14位から4位に順位を引き上げた。
【3区】38秒差の2位でタスキを受けた青学大・秋山が13キロ過ぎに神奈川大・越川をとらえて首位に浮上。追い上げる早大・平らを抑えて2年連続の区間賞を獲得した。8位スタートの東洋大も口町で4位に浮上。大東大は下尾が3人抜きでシード圏内の9位に。
【4区】青学大・森田が首位をキープも、10位でタスキを受けた順大・栃木が4人抜きで区間賞。駒大で今季の1万メートル日本人学生最高タイムを持つ中谷は3キロ過ぎから失速し区間18位。順位を9位に落とした。拓大・宇田は7人抜きで再びシード圏内の10位浮上。
【5区】青学大・貞永は区間8位も首位を守り抜き、青学大が3年連続の往路優勝。早大は安井が後半に追い上げ33秒差の2位。順大も3位に浮上。駒大・大塚が区間賞の走りで4人を抜き5位。上武大は森田が区間2位と好走し、同大学最高の8位で折り返した。
◆5大学から区間賞 今大会は往路5区間の区間賞が全て異なる大学となった。史上14例目。最近では11年大会が1区は早大、2区が東海大、3区が山梨学院大、4区が帝京大、5区が東洋大だった。
◆繰り上げスタート 首位の青学大から10分以上離された17位明大、18位大東大、19位国学院大、20位国士舘大は復路(6区)で繰り上げスタート。6区は最近5大会で12年が13、13年が7、14年が13、15年が13、16年が12校と多かった。5校以下となるのは11年の2校以来6年ぶり(オープン参加除く)。
(以上 報知)
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青学大が総合力でリード 早大逆転は6区で追いつくことが条件
【金哲彦の目】最終的には2位早大との差は33秒に縮まったが、青学大にとっては十分想定内だろう。昨年までと違って今年は故障者も多く、往路は苦戦を予想する人も多かったが、やはり総合力では他校より一枚も二枚も上だった。特別速い選手や神野のようなスペシャリストはいないが、初めて箱根を走った1区梶谷、4区森田、5区貞永がブレーキを起こすこともなく、いずれも安定した走りで往路Vに貢献した。誰が出ても一定のレベルで走ることができるのが青学大の最大の強みで、いわゆる中間層の厚さとそこから選手を選び出す原監督の確かな目がチームを支えている。
対する早大は5区の安井が頑張り、箱根の山を上り切って下りに入ったところで一気に青学大と差を詰めた。上りから下りへの切り替えがうまくいかなかった貞永とは対照的で、経験の差が出た感じだ。ただ、青学大は復路にも有力選手をそろえており、早大が逆転するためにはまず6区で追いつくことが絶対条件。下りに入ってから追いつくことは難しいので、平たんと上りがしばらく続くスタート直後に一気に差を詰め、下りに入る時点では並走に持ち込んでいること。逆に青学大としてはリードしたまま山を下れば総合3連覇に大きく前進するだろう。(駅伝マラソン解説者)
【復路展望】今年は“復路の青学” 独走の可能性十分だが…
今年の青学大は往路よりも復路の方が強い。6区の小野田勇次(2年)は昨年の区間2位で田村、下田が補欠から当日のメンバー変更で投入される見込み。原監督はトップから2分以内で往路を終えれば逆転可能としていたが、往路を制し2位・早大とは33秒差。「6区で差を1分以上に拡大し、7〜10区は楽に走らせたい」と指揮官は話しており、山下りを乗り切れば独走する可能性が高い。早大は昨年9区区間賞の井戸浩貴(4年)を補欠に回している。復路で起用する方針だが、6区で青学大に食らいつかないと道は開けない。
1区から記録が伸びず、全体的にタイム差がつかなかった。シード権となる10位の日大から16位の山梨学院大まで、2分1秒に7チームがひしめく。シード権争いにも注目だ。
≪08年駒大は1分14秒差を逆転≫過去5年に限れば往路優勝チームの総合V確率は100%。最近の復路での逆転劇は2例ある。11年の早大は往路首位の東洋大に27秒差の2位から復路で逆転し優勝。08年の駒大は往路Vの早大と1分14秒差の2位からレースをひっくり返している。
