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#20 「同一労働同一賃金」で非正規社員の給料アップ!?

2020-03-12 19:46:30 | 日記

#20 「同一労働同一賃金」で非正規社員の給料アップ!?

2020年4月から「同一労働同一賃金」が導入されます(中小企業は2021年4月から)。これは、パートタイム労働者、派遣労働者、有期雇用労働者として働く方の賃金に関わる新しい制度です。制度の概要や導入の背景、そして私たちの働き方や賃金にもたらす影響について見ていきましょう。
「同一労働同一賃金」で非正規社員の給料アップ!?
 

「同一労働同一賃金」で賃金や待遇はどう変わる?

「同一労働同一賃金」とは、2018年7月に公布された働き方改革に基づく「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称「パートタイム・有期雇用労働法」)の改正により、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保 」の1つとしてはじまるものです。

制度導入の目的について、厚生労働省では次のように定めています。
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

出典:厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ



つまり、同じ職場で同じ仕事をしている従業員であれば、正規・非正規雇用に関係なく同額の賃金が支払われるということ。

※派遣社員は、派遣先労働者との均等・均衡方式の場合


あわせて休暇の取得や技能の習得など、福利厚生や教育訓練などの内容も同一にすることで、雇用形態の種類による待遇差をなくすことが目的です。

制度の対象となるのは、「有期雇用」「パートタイム」「派遣」の3つの雇用形態で働く人たちです。また、賃金や手当、待遇については主に以下のようなものが挙げられています。

1.基本給
2.賞与(ボーナス)
3.各種手当
役職手当/精皆勤手当/時間外労働手当/通勤手当・出張旅費/食事手当/単身赴任手当など
4.福利厚生・教育訓練
食堂、休憩室、更衣室などの利用/慶弔休暇/健康診断に伴う勤務免除・有給保証/病気休職/職務に必要な技能習得のための教育訓練など

出典:厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン

正規雇用者と非正規雇用者の不合理な待遇差の解消へ

今回の制度導入の背景の1つとして、非正規雇用者の増加が挙げられます。
総務省「労働力調査」によると、2019年の役員を除く雇用者の総数は、5,660万人で、そのうち非正規雇用者の数は2,165万人でした。非正規雇用者は前年より45万人増え、全体の約38%に。
2009年時点と比較すると、正規雇用者が99万人の増加に留まる一方、非正規雇用者は438万人増となっています。
※総務省統計局「労働力調査」を参照し、編集部作成。
正規雇用者と非正規雇用者との間で同じ仕事をしているにも関わらず、賃金や福利厚生などの待遇に格差があることへの疑問の声が挙がるようになり、社会的な問題となってきました。

そこで、「パートタイム労働法」が改正され、「同一労働同一賃金」が導入されることになりました。

待遇が改善されて非正規雇用者の賃金が上がれば、個人消費が増加して経済が活性化することも期待できます。さらに、経済的な理由であきらめていた結婚・出産への意欲が高まることで少子化対策への効果も期待されています。
 

「同一労働同一賃金」のメリット・デメリット

今回の制度導入について、働く人たちはどのように感じているのでしょう。
エン・ジャパン『エン派遣』の調査※1では、「同一労働同一賃金」に関して「良いと思う」と答えたのは、正社員54%、契約社員79%、アルバイト・パート66%、派遣社員74%。肯定的に捉えている人が多いことがうかがえます。

では、労働者や企業にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。労働者や経営者への調査・アンケート結果とともにご紹介します。

出典:エンジャパン株式会社『エン派遣』調べ「同一労働賃金(2018年10月調査)について



【労働者のメリット】
①賃金・手当など待遇の改善
相対的に待遇が改善されることにより、非正規社員にとっては賃金アップや、これまでなかった手当ての支給、慶弔休暇など福利厚生の充実が期待できます。

先述の調査によると、非正規社員が同一労働同一賃金の「導入後に期待すること」で最も多かったのが、「給与アップ」(契約社員、アルバイト・パート)、「賞与の支給」(派遣社員)でした。

②仕事への意欲向上
労働者は正規・非正規にかかわらず、すべて同じ基準で評価されることで、仕事への意欲が高まりやすくなります。雇用形態にとらわれることなく能力を発揮できる環境が整うでしょう。

③働き方の柔軟な選択が可能に
どの雇用形態を選んでも同じ待遇が受けられることで、自分自身のライフスタイルに合わせた、柔軟な働き方が選びやすくなります。
たとえば、パートタイムで働きながら将来のスキルにつながる学校に通うなどが、より選択しやすくなるでしょう。

【労働者のデメリット】
①正社員の給与が減るリスク
非正規社員の賃金が上がると、企業全体の人件費を予算内に収めるために、能力以上の賃金をもらっていた正社員の給与が減らされる可能性があります。

