プチ早期退職者の資産運用+αブログ

個別銘柄:ニチイ学館

 5月8日に経営陣による買収(MBO、マネイジメント・バイアウト)の発表があり、週明けに持ち株を売却して長年手掛けてきたニチイ学館への投資は終了した。買い始めた時から今回の売却までの話を書く。
 売却後、MBO成立までの情報も適宜追記した。


 ニチイ学館の株価の長期チャート (出所:株探)



安定的な医療事務と介護の将来性

 ニチイ学館は2005年9月に3000円割れ(2009年に2分割)後にもみ合っていたところで2回に分けて100株ずつ買った。比較的安定的な医療事務受託事業と介護事業の将来性に期待した。それらにかかわる教育事業もあった。しかし、その後の長期低迷につかまった。

 介護事業は施設の先行投資費用がかかるし、人件費もかさむ。さらに、楽な仕事でもないし、人同士が係るのでトラブルも起きやすい。介護制度/報酬の制度の影響も受ける。介護事業の社会的必要性は高いが、大きな利益を生むようなものでもないし、それを追及すべきものでもない。医療事務受託事業も同様に利益拡大はあまり期待できない。そういう意味では、元々大きな利益成長は期待しにくい事業構造ではあった。


ニチイ学館の事業と業績の推移

 過去の四季報等をざっと見ながら事業の状況まとめると、次のような感じだ(正確でないかもしれない)。

 2007年にコムスンの介護事業の買収をしたりして、規模は拡大したが、利益の寄与よりものれん償却負担の方が大きかった。2009年に保育事業も始めたが、先行投資負担が大きく、利益貢献は2018年からだった。

 2011年には英会話教室を買収して教育事業の拡大を進めたが、これも赤字が続いて業績の足を引っ張り続け、最後には事業を大幅に縮小した。2014年には中国で買収もしながら介護事業を拡大したが赤字が続いて黒字化していない。水泳教室事業に出資していたこともあったが、売却した。

 日本国内の医療事務受託や介護はまずまずだし、保育もなんとか黒字化したが、それらだけでは事業(利益)拡大しづらい。それで、英会話や中国に手を出したがうまくいかず、逆に業績が悪化していたという感じだ。


株主優待

 ニチイ学館では、長きにわたり株主優待品をもらった。色々な品物の他、自社で行っている講座の割引とかもある。しかし、個人的にはあまり選べるものはなく、以前はヤクルトのボディーシャンプーにしていた。

 それがなくなってからは、オリジナルティシュにしていた。柔らかくて感触のよいティシュだった。12箱入りのダンボールで届くが、1箱の中身の量は少なくてすぐになくなった。

 何年か前に一度、ウイルス対策マスクをもらったことがある。セスという会社の商品で、3枚入り、10セットで1箱だった。この優待品は、その回しかなかったと思う。いざという時のために保存したままだったので、マスク不足騒ぎが起きた後で改めて中身を確認した。


ニチイ学館株の売買

 上述のような業績推移で、2005年9月に買って以降は株価の低迷期も長かったので、途中、節税で一旦売って売却損を計上し、買戻し、買い増ししたりした。一時は1,000円以下の平均買いコストで700株保有していたが、あまり儲かりそうもないので、他の株用の資金捻出のために株価が戻すのに合わせて、順次売却した。

 特に2019年は、英会話や中国での赤字縮小による利益回復で株価もだいぶ回復してきたので、8月初旬に一旦売り切ってしまった。最後の100株は、1,695円で売ってしまったが、一時は2,000円近くまで上げていた。

 この時点では、結局、銘柄累計で税引き後10万円強の利益に過ぎず、資金効率は極めて悪かった。最初の投資額の60万円弱を元本とみなすと、利益率は17%、14年間なので年率1.2%ほどの低さになってしまう。配当や優待品はもらったけど。

