嬬恋というのは、いい響きの地名だと思う。なんでも日本武尊(やまとたけるのみこと)が、亡き妻を偲んだことにちなむという。亡き妻とは、古事記にある弟橘媛(おとたちばなひめ)のことだろうか。もっとも、ろくに古事記などは読んだこともないので、真偽のほどは分からない。さて、その嬬恋村に、キャベツ畑の真ん中で愛を叫ぶ「愛妻の丘」という場所がある。
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四阿山(あづまやさん)の東麓にあり、遠くに浅間山、近くにキャベツ畑がある丘である。丘の上には、叫び台と呼ばれる台と、ハグ台と呼ばれる台、そして鐘がある。ここに、二人で訪れて、まず、鐘をつき、次に叫び台の上で愛を叫び、最後にハグ台の上でハグをするのだそうである。
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丘からの眺めは、たいへん素晴らしい。浅間山は雲に隠れて見えなかったが、田代湖から糠塚山、村上山、桟敷山、湯ノ丸までが一望に見渡せる。
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毎年9月には、ここで、「キャベツ畑の真ん中で愛を叫ぶ」イベントが開かれるそうである。だが、ここに滞在している間、愛を叫ぶ人もハグする人もいなかった。帰ろうとしたとき、バスツアーの一団がついて、これだけたくさんの人がいれば、誰かがするかと思ったが、結局誰もしなかった。自分もそうだが、なかなか人前でできるものではないようである。
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とはいえ、素晴らしい眺望を堪能し、キャベツ畑の中を家路についたのである。