青学大「総合力」の勝利 エースが区間3位も初陣貞永5区で粘り
青学大は神野が抜けて不安視されていた山上りの5区で、箱根初出場の貞永隆佑(3年)が粘った。トップでスタートすると、序盤は2位の早大との差を広げる力走。後半は早大に追い上げられたが、33秒差でフィニッシュし、「素直にうれしい。みんな笑顔で喜んでくれた」と笑みを浮かべた。1年時の半年は神野と寮が同部屋。陸上に対する先輩の真摯(しんし)な姿勢を見て、競技に生かしてきた。神野も「貞永には頑張ってほしいけど、かなり厳しいと思う」と予想していたが、区間8位で耐えた。
1区の梶谷瑠哉(2年)は前半スローペースで得意なラスト勝負となり、トップと4秒差の4位で2区のエース一色恭志(4年)へ。日本人4人目の1時間6分台を目指した一色は1時間7分56秒の区間3位に終わり、「完全に力負け」と悔しさをあらわにしたが、3区・秋山の快走に続き、4区の森田歩希(2年)も区間2位と踏ん張った。「総合力で勝ち取った優勝だと思う」という一色の言葉に実感がこもっていた。
湘南の神現る!秋山3区2年連続区間賞 青学大往路3年連続制覇
“山の神”はいなくても“湘南の神”がいた。青学大が5時間33分45秒で往路3連覇を飾り、史上初の総合3連覇と大学駅伝3冠の同時達成に王手をかけた。湘南海岸沿いなどを駆ける3区(21・4キロ)で、秋山雄飛(4年)が2年連続区間賞の快走でトップに立つと、そのまま逃げ切りに成功。2位・早大とは33秒差だが、3日の復路にも強力なメンバーが控え、偉業がはっきりと見えた。
指揮官はもう、総合優勝を確信している。往路優勝後のインタビュー、原晋監督の声が晴れ渡る箱根の空に響いた。「サンキュー!」。箱根3連覇&大学駅伝3冠が懸かる今大会は自身9度目のタクトで、掲げたテーマは「サンキュー大作戦」。決めぜりふの「サンキュー」は事実上のV宣言だ。「あ、まだ早い?フライングしました、すいません」と苦笑いを浮かべたが、「往路優勝はうれしい誤算」と余裕を漂わせた。
昨年まで2年連続で山上りの5区を務め、“山の神”と呼ばれた神野大地(現コニカミノルタ)が卒業。今年、神がいたのは、山ではなく海だった。湘南海岸沿いを駆ける3区。トップの神奈川大と38秒差の2位で発進した秋山が、13キロすぎに先頭に立った。2年連続区間賞の力走。テレビ解説を務めた神野は言った。「“湘南の神”になったね」。秋山は答えた。「神に言ってもらえてうれしいです」。絶不調を乗り越えた4年生が、チームに貢献した。
16年春はどん底に転落した。4月の5000メートルでは陸上人生でワーストという16分25秒。7月のミーティングでは、安藤主将に「このままじゃ、後輩は誰もおまえについていかない!」と厳しい言葉をかけられた。ぜんそくと診断され、調子は上がらず10月の出雲、11月の全日本とメンバーには入れなかった。メンタル面が課題で、「沈んでいる時はとにかく沈んでいる」と言う。弱い自分を支えたもの。それは「自分もチームに貢献したい」という思いだった。
最後の箱根を前にしても、原監督が「500%無理」と言う状況。12月中旬、秋山は5000メートルの練習で凡走し、翌日の16キロ走はウオーミングアップもせずに参加。モチベーションはなかったが、「意外と走れて開き直った」と好転すると、トレーナーに「フィジカルは問題ない」と太鼓判を押されて急上昇だ。12月29日の区間エントリーに滑り込み、たどり着いた夢舞台。「みんなが支えてくれてここにいる。“サンキュー大作戦”は大成功です!」と笑った。
3日の復路は、1万メートルで青学大史上最速(28分18秒31)の田村和希(3年)、昨年8区区間賞の下田裕太(3年)が、補欠から当日のメンバー変更で投入される。原監督は戦前、3区の秋山が不安でチーム状態を示す“サンキュー指数”を39%としていた。「往路は100点。“サンキュー指数”も93%に上がった。ゴールでは139%を目指して頑張りたい。復路にも、強い速いランナーがいる」。ライバルを突き放し、大学駅伝界に金字塔を打ち立てる。