 その後、コロナショックで下げてきた今年3月、株主優待もあったので1,000円割れで100株だけ買い戻し。これで恩株状態になったので、また気長に長期保有しておまけの株主優待を楽しもうと思っていた。

 ところが、5月8日にMBOの発表(詳しくは後述)があり、5月12日にはMBO価格の1,500円を超える水準で株価が推移していたので、売却した。今回の分は、税抜きで約60%、年率換算だと400%超の利益率となった。まぁ、ラッキーだったと言えよう。


MBOの発表

 5月8日の夕方、まず日経の報道があった。

 米国のベインキャピタルが出てきて創業家によるMBOだと、すかいらーくの場合と同じパターンだ。ベインキャピタルは、すかいらーく再上場までで、出資額の何倍もの利益を得たと言われている。今回も、どういう中身かは分からないが、大きな利益を得られる目算があるのだろう。創業家がカモられたとしても自業自得だが、従業員や高齢者が搾取され、日本の介護制度等を食いものにするようなことはないように願いたい。また、創業家がカモられた場合でも、日本で蓄積してきた富が海外に流出してしまうのは同だが。


 その後、5月8日の夜にはニチイ学館から正式なIRが出た。

 MBOする理由やMBO価格(1,500円)の妥当性等、結構、長々と書いてあり、まじめに全部読む気がしなかった。公開買付代理人は野村証券で、5月11日~6月22日の買付期間で、決済は6月29日だというのも書いてあった。株主優待も廃止だ。MBOに応募する手続きも面倒なので、MBO価格近くで売却する株主も多いだろうと思った。


MBO発表後の思惑と株価動向

 MBO表前の株価(5月8日終値)は1,155円だから、MBO価格は30%弱のプレミアムが付いていることになる。コロナショックもあって株価がだいぶ下がっていたので1,500円は悪くはない。しかし、昨年は2,000円近くまで上がったこともあったので、喜べない株主も結構いるだろう

 ニチイ学館の大株主には、旧村上ファンド系のエフィッシモ・キャピタル・マネージメントがいる。MBOの本当の理由はこれかもしれない。エフィッシモが出てきている以上、それなりの経営改善余地がはっきりしているということなのだろう。確認してないが、エフィッシモは経営陣に対して何らかの改善提案をしてきたはずだ

 4月27日の大量保有報告(変更報告)では、4月21日時点でエフィッシモは11.4%保有(直近の四季報だと8.6%)だった。5月12日以降ずっと株価が1,500円を上回って推移しているのは、それを知っている投資家の思惑かもしれないし、実際にエフィッシモ、ないし関係会社が追加で集めているのかもしれない。5%以上保有者に義務付けられている大量保有報告書は、5営業日以内の提出期限があるので、5月11日に動きがあれば5月15日には提出されているはずだった。5月15日の夜にディスクロージャーサイトのEDINETで確認した時点では、エフィッシモ分は新たに出ていなかった

 ニチイ学館は、敵対的買収騒動になったユニゾHDのように実質PBRが低い訳ではない。そのため、TOB合戦になるような事態は考えにくいと思ったので、私はさっさと売却してしまった。しかし、エフィッシモの動き等は気になるので、しばらくウォッチはしておくつもりだ。


【2020.6.11追記】

 相変わらずMBO価格を上回った株価が継続しているが、エフィッシモに係る大量保有報告(変更報告)はないようだ。水面下(5%未満の保有)での動きがあるのかもしれないが。

 今回のMBOは創業者の急死に伴う相続税対策だという見方があり、記事になっている。



【2020.6.22追記】

 備忘録として、情報を追記しておこう。

 6月16日に香港の投資会社リム・アドバイザーズが質問状を公開し、MBOの期間延長や公開討論を呼び掛けていることが明らかになった。また、合理的な価格は2,400円だと主張した。



