NOW現状打破!写真28 内藤基裕ブログ

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歩道橋の上から撮影した時の気持ち

2006年05月17日 01時25分02秒 | Weblog
 内原さんのブログから

 梶井基次郎の「檸檬」を読みたくなり読みました。

 その中の「路上」より





 高い方の見晴らしへ出た。それからが傾斜である。

 自分は少し危ないぞと思った。

 傾斜についている路はもう一層軟かであった。

 然し自分は引き返そうとも、立留って考えようともしなかった。

 危ぶみながら下りてゆく。

 一と足下りかけた瞬間から、既に、自分は片手に泥がついてしまった。

 然しまだ本気にはなってなかった。

 起き上がろうとすると、力を入れた足がまたずるずると滑って行った。

 今度は片肘をつき、尻餅をつき、背中までも地面につけて、

 やっとその姿勢で身体は止まった。

 止まった所はもう一つの傾斜へ続く、ちょっと階段の踊り場のような

 場所になった所であった。

 自分は鞄を持った片手を、鞄のまま泥について恐る恐る立ち上がった。

 何時の間にか本気になっていた。

 誰かが何処かでみてやしないかと、

 自分は眼の下の人家の方を見た。

 それらの人家から見れば、自分は高みの舞台で

 一人滑稽な芸当を一生懸命やっているように見えるにちがいなかった。

 誰も見ていなかった。

 変な気持ちであった。