ゴダールよりもデ・パルマが好き(別館)

ホンも書ける映画監督を目指す大学生monteによる映画批評。

レザボア・ドッグス~映画小僧の夢

2010-06-19 18:37:34 | 映画(や・ら・わ行)
1992年・アメリカ・Reservoir Dogs
監督:クエンティン・タランティーノ
(IMDb:8.4 Metacritic:78 Rotten:95)

良くも悪くも後の映画に多大な影響を与えた作品。



映画を志す大学生がもっとも陥りやすい罠がこの映画であることは間違いなく、
丸パクリな作品や明らかに影響を受けた作品が量産されている。
実は僕が今参加している作品もそうで、今回、カメラマンを任されたので、
見直してみることにしたのだ。
逆転の発想で、脚本が似ているからこそ、本家を見て、
できるだけ違う撮り方をしようと考えた。
この映画の恐ろしいところは真似していることを自覚させないところにあり、
今回の監督も全く気づいていないからタチが悪い。



何度も見ている作品だが、この作品には映画小僧をひきつける何かがやはりある。
やはりこれはタランティーノ自身が根っからの映画オタクであることに由来しているのだろうか。
ストーリーは見終わった後にほとんど思い出せないほど、皆無で、
時間の操作によって、映画らしく見せてはいるが基本的に山場らしきものは見当たらない。
映画の冒頭、有名な「ライク・ア・バージン」についての談義からチップを出さないイザコザへと
続く長すぎる会話シーンを皮切りにこれでもかと登場人物は話し続ける。
この作品のストーリーは色を名前として呼び合うそれぞれのキャラクターを
誇張し、面白くするための会話だけで成り立っているのだ。
これは真似したくなる。

そして、スタイリッシュとしか言いようがないカメラワーク。
倉庫のシーンでは舞台的なロングショットと手持ちのクロースアップが的確に使い分けられ、
冒頭の会話シーンではカメラが常にテーブルの周りを回転する。
これは真似したくなる。

必ずラジオから流れてくる音楽の使い方も面白い。
オープニング・クレジットは何度真似されたのかわからないほどのかっこよさ。
Mr.ブロンドによる耳切りシーンでの長廻しと音楽の使い方。
これは真似したくなる。

とにかく真似したくなる要素が盛りだくさんだ。



しかし、これは同時に危険でもある。
この作品をはじめ、タランティーノの後の作品が成功している大きな要因が
俳優の素晴らしい演技と正確なキャスティングにあるからだ。
ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、スティーヴ・ブシェミら
一流の俳優がベストの演技を見せてこそ、タランティーノ演出は成り立つのである。
自主制作の現場で同じ状況を生み出すことは不可能に近い。
だが、映画小僧は表面的な技術ばかりを追ってしまい、寒々しい結果を招いてしまうのだ。
もちろん、この考えには自戒の念もこもっている。

また、この映画を完璧にニュアンスまで理解するには、
アメリカ人に生まれ変わるか、英語を完璧にマスターするしかないところも辛い。

監督が登場人物たちに黒のスーツを着せようと言い出さないことを願うばかりだ。

〈75点〉


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