◆秋山 雄飛(あきやま・ゆうひ)1994年(平6)5月2日、兵庫県生まれの22歳。須磨学園高から青学大に進学。国際政治経済学部4年。昨年の箱根駅伝は3区で区間賞を獲得した。ニックネームは「秋山隊長」。1万メートルの自己ベストは28分58秒93。卒業後は中国電力に入社し競技を続ける。1メートル78、60キロ。
▼箱根3連覇と大学駅伝3冠 箱根の3連覇以上は中大の6連覇(59〜64年)、日体大の5連覇(69〜73年)、日大(35〜38年)、順大(86〜89年)、駒大(02〜05年)の4連覇がある。出雲、全日本、箱根を同一年度に優勝する大学駅伝3冠は90年度の大東大、00年度の順大、10年度の早大が達成。青学大は史上6校目の箱根3連覇と、史上4校目の3冠が懸かるが、同時達成は史上初となる。
早大まだ届く2位 「こんなもんか!」沿道からの声が安井の心に火
青学大の牙城は崩せなかったが、辛うじてくさびは打ち込んだ。33秒差の2位。3区を走った早大の平主将はレース後、部員たちに「安井の走りで流れが変わったと思う」と復路への期待を込めて語りかけた。希望をつないだのは、山上りでの安井の力走だった。
安井は11月の全日本駅伝ではアンカーを務めた。首位でたすきを受けたものの、一色にかわされて2位。レース後は泣きじゃくって「1位のゴールテープを切りたい」と打倒青学を胸に2年連続の山上りを直訴した。だが全日本の時と違い、今回の早大は青学大の後塵(こうじん)を拝し続けた。
4区を終えて1分29秒のビハインド。安井も序盤は足が動かず、青学大の貞永に差を広げられた。だが沿道から声が飛んだ。「しっかりしろ!」「おまえはこんなもんか!」。知り合いの声ではない。赤の他人だ。厳しい言い方だが、安井は「早稲田はファンが多い。それもいいところ」と意気に感じた。中間点の宮ノ下を過ぎたあたりから体も動き始め、最後まで必死に前を追った。
相楽監督は「十分に射程圏内」と言った。復路には昨年9区区間賞の井戸浩貴(4年)や有力新人の新迫志希(1年)らが控えている。今年のチームのテーマは「競り勝つ」。安井のような不屈の走りができれば、最後には6年ぶりに勝つ瞬間も訪れるかもしれない。
順大3位 「元祖・山の神」今井の再来!福島出身・山田で山越えた
順大の指揮官には、力強く坂道を蹴って駆け上がる姿が元祖・山の神に重なって見えた。「後ろ姿は今井そっくりだぞ!体は動いているからそのまま行け!」。かつて3年連続の5区区間賞を獲得した今井正人(現トヨタ自動車九州)と同級生だった長門新監督は伴走車からハッパを掛けた。6位でたすきを受けた1メートル60の山田攻(こう、2年)が名前通りに山を攻める。帝京大、創価大を抜き、13キロすぎには東洋大も捉えた。区間5位の走りで順位を3位に上げ「上りで頑張れば(名前が)話題になるかなと思った」と照れ笑いを浮かべた。
福島・学法石川高時代からアップダウンが得意で、山要員としてスカウトされた「秘密兵器」だった。今夏の北海道・士別合宿に同じ福島県出身の今井が参加。憧れの大先輩から「きつい時こそ勝負だぞ。リラックスして笑顔で走れ」とアドバイスをもらい、その通り実践すると粘りの走りができるようになった。「あの合宿があって今がある。福島から同じ道をたどる今井さんに少しでも近づきたい」。小さな“山の神”がチームを押し上げた。
初出場の山田の快走をお膳立てしたのは4区の栃木渡(3年)。10位でたすきを受けると、海風の中を快調に飛ばして4人抜きを演じた。今大会は4区が延びて、5区が短縮された。長門監督は「山田は上りに強いけれど走力が劣る。栃木は長い距離にも強くて、この変更はプラスになると思っていた」と言った。狙い通りの4、5区の好走で、完全優勝した07年以来の往路トップ3発進だ。かつて「復路の順大」と言われたが、指揮官は「復路にも選手を残している。何としてもこの順位を死守したい」と名門復活に自信を示した。
東洋大4位に白旗 凡タイムに酒井監督「総合優勝はかなり難しい」
