レポピ - Piano Lesson Report

埼玉県上尾市&桶川市にある「たかすぎ音楽教室」(ピアノ・声楽・ソルフェージュ・楽典)のレッスン風景をつづります。

エリーゼのために

2022年12月14日 | レッスン
大人のKSさんのピアノレッスンです。

もう10年くらい前になるでしょうか(もっとかな?)。
KSさんがまだ青年まっさかりの頃に、しばらくレッスンをしていました。
いつか自分のお店を持ちたい夢、その店にピアノをおいて弾きたい夢などを語っていました。

それから時が過ぎ、ある日、ピアノを再開したい、と連絡をくれたのです。
SSさんは夢をかなえて自分のお店を開き、立派なお父さんになっていました。

さて今日、聴かせてもらったのは「エリーゼのために」です。
メインのテキストは「ソナチネ」を進めているのですが、おなじような様式の曲がつづくので、変化がほしいと。それなら、誰でも知っている名曲でもおさらいしましょう、ということになりました(ご家族で楽しめる点もよいと思います)。
そこで「エリーゼ」です。

今日は第1部分をさらいました。
まず出だしの有名な「ミ・レ♯・ミ・レ♯…」です。
ここは左手の伴奏がありません。
旋律がむきだしで演奏されます。
こういう箇所は、オーケストラのなかのソロ演奏、と考えます。

伴奏が止み、たったひとりで歌うパートです。
聴き手にとっては、とても印象ぶかくなります。

「エリーゼ」のソロ・パートでは、ペダルを使わないようにしましょう。
せっかくですから1音1音、よく聴いてもらいます。
「ミ・レ♯・ミ・レ♯」と繰りかえすたびに、すこしずつクレッシェンドします。
フレーズのまんなか、あるいはそれよりもすこしあとの部分にクレッシェンドの重心をおき、フレーズの最後に
向かってディミヌエンドをかけて弱めます。
フレーズのおしまいは弱く。

すると左手の伴奏があらわれて、充実した和声のアルペジオがソロに応えてくれます。
ここは繊細なソロ部分と対比が強く出るように、ペダルを使って厚みをもたせましょう。

ソロはペダルなし、オケ付はペダルを活かして。

右手の「シ・ド・レ・ミ…」からはじまるパートは、一瞬ハ長調に転調しています。
曇り空からちょっと太陽の光が射しこむ瞬間、といった感じでしょうか。
気分がよいので、ここは強めになります。
じきに短調にもどっていきますので、冒頭の気分に戻るようにディミヌエンドしていきます。

「ミ」の音が連続して鳴ります。
僕はよくこの箇所で、生徒さんに、「ミ」の霧(薄い幕でもよい)がかかる、と説明しています。
舞台で演じているエリーゼの前にうすい霧(ミ)がかかってぼんやりとなる、あるいは向こう側が透けて見える薄い幕(ミ)が下りてくる、というイメージです。
ぶっきらぼうな「ミ」の連打にならないように。イメージが大切です。

「ミ」の霧がかかると、ふたたびエリーゼが語りはじめます。
この箇所での「ミ・レ♯・ミ・レ♯…」は冒頭とは異なり、右手だけで弾くのではなく、わざと右手と左手で交互に「ミ・レ♯」を弾くように指示されています。
なぜでしょう?

ここには「ミ」の霧が次第に晴れてゆく、あるいは「ミ」の幕が徐々に上がって視界が晴れてゆく、そうした状況を想像してみるとよいと思います。
徐々に視界が変化してゆく場面なので、わざと念入りに・わざとたどたどしく、両手で「ミ・レ♯」を弾きわけて丁寧に演奏するよう、ベートーヴェンは指示しているのです。
右手だけで弾いたら(当然そうもできますが)、たんなる音符で書かれたトリルのようなものになってしまうでしょう。

以上は僕のイメージですが、弾き手によって考えかたが違うのは当然です。
どんな場面なのか、想像しながらさらってください。

レッスン日 2022年12月6日 14:50(こうき)


コメントを投稿