ハロウィンが過ぎればクリスマスでそれが過ぎればお正月でその次はバレンタインでホワイトデーが来る。なんで冬は恋人のイベントが多いんだろう。ヒリヒリする。寒さと地震の揺れが本当に途方に暮れさせる。最近お酒の飲み方が荒れている。頭痛がやまないから薬を飲みながら酒を飲んでしまう。以前は酔わないようにジントニックならそれだけをひたすら飲んで、というやり方だったが最近何でも飲む。昨日は友人のボトルにまで手を出しあまり飲めないジンビームまでがぶ飲みする。そして家で吐く。寒さで冷たくなりながらいつまでも吐く。いつの間にかまた誰かにメールなりTELなりしていて最低だと朝になると思う。ゆきぃ、ゆきぃ、とあの人の呼ぶ声が酔った頭に聴こえる。耳を塞いでも残る声。名前を呼んで、そう願ったけど、ねえ、あなたあたしの本名ゆきぃ、じゃないのよ。雪が好きだからゆきぃ、なだけ。もはや漢字であたしの名前書けないでしょ?どのみち書かれることはないんだけど。酷く二日酔いになって酷く心細くなる。出ていけるのか不安になるからまた飲んでしまう。最低の酔っぱらいだ。冬は嫌だなと思う。あんなに好きで毎年行っていたスノボにも今年は行けないのだろう。皮肉にもスキー場は近くなったのに。酒は飲んでも飲まれるな、ええ、飲まれています。力いっぱい。今夜もあの人の声に耳を塞ぐのだろうか?本名ではありませんが。
また地震だ。しかも雪まで降ってきた。例年より早い雪。ささくれだった神経が逆撫でされる。ファンヒーターの匂いが余計苛立たせる。一人暮らしの頃あたしの部屋はエアコンしかないわりと冷えた部屋だった。初めてあの人の部屋に行ったときファンヒーターがあって暖かさに驚いた。この匂いはあの人の部屋のものだ、と思うとまた情けなく涙が出てくる。何だってこう地震が多いのだ。あたしを追い詰めるのだ。勿論、つらい気持ちになるのはあたしだけじゃない。分かってはいる。でも人の数だけ悲しみも多重なのだ。小さい子供がただをこねるように、夜明け前の暗い部屋で何度も床や壁を殴り付ける。母親にうるさいと叱られる。手が腫れてああ、これも自己満足なのだとまた苛立つ。なんで上手く色々消化できないんだろう?仕事でペンを持つと手が痛んで、また左手にすればよかったと苛立つ。寒くて肌も乾燥している。ボディケアを怠っているせいで身体中かさついて痒い。爪なんてほとんどないのにかきむしった肌にみみず腫が浮かび、それかかさぶたになってざらざらする。タトゥーの上までみみず腫が出来て、どうしてだろう?腕を切るより、ファブリーズを呑むよりタトゥーに傷がついたら自分を粗末にしている気持ちになる。傷が消えずにタトゥーに残ったらどうしようと考える。他はどうでも良いのに。多分タトゥーがあたしから唯一、一生離れない一緒に年をとってくれる相棒だからだろう。母親の嫌う沢山のタトゥー。でもそれがあって生きてこれたあたし。いずれにしても甘えだな、とがっかりする。早くここから出ていきたい。あたしの部屋ではファンヒーターは使わない。決して。皮膚をなでる、ざらりとする。まるであたしの心そのものみたいだ。
これを詠んだのは与謝野晶子だったっけ?日本語はやはり奥深い。それに自他共に認めるブラコンのあたしは弟がいなくなったら、と考えるときゅーっと切なくなる。今朝目覚めるとTシャツ一枚で床に倒れるように眠っていた。伸びた腕が冷たかった。回りに酒の缶と眠剤が散らばっていていつ眠ったのか全く記憶がなく、携帯を見たら知人に着信と返した覚えのないラインが残っていて背筋も冷たくなった。泣き腫らしたまぶたがまた醜い。マスク生活何日目だ?ひもを引っ掻けてる耳の後ろが痛い。色んなことがあたしを攻める。