私なりに、納得はできたかな、と思っています。
結局、北沢は奥寺との約束を守った。
美那子のために死にたくなかった。「クライマーは真剣に人を愛したら山と別れるしかない」。だから、K2登攀に成功したら、山と別れるつもりだった。
でも、その前に、奥寺との約束があった。
「もし、俺が宙吊りになったら、ザイルを切れるか。」「切る。」
北沢は、そっちを選んだ。美那子よりも、自分の生よりも。約束を果たすことを選んだ。
それが分かったら、やはり奥寺は美那子と一緒にはいられない。
奥寺は、北沢が好きだった人を愛することにためらいはないのか?(たとえ美那子も奥寺が好きだとしても)と、前から思っていましたが、やはり奥寺にはできない。それを知った以上はなおさら。
北沢母「美那子さんと一緒になりたいの?養っていけるの?山を棄てられるの?」
美那子「山を棄てた奥寺さんは好きじゃない。でも、山には行ってほしくない。矛盾してるのよ」
北沢「クライマーは真剣に人を愛したら山と別れるしかない」
最初、奥寺は言っていた。「俺には山しかない。恋人も要らない」
しかし、初めて愛する人を得て、戸惑う。
山を棄てるか、愛する人との生活を選ぶか。
裁判という過程の中で、揺れ動く思い。
そして、親友の死の真相。
それらを経て、最後には、山を棄てられない孤高のソロクライマー、奥寺が残る。
カタチとしては最初と最後は同じだ。でも、意味は全然違う。
美那子も、カタチとしては同じだが、やはり最初と最後は違う。
最初は、自分の意思に基づいて生きられない、「ただかわいそうな人」であった。
でも、最後は、自分の意思として、ヤシロに戻った。
納得して、自分の人生を受け入れた。納得と非納得の違いだ。
八代社長は、何となくはじめから、事の顛末を理解していたような気がする。
最初に社長が言ったとおりですから。「カラビナの故障だけが原因と言い切れないだろう。」
そして、美那子が帰ってくることも。
このドラマの中では、海千山千の人間だったというか。やり手の社長で、相手を追い詰めはするけれども、逃げ道も与える。人間的に青い奥寺を諭しもする。和解の手を差し伸べる。賠償金は請求しない。
人情もある。美那子が逃げたからといって、美那子の兄を見捨てたりもしない。難しい役どころですけれど、石坂浩二凄いですね。
智之も立派だったと思う、退職願。「僕は途中から頂上を制覇しようとしました。けれど、今回の件で、僕は北沢や奥寺に負けたと思っています。・・・僕の山は低いけど、今度はちゃんと頂上を制覇します。」武田真治も適役だった。人間的に成長する役を演じきったよね。
フリーライターの室井は、登場シーン、5秒くらいですか?もっと何かやるんじゃないかと思ったんですが。
ドラマの構成からすれば・・・
奥寺と美那子の恋愛模様に、それほど時間を割く必要はなかったんじゃないかと思います。
それだったら、もう一度K2に行くという奥寺の決意の経緯とか、K2登攀シーンをもっと見たかったな。ラスト5分くらいでしたよね。あれ?これで終わり?って感じで・・・。
あとね、最後のほうに何か南部さんの一言もほしかったなぁ。
奥寺の父親のようなものだと思うから・・・
最後に、このドラマの主役に玉木宏という役者を抜擢したこと、LIBERAの「彼方の光」が生まれたこと、そして雪の山々の美しさを存分に見せてくれたことは、NHKに感謝したいと思います。特に、K2登攀シーンは、NHKにしかできないことではないかと思います。
これから「氷壁」読みます。実は昨日のうちに買ってたんだけどね。
(しかしこの厚さ・・・京極さんよりはいいけど)
遅読なのでいつになるかは分かりませんが、読み終えたら感想を書きたいと思います。