東洋大はどこか歯車のかみ合わないままだった。3年ぶりの往路優勝を逃して4位。酒井俊幸監督は「青学大も5時間30分を切っているわけじゃない。そこまでレベルは高くないのに4位は不満。もったいないレースだった」と悔しがった。1区に起用したエースの服部が、周囲からのマークもあって最初の3キロで9分47秒と想像以上のスローペースにはまった。展開を打破しようと5キロすぎで一度仕掛けたが抜け出せない。残り1キロすぎからの再スパートで区間賞こそ死守したが、1時間3分56秒は昨年なら区間18位に相当する凡タイム。優位に立つほどのリードは築けなかった。
3区の口町、4区の桜岡も好走は見せたが、先を行く青学大や早大に差を広げられた。酒井監督は「総合優勝はかなり難しい」と語っており、復路でも厳しい戦いを強いられそうだ。
駒大5位 4区・中谷無念の失速「最後に懸ける思い強かったが…」
駒大は主力をつぎ込んだものの、故障明けのエースが不発に終わった。右かかとの故障で出雲、全日本を欠場した中谷が4区で出場。最初の1キロこそハイペースで飛ばしたが、久々の駅伝で徐々に失速。「最後に懸ける思いは強かったが、その走りができなかった」と区間18位に沈み、チームも5位から9位に後退した。
同じ4年生の大塚が「中谷には今まで引っ張ってもらった。少しでも挽回したかった」と区間賞の力走で山上りを制したが5位まで戻すのがやっとだった。
神大6位 “伏兵”鈴木健が「花の2区」主役 歴代8位の好走
各校がエースを配置した花の2区を制したのは3年生のダークホースだった。歴代8位の1時間7分17秒で激戦区を走り抜いた神奈川大の鈴木健は「後半勝負だと思っていて、残り8キロから自分の走りができた。良い位置で(1区の)山藤がつないでくれたので、リラックスして走れた」と心地よさそうに汗を拭った。
トップの東洋大から5秒差の5位でたすきを受け取ると、16キロすぎでペースアップし先頭に立った。さらに残り3キロでラストスパート。「最後の坂は苦しかったが、攻略法は根性だと思っていた」と歯を食いしばりながらトップで3区へつないだ。神奈川大が2区で区間賞を獲得するのは史上初。伴走車から身を乗り出した大後監督は「健吾〜!ありがとう!よくやった!」と力走をねぎらった。
昨年11月にはユニバーシアードの強化合宿で、オランダに初めての海外遠征を経験した。アップダウンのある15キロのロードレースで、レベルの高いレースを経験。生活面でも「日本は恵まれている。一番は英語ができずに困った」と気づくきっかけとなった。
この遠征を引率したのは順大を9度の優勝に導いた沢木啓祐氏。大後監督は帰国した沢木氏から「2区で区間賞獲れる選手だぞ」と耳打ちされたという。鈴木は予選会で日本人トップの3位に入っており、今回も「日本人トップを獲れ」とはハッパを掛けていた。それが留学生も抑えての区間賞。名伯楽の見立ては間違っていなかった。
実力を買われ3年生ながら昨年3月から主将を任されている。練習熱心で、高校時代には故障を心配した宇和島東・和家監督から練習を止められたこともあるという。1万メートルのタイムは2年時の28分53秒67から28分30秒16と1年で20秒以上も縮め、結果でチームを引っ張ってきた。
神奈川大は97、98年と2年連続総合優勝を果たした古豪だが、シード権獲得は05年が最後。「結果を出すことが自分の役目。そういった意味では良いレースができたのかな」。12年ぶりシード奪回へ、頼れる主将が復権への道を開いた。
◆鈴木 健吾(すずき・けんご)1995年(平7)6月11日、愛媛県生まれの21歳。宇和島東高から神奈川大に進学。1万メートルの自己ベストは28分30秒。箱根には1年時から出場し、15年は6区で19位、16年は2区で14位だった。1メートル63、46キロ。
快走の神大・鈴木健 父も恩師も口そろえ「物おじしない子だった」
神奈川大・鈴木健の応援に駆けつけた父・和幸さん(46)と母校の宇和島東陸上部の和家哲也監督(45)は「昔から物おじしない子だった」と口をそろえた。