②非正規社員の雇用が減るリスク
企業全体の人件費を調整するために、非正規社員の雇用が減らされたり、打ち切られたりする可能性があります。
調査でも「正社員との待遇に差をなくすと雇用契約の難易度がグッとあがるor正社員の待遇が現在よりも下がると思います」(派遣社員)との声がありました。

③非正規社員への評価が厳しくなるリスク
非正規社員も正社員と同じ待遇になるので、同様の仕事が問題なくできているかを見極められる可能性があり、非正規社員の業務遂行能力への評価が厳しくなるかもしれません。

【企業のメリット】
①生産性の向上
非正規社員の仕事への意識が改善して会社への貢献意識が高まり、生産性の向上が期待できます。
「正社員もバイトも同じ時給になった事でバイトの意欲が上がったのを目の当たりにしたのでいいと思う」(派遣社員)との声もありました。

②優秀な人材の確保
子育てや親の介護などで一時的に非正規社員として働いている、優秀な人材の流出を防げるようになるでしょう。同時に、非正規社員として働く外部の優秀な人材を確保できるチャンスにもなるでしょう。

【企業のデメリット】
①人件費がアップするリスク
雇用形態に関係なく、公平な評価で報酬を決めることになれば、非正規社員の賃金を上げることにつながり人件費がアップする可能性があります。

帝国データバンクが行った「働き方改革における企業の意識調査(2019年12月) 」によると、働き方改革に取り組んでいる企業からは、「同一賃金同一労働で人件費は必ず上昇し、赤字になる可能性があるため、人員を削減するしかない」 といった声もあったそうです。

②説明会の開催や調査などの業務が発生
報酬や評価方法などについて、雇用者から要望があれば説明が必要になります。そのための説明会の開催や調査など新たな業務が発生するでしょう。

以上、メリットとデメリットをご紹介してきましたが、今回の制度は、非正規社員の待遇改善が主になるため、正社員にとっては、デメリットがクローズアップされやすいという側面があります。賃金が下がったり、手当や福利厚生が縮小されたりするという報道もありました。

ただし、厚生労働省の同一労働同一賃金ガイドラインには、「正社員の待遇を引き下げる場合は、合理的な理由や労使の合意が必要になる」との記載があります。
制度導入後すぐ、雇用側の一方的な待遇の引き下げがあることは考えにくいですが、今後の動きを注視しておく必要はあります。

私の暮らしはどう変わる?

 

今後、「同一労働同一賃金」の導入により、正規・非正規といった雇用形態の違いによる待遇差は禁止されていきます。

また、非正規社員の年間所得については、給与アップや賞与、交通費の支給などで、増加する可能性が高まります。これまで、節税のために扶養内や配偶者控除を意識して働いていた人は、その適用範囲について再確認する必要があります。
世帯収入アップのために、扶養を外れて働く選択肢も視野に入れ、将来にむけたライフプラン・マネープランを立ててみてはいかがでしょう。

正社員で働く人やその家族であれば、今後の賃金の変化や賃金体系の見直しについて、アンテナを張っておきたいところです。
所得の変化によっては、住宅ローンや生命保険料などの固定費や、子どもの教育プランなどを見直し、今後のマネープランや資産形成の方法を検討していくようにしましょう。

配偶者控除について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。

【関連記事】2018年分から変わった「配偶者控除」、あなたの暮らしへの影響は?

※ 2020年3月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

高橋 浩史(たかはし・ひろし)
ファイナンシャルプランナー。 FPライフレックス 代表。 書籍編集者を経て2011年にFP事務所を開業。マイホーム実現のため、資金計画・家計改善の面から応援する「住まいの相談FP/家計の赤字V字回復アドバイザー」として活動中。セミナー講師、書籍・雑誌、webでの執筆業務も行う。「災害に備えるライフプランニング」(近代セールス社)、「老後のお金安心ガイド」(イースト・プレス)他。趣味はバイクツーリング、ギター、落語。

忘却される3月11日からあとのこと

2020-03-12 07:39:43 | 日記

忘却される3月11日からあとのこと

新型コロナウイルス問題は、2011年3月11日からの福島に学ぶべきだ。教訓はここに詰まっていたはずなのに、政治もメディアもあまりにも忘れすぎている。

この間、取材先からいただいた、いくつかのメッセージでそう確信した。リスクは原発事故そのもの、あるいは新型コロナウイルスそのものだけではない。社会がどう反応するか、が問題の大きさを決める。

 

経済がうまく回らなければ、ウイルスだけでなく人の命と直結する問題が起きる。

福島から届いた声

福島から届いた2人のメッセージを紹介したい。福島県飯舘村に住む菅野クニさん、元東京電力社員で2011年当時福島第二原発に勤務していた吉川彰宏さんだ。2人はいずれも拙著『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)に登場する、私の取材先である。

