ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

シャロウ・グレイヴ~古典的物語と現代的味付けのミスマッチ

2010-07-23 20:36:16 | 映画(さ行)
1995年・イギリス・Shallow Grave
監督:ダニー・ボイル
(IMDb:7.4 Metacritic:67 Rotten:71)



「シャロウ・グレイヴ」とは「浅い墓穴」という意味だ。
これが物語のキーとなっているのだが、同時に、ダジャレになるが、
この作品は「浅はか」な人間関係を描いた作品であることは興味深い。
ただし、総じて演出が「浅はか」で、どうにも完成されきっていない
印象だけが残った。これはダニー・ボイル監督の近作を先に見ているが
ゆえに仕方ないことではあるが。

恥ずかしささえ感じる冒頭の軽快な音楽に乗せた街と森を突っ走るクレジットから
デビュー作でここまでやっていたのかと妙にうれしくなった。
以降も3人の主人公たちが住む部屋の色使いや
屋根裏部屋に穴を開けたときの光の差し込み方、
森での死体解体シーンでの猟奇的な美しさなど
ダニー・ボイルらしい映像センスは随所に見られた。



問題は物語との兼ね合いにある。
映像の現代性(当時における)に比べて極めて物語が古典的で、
新味が感じられないのだ。ヒッチコックがやりそうな題材だ。
螺旋階段が出てくるので意識はしているのだろう。
物語があまり魅力的に感じられなかった理由は、登場人物の変化が
分かりにくい点にある。
本来であれば、4人目の住民を審査する(このシーンが不気味だ)
までに仲間意識が強かった3人が、大金を手に入れたことによって、
お互いのことを信用できなくなっていく話なのだが、
この大筋が見えにくい。
仲がよく見えて、実はそうではないことが、序盤から見えすぎていることもあるが、
信用できなくなっていく過程が唐突すぎて、そこにサスペンスを感じることが
出来なかった。そのため、ただ派手なだけの映像が垂れ流されているような
印象が強く、物語が記憶に残らない。
古典的なプロットが現代的な味付けのために少しぶれてしまい
薄味になってしまっているように思えた。

ほとんどがマンションの一室(とはいえものすごく広いが)だけで
展開されるため、舞台劇のような雰囲気もあり、
ユアン・マクレガーをはじめとする俳優たちの演技は光っていた。
ケリー・フォックスはもう少し魅力的に撮れたのではないかと思う。

〈70点〉


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