MZの手下の日記

なんということもなく、このたび、日記を開設しました。昔の文章のいくつかも、すこし手を入れて移しています。

箱根・仙石原のオーベルジュ漣

2021-12-31 11:00:00 | 旅の記憶
箱根仙石原のオーベルジュ漣を再訪した。昨年の暮れ以来の気がする。露天風呂付きの部屋に宿泊、なかなか快適である。ただし粉雪がちらつくような寒い天候で、露天風呂のあるデッキは少し寒い。なかは落ち着いたしつらえで、静かだが、穏やかな雰囲気で、お気に入りの宿のひとつである。この宿は仙石原を右手に見ながら、県道75号を抜けた先の、ちょうどガラスの森美術館の裏手にある。 







大浴場の内湯は、大涌谷から引かれた硫黄泉の濁り湯で、かけ流しである。この濁り湯につかると、体の芯からホカホカとあったまる気がする。大浴場の外側にある露天風呂と、部屋付きの露天風呂は、裏手の温泉病院を源泉としてひかれており、こちらは加水された循環式のようだ。少し前の大涌谷の噴火以来、箱根の温泉宿のいくつかは営業を閉じてしまったが、こうして何も変わらず、このオーベルジュがあると少しほっとする。





夕食のフレンチは、メインディッシュに「蝦夷鹿と富士の国ポーク、フォアグラのパイ包み焼き」を選んだ。蝦夷鹿を洗いミンチにした富士の国ポークとフォアグラで包み、さらにそれをパイ包みにして焼きあげた一品である。これにソムリエに選んでもらったシラーの赤ワインを飲んだ。このほかにラングドックとブルゴーニュの白ワインと常陸野ネストのホワイトエールを飲み、超ご機嫌である。 



前菜には、池澤シェフのスペシャリテ「あしたか牛のコンソメジュレをのせた海の幸の贅沢なカクテル」を頼んだ。駿河湾で採れたアワビ、オマール海老、タコ、ホタテなどが入り、温泉卵とキャビアが添えてある。これをよく混ぜて食べるのである。たいへんに美味しい。漣に来ると必ず頼んでしまう一品である。魚料理は、甘鯛のポワレ、松笠焼のようにパリパリになった鱗が美味しい。ソースにはイカ墨が使われていてコクがある。 




朝ごはんは、スープと温野菜、自家製のハムとソーセージ、デミグラスソースのオムレツにした。地元で採れた野菜が美味しい。こうして、一晩で、温泉に3回入り、ご機嫌なフレンチを食べ、ワインを飲み、素敵な朝食をとり。、今年は最後に贅沢をしたと思いながら年の瀬の一日を過ごしたのである。今年はいろいろあったが、終わりよければすべてよしだと思う。





山中城址と箱根旧街道

2021-12-30 15:00:00 | 旅の記憶


12月のある日、山中城址を訪ねた。山中城は、小田原北条氏の城跡で、秀吉の小田原攻めの際に4万もの大軍に攻められ、半日で落城したと言われている。戦国時代後期に築城されお城である。北条側の守備の兵力は4千と伝わっているから、およそ10倍もの圧倒的な兵力差に敗れたわけである。

城は、旧東海道を包み込むように築かれており、三島から旧東海道を攻め上ってくる敵をくい止める重要な防衛拠点だったそうだ。上の写真は岱崎出丸 (だいさきでまる)から三島方向を眺めたもので、ちょうどこの方向から、400年前に豊臣の大軍が攻め寄せてきたことになる。

土塁と曲輪がよく残されており、戦国時代の終わりの城の遺構がそのまま残されている貴重な城跡だそうである。




写真のような畝堀や障子堀、土塁がよく残されており、北条氏の築城術がよくわかる貴重なものだそうである。合戦があったときは、秀吉との合戦に備えて、堀や岱崎出丸の整備が進められている段階で、まだ完成前に合戦となったようである。激戦とはいえ半日で落城した理由でもあるのかもしれない。

今回は様々な時間の制約で岱崎出丸 を中心に見学し、三島方向に旧東海道を少し歩いてみた。箱根八里の何やら碑らしいものもあって、こういうところを昔の旅人も歩いていたのだと思うと少し不思議な気持ちになった。