ことの発端は私がFacebookに「このままだと新型コロナウイルス問題で、経済に深刻な打撃がやってくる。経済の悪化は人の命の問題」であるという趣旨の投稿を書いたことだ。

時事通信社805円27銭安の2万1142円96銭と急落した日経平均株価などを示す電光ボード=2月28日午後、東京 

それを読んだ菅野さんが真っ先にこんなコメントを書いてくれた。

《9年前の東電福島第一原発事故で、自死の方が何人もおります。避難指示が出ない地域で、美味しい野菜を作っていた農家さん、酪農家さん…。

私の村は1か月遅れの避難指示がありましたが、「いずれ避難していただきます」と予告ニュースがあったその明け方に、同じ行政区の90歳を超えた元気な男性が…福島県は地震津波による直接死より震災関連死が多いのです。この意味をぜひ想像してください。》

「人殺し」「子供に食べさせたくない」と言われて。

福島県によると、福島県の震災、津波による死者数(直接死)は1605人、震災関連死者数は2304人(20年3月5日現在)。関連死には自死も含まれる。

ここで、自死の意味を考えてみる。

ある人にとって生きがいと仕事は直結している。人は誰かの役に立っていると感じることで、生きることができ、働くことは「役に立っている」という実感につながるものだ。

想像してみてほしい。放射性物質の汚染状況からみて、科学的には問題ないことがわかっていても、農家が育てた生産物が「いらない」「人殺し」「子供たちのために食べさせたくない」と言われたどうだろうか。

原発事故による避難が続く中で、事業の再開が見通せなくなった酪農家は何を思うだろうか。

結局、問題は科学にとどまらない。科学的なリスク評価とは別の次元も含めて、社会は動いている。

経済活動が停滞し、仕事がなくなれば、人は自ら死を選ぶことも起こりうる。そして、生活環境の変化は思いもよらぬストレスを与え、心身に負荷をかけるのだ。

時事通信社東京電力福島第1原発の敷地内に並ぶ処理水を保管するタンク=2020年1月17日

 

本当のリスクはどこにある?

吉川さんは原発事故と新型コロナウイルス問題を踏まえて「人は中々命を絶てないけれど、追い込まれてしまった時に場合によっては簡単に絶ってしまうことがあります。お金の重さは個人個人。そして政治はより一人でも救う事に本質があります」という。

かつて、私にこんな話をしてくれたことがある。

《原発のリスクというのは健康影響だけではありません。問題を健康影響に限定してしまうのは、事故の本当の被害を見えにくくしている思います。

本当の被害というのは生活そのもの当たり前の暮らしです。2011年の夏ごろでした。社員や協力企業の方からこんな話を聞く機会が増えました。

「東電社員だからって理由で彼女とわかれることになりました」「放射能がうつるって。子供ができたときに不安だからって」「結婚はやめようといわれました」

「親父が原発で働いていると、娘が結婚もできない」といって、去っていく協力企業の方もいました。みんな、ごめんなさい、といって去っていくのです。なにも謝ってやめていかなくてもいいよ、と思っていましたが、それを口にすることはできません。》

この言葉をそのまま使えば、新型コロナウイルスのリスクというのは人の健康だけではない。人の気持ち、生活に与える影響だ。

ろくなエビデンスも説明されないまま、「自粛してください」と安倍首相が要請すればほぼ全国一斉に休校が始まる。社会全体で「今は自粛」という空気ができあがり、経済は停滞する。

すでに予告された危機

内閣府の発表(2020年3月9日)によると、昨年年10~12月期の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、前期比1.8%減、このペースが1年続くと仮定した年率換算は7.1%減となる。

重要なのは、この数字が、新型コロナウイルスショックが直撃する「前」の数字であるということだ。

大きな原因は消費増税で、この時点で消費も前年比マイナス2.8%、民間企業の設備投資もマイナス4.6%にまで落ち込んでいる。ここにさらにコロナショックが加わる。

東京都内も普段なら観光客で混んでいる銀座のショップも閑散としており、郊外のショッピングモールも空いている。もちろん、場所にもよるだろうが、およそ景気が上向いているとは言えないだろう。

福島から学ぶべきは何か。経済の停滞、産業の先行き不透明性は人の命に直結するということだ。経済を大切に、という話をするとすぐに「子供の命と経済はどちらが大切なのか」という話に問題をすり替える人がいる。

これは問いが間違っている。「どちらが」ではなく、「どちらも大切」なのだ。

2011年3月11日からの教訓は、どのみち経済がうまく回らなければ、科学的なリスクが低かったとしても、人の命に直結する事態になるということ。これである。

(文:石戸諭/ 編集:南 麻理江)