救急車

Ｗ女史から内線があった。
「商売相手の体調が悪くなったので付いていてほしい」との事。

現場に行くと、若い女の子がベッドに横たわっていた。
ベッドの脇には汚物入れが用意されていて
もう既に吐いた跡があった。

声をかけても、辛そうでなかなか答える事ができない。
ちょっと離れたところで様子をみる。
何度となく寝返りをうっていたが、かなりしんどいようだ。
ときどき、自分の体調に不安を感じるのか
過呼吸ぎみになってしまう。
そのときは、手を握り「大丈夫だよ」と声をかける。

以前、過呼吸の商売相手を対応した。
スーパーのビニール袋の中で呼吸をさせるという応急処置をした後
救急車で運んだ。
そのとき、「素人判断で応急処置はするな」と注意を受けたことがある。
別に自分になにができるわけでもないが
この経験以来ますます何をしたらよいのかわからない。
自分には励ますことぐらいしかできない・・・・。


一向に体調が良くなる兆しがないので
結局、救急車を呼ぶ事になった。

Ｗ女史から付き添いを頼まれ、初めて救急車に乗る。
救急車 初体験。
こんな事言ってはいけないのだろうけど、
１度乗ってみたいと思っていた。
乗り心地は・・・あまりいいものではない。

商売相手ではあるが、他人事。
なのになぜか感情が高ぶるのを感じた。
しかし、私が取り乱すわけにはいかない。
感情を抑え、冷静に対応する。
他人事でこんなになってしまうのなら
身内事だったらどんな感じになってしまうのだろう・・・？

病院についても、コレと言ってやることはない。
それでも身内の方が来るまでは付き添っていなくてはならない。
最初のうちは苦しそうにしていたが
身内の方が着くころには、薬が効いてきたのか眠ってしまった。

病院の外に出ると
夏の日差しがやけに眩しく暑く感じた。


今日の仕事は終わった・・・・。


そう思ったが、現実は甘くない。