 新たな動きが見えない中、6月22日の期限を前に東洋経済の記事が出た。


 株価はずっとMBO価格を上回って推移していたので、私同様、MBOに応募してもよいと考えた人は市場で売却してしまっただろう。したがって、MBOに正式に応募した人はかなり少ないのではないかと思っていた、そうなると、MBO公表後に市場で誰かが買い集めていたかが気になるところだ。

 6月22日になって、MBO価格は1,500円のままで、期限を7月9日まで延長するというニュースリリースがあった。「市場株価が公開買付価格を上回って推移していることを踏まえ、対象者の株主に判断機会を提供するため」と書いてあるが、理由になってない。水面下の動きが気になるところである。

株式会社BCJ-44 による株式会社ニチイ学館(証券コード:9792)の株券等に対する公開買付けの買付条件等の変更に関するお知らせhttps://www.nichiigakkan.co.jp/topics/assets/b59c701f99deeccf3f85a6214e6365e42b5ec1a1.pdf

 この発表を受け、午前中に1,700円まで上げていた株価は、前営業日終値の1,627円近辺まで下げている。まだしばらく楽しめそうだ。あくまで興味本位だけど。


【2020.8.1追記】

 前回追記の後、MBO価格は1,500円のままで、期限を8月3日まで延長するというニュースリリースがあった。しかし、成立見込みがなかったようで、ついにMBO価格は1,670円に上げて、期限を8月17日まで延長するというニュースリリースが7月31日に出された。

 上げ方がせこいが、今回は設立しそうだ。変更後の内容の細かなところを読むと、エフィッシモは今回のMBO成立を条件として買収会社BCJ-44の親会社BCJ-43に出資できることになっていて、既にMBOに応じる確約書を差しは入れている。要は+170円にして期限を延ばして形を整えつつ、一般の株主にはそれでがまんしてもらい、エフィッシモだけはMBO側にも回らせるということで手を打ったということだ(綿密に読み込んでいないので、間違っていたら後日訂正する)。

 なんかずるい感じもするが、当然弁護士等も関与していて細かなところの合法性はOKという判断なのだろう。こういうところは、資本主義社会としては仕方ないところだ。

 MBO価格引き上げに懸けてMBO発表後に高く買った一部の株主には腹立たしい結果だろうが、リスクも承知の上だっただろう。私自身は、たったの100株だけと1,500円超でさっさと売ったので、1割ほど儲け損ねたことになった。しかし、無駄にやきもきせずに傍観していられたので、よしとしよう。


【2020.8.18追記】

 結末を記録として残しておこう。本日、午前中にMBOは成立したとのニュースリリースがあった。

2020年08月18日 株式会社BCJ-44 による当社株券等に対する公開買付けの結果並びに親会社、主要株主である筆頭株主及び主要株主の異動に関するお知らせhttps://www.nichiigakkan.co.jp/topics/assets/7a8cf658a88193b24dffeddf8bbcf75ba85d2175.pdf


 昨日、8月17日に突然、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアが、ニチイ学館の創業家に対して2,000円で公開買付けを提案しているとの日経ビジネスのスクープ記事が掲載された。
 ちょっと思惑を呼んでMBO成立のニュースまで少し値を上げたりしていたが、ニチイ学館自身は提案を受けていないと8月17日に否定していた。
 突然でいかにも怪しげな感じだった。このニュースを利用して誰かが売り抜けたりしたのか、今後もう一波乱あるのかは分からない。

日経ビジネスのスクープ記事

ニチイ学館自身は否定




コメント一覧

バカ田さん
ニチイ学館のMBOは始まる前に意図的な業績悪化がありました
2019年9月〜2020年3月まで
たった半年で訪問402拠点を分割・新設を完了
1003→1405拠点体制
最終的には業績悪化のやりすぎて
フィリピン人206名解雇、48名行方不明者が出ました
刑事事件です。
既にリム・アドバイザーズがニチイ学館を金融商品取引法の違反で民事裁判をしています。
意図的な業績悪化ですから
ネット小説を書きました
興味があったらどうぞ?
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ニチイ学館MBOの裏側
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