「普通、周りに実力者がそろうとびびったりするものだが、そういうところがなく、むしろレースを楽しんでいた」と和家監督は、各校のエースがそろった2区においても持ち味を発揮した教え子に目を細めた。
中央学院大7位 1年生コンビ不発も5区・細谷で立て直し
中央学院大は出雲4位、全日本5位で上位進出が期待されたが、7位と低調なスタートとなった。
2区の高砂が区間15位、3区の横川が区間12位と1年生コンビが不発。川崎勇二監督は「2、3区が悪かったが、よくこの順位で収まった。やっぱり上級生ですね」と5区で区間3位の力走を見せ、4人抜きの意地を見せた3年生の細谷を称えた。
上武大 過去最高8位発進!森田8人抜き、初のシード獲得に前進
5区森田が区間2位の1時間12分49秒の好走で8人抜きを演じ、過去最高の8位発進だ。近藤重勝監督は「(森田は)12分台は狙えると思っていた。初日としては最高の終わり方だった」と満足顔だ。
9年連続出場で、初のシード獲得に大きく前進。指揮官は「うちにはゲームチェンジャーはいない。混戦の中で10位に食い込みたい」と粘りの駅伝を誓った。
日大10位…1、2区出遅れ3年ぶりシード圏内ぎりぎり
日大は3年ぶりのシード復帰を目指し、シード圏内ぎりぎりの10位で折り返した。1区の石川が区間16位に沈み、予選会トップだったケニア人留学生のワンブィも2区で区間7位。日本学生5000メートルでワン・ツー・フィニッシュした2人が結果を出せなかった。
シード争いは8位の上武大から2分43秒の間に9チームがひしめく混戦模様。武者監督は「ミスをした学校がシードから落ちる。踏みとどまってほしい」と復路に期待した。
帝京大11位 中野監督、目標6位以内達成へ自信「逆転できる」
2年連続のシード獲得に向けて11位につけた。当日変更で1区に入った世界大学クロカン代表の竹下が7位と好発進。初めて2区を任された内田も他校のエースを相手に区間8位と踏ん張った。
4区で4位まで浮上した後に5区で大きく順位を落としたが、中野監督は納得の表情。「復路の選手もいい流れでいい練習をしてきている。2分前のチームまでは全然逆転できる」と6位以内の目標達成に自信を見せた。
東海大15位 1年中心「のるかそるか」の勝負も「甘くなかった」
東海大は3区以外を1年生で固めたが、15位と低迷した。1区で鬼塚が2位の力走を見せたものの、2区のエース関が14・5キロ地点で先頭集団から遅れてズルズル後退。11位で3区につなぐと、最後まで盛り返せず順位を落とした。
若手を起用し「のるかそるか」と勝負に出た両角監督だったが「甘くなかった」と反省。復路へ「(総合11位以下で)シード落ちしたら、また1年生がシードを取り戻せばいい。それも強くなる上で必要かなと思う」と語った。
山梨学院大16位、大東大18位…上田&奈良“親子鷹”悔し
山梨学院大の上田誠仁監督と次男・健太(3年)、大東大の奈良修監督と長男・凌介(1年)は、ともにかつて5区を走った父と初めて5区を走る子という間柄。父に憧れた2人はこの日、山で父の偉大さを知った。
順大2〜4年時に5区を走った上田監督は、17位でたすきを受けた息子に「想定した位置とは違うから落ち着いて」と声を掛けた。優勝候補に挙がりながら、よもやの下位争い。健太は順調に飛ばしたが、頂上付近で逆風を受けて体が極端に冷え「足がつりそうだった」という。急に動きが鈍り、父も体の異変に気づいた。それでも区間7位(往路16位)に踏みとどまり「気力を振り絞ってくれた。(来年は)リベンジしてほしい」と言った。
奈良監督も大東大時代に4年間5区を走り、2度区間賞に輝いた「山のスペシャリスト」。区間19位(往路18位)に沈んだ息子について「注目されプレッシャーを与えてしまった。もう少し守ってあげないといけなかった」と肩を落とした。凌介は「自分がレースを壊してしまった」と泣きじゃくったが、父の偉大さに気づかされ、息子たちはたくましくなる。
(以上 スポニチ)
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