そしてあたしは薄々自分のしょうもない感情に気がつき始めている。あの人に会いたいのは本当だ。でも流す涙は誰のため?純粋に彼への愛ではないでしょう。残された自分が可哀想で泣くんでしょう?君死にたまうまうことなかれ、それはあたしにとって真実ではないのだ。多分。一人になったのが寂しいだけなのだ。自己愛の涙は醜い。毎日泣くのは自分のためなのだ。気がついてしまうと、本当に背筋も凍る。今の現状全て言い訳にしてる。あの人を釈放出来たときあたしは変われるのかもしれない。記憶がなくなるのも甘えみたい。なんだかであたしは救いを求めている。弱いなあ。また視界が涙で歪む。ゆらゆら揺れる。世界が揺れる。まるであたしの地面だけ毎日地震みたいだ。
酷く長い1日だった。テレビが皆地震をやっていてあたしは神経をすり減らした。こんなときに仕事などしたくないが、今日が来てまた悲しい気持ちになっているのはあたしだけではなく沢山いるのだと自分を奮い立たせたがどうにもこうにも涙が止まらなくて参った。マスクをかけたが、目が潤んではたからみたら可笑しな人だったろう。働きながら泣いている。例えば海外で精神科がもっとポピュラーならあたしは仕事を休めるのだろうか?怠け者、のレッテルではなく心が疲れているのだと認めてもらえるのだろうか?指先の感覚がなくなるまで爪をはいでもみっともない位髪を抜いても今のあたしは怠け者としか見えないようだ。本当に頭痛が酷くて倒れそうで何度も仕事を早退したいと考えたが、母親の逆鱗に触れたくはないので我慢した。こんなん生産性などない。涙目の店員から誰が商品を買うだろう。分かってはいる。でも涙が止められなかった。仕事帰り祖母のお墓に行ってきた。ボタボタ泣きながらばーちゃん、ごめんなさい、と何度も謝った。ちゃんとできなくてごめんなさい、せっかく親孝行しようと思ったのにまた、出ていきます、ごめんなさい。ばーちゃんっ子だったあたしは祖母に謝り続けると次第に色んな人に謝った。優しくしてくれた人、期待に応えずごめんなさい、大好きだった人、あたしが生き残ってごめんなさい。ごめんなさいを言いすぎて白々しくなるような気がして途中でとぼとぼ帰ってきた。明日も仕事だ。行きたくないな。あの人の部屋にもう一度だけ帰りたい。また、声が聞きたい。強欲だ
今朝また大きな地震があった。福島県は震度5弱だった。薄暗い部屋の中あたしはベッドから動かずにいた。動けなかった。5年前がフラッシュバックして苦しかった。そして不思議なことにぼんやりと寝転がるあたしは5年ぶりにあの人の声を確かに聞いたのだ。ゆきぃ、元気かあ?って。懐かしくて涙が止まらなかった。近くに海が無かったことを恥じた。海があればきっとあたしは飛び込んだだろう。あの人に会いに行くために。声を聞いたら会いたくなった。あたしは強欲だ。名前をよんで、一度だけでも。と願ったじゃないか、それなのに会いたいなんてあたしは足ることを知らない。耳たぶのピアスをなぜながらあたしはいつまでも泣いた。どうやって会社に来たのか?休憩までどうやって働いたのか?気を抜くと泣いてしまう。何ひとつ忘れさせてくれないし、今のあたしをもしあの人か見たら驚くだろう。名前を呼ばれただけで幸せ、と思うのに涙が止まらない。ここに友達がいないせいか真っ先に安否の連絡が来たのが弟と弟の元カノ二人だったのが可笑しかった。一人はアメリカ人、一人はハンガリー人。日本語あまり通じないのに。ぐずぐず泣いてしまうあたしはきっとまた大きな地震が来ても逃げることはない気がする。逃げたいのは地震じゃない、今の現状だ。ひどく疲れて頭が痛い。何も忘れさせてはくれない。やっぱりここを出ていかなくちゃ。