熱川バナナワニ園

2020-02-19 00:17:43 | 旅の記憶
網代温泉を出て、連れにどこに行きたいかと問うと、熱川のバナナワニ園へ行きたいという。どうしてそんなところに行きたいかは謎だが、ワニはじっとしているとかわいいという。さらに意味不明だが、ほかに行く当てがるわけでもなく、熱川まで足を延ばしてバナナワニ園を訪ねた。



熱川バナナワニ園は、伊豆急の熱川駅から、徒歩で数分の距離にある本園と、それより少し山側にある分園とからなる。東伊豆は海の近くまで山が迫り、急な谷が刻まれている。その急峻で狭い谷に、張り付くようにワニ園はあった。



ワニの種類は多く、世界各地のワニが飼育されている。多くのワニは温泉につかりながら、動きを止めているが、看板の注意書きによると、のそのそしているようだが、狩りのときの動きは早く、瞬発力もあり、絶対に柵から乗り出さないようにとあった。言われなくてもそんなことはしないよとも思うが、のへぇーとしている姿を見ると、そんなことを思う人も出てくると思う。



もう一つのみどころは、園名にもあるバナナである。このバナナも温泉の熱を利用した温室で育てられている。もっともバナナだけではなく、多くの熱帯植物、例えば モンテスラやハイビスカスなども育てられおり、個人的にはそちらの方が興味深かった。少なくとも植物の方が、素人目には多様性が簡単に理解できるように思える。ワニはアリゲーターだ、クロコダイルだといっても、自分には似たように見える。



一連の温室群の最後には、睡蓮や蘭の温室があり、どちらもとても美しい。温室を出て、海を眺めると、相模湾に伊豆大島が見えた。熱川の温泉郷の先に見える大島は思いのほか、大きく、伊豆七島はここから近いのだなぁと改めて感じさせられた。そして、やっぱり電車で来るべきだったと少し後悔しながら、渋滞の東伊豆をかえったのである。





思い出の網代温泉

2020-01-19 22:07:46 | 旅の記憶
令和初めの正月に、南熱海にある網代温泉を訪ねた。金色夜叉の貫一お宮で有名な、とは言っても、私などは碌に読んだこともないのだが、高層のホテルが立ち並ぶ海岸沿いを抜け、多賀を超えて、南に走っていくと、網代温泉がある。熱海市の一番南に位置する海沿いの小さな温泉である。この網代の「源泉湯宿大成館」に宿泊した。


案内された部屋は、相模湾に面しており、右手には、網代漁港を望む。漁港の前は俗に干物ストリートと呼ばれ、干物の直売所が軒を連ねている。宿は新しくはないが、中はきれいに手が入れられており、落ち着いた雰囲気でくつろげる。温泉は敷地内から湧き出るナトリウム・カルシウムー塩化物泉で、いかにも海岸沿いの温泉だと思わせる成分である。


毎分90リットルの豊富な湧出量のおかげで、大浴場も、最上階に二つある貸切風呂も、加水をしないかけ流しの風呂である。大浴場は、それぞれ露天風呂と内湯を備え、どちらも広くはないが、しつらえも良く、またよく手入れされており、風情がある。特に貸切風呂からの海の景色はよく、お勧めである。もっともガラス越しなので、外気が冷たいと、すぐ曇ってしまい景色としては少し残念かもしれない。



漁港が近いこともあり、夕食には、写真の旬の造り盛り合わせや、金目鯛のしゃぶしゃぶが供される。正月だからと、少しグレードアップして、活鮑の焼き物と伊勢エビの刺身を頼んだ。鮑の焼き物は、やわらかく、磯の香りが強くたいへん美味しい。また、勅書に出された鯵の干物は、ふっくらとして、干物の本場だということを思い出させる。


実は、この宿を訪ねるのは、40数年ぶりである。まだ子供のころ、父に連れられて、この宿へ来た記憶がある。そのころのことはあまりよく覚えていないけれども、温泉などには興味はなく、海水浴へ連れて行ってもらいはしゃいでいたような気がする。昭和の記憶の上に、40年以上も経って、令和の記憶が積み重ねられたわけである。遅い時間に宿を出て、海岸沿いに伊豆半島を南へ向かったのである。