変人技術士の備忘録(別称:すいりき板改)

技術士の日々の思いつきを列記。
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A history of China 08 , galloping conqueror in field of grass (中国の歴史08 疾駆する草原の征服者)

2019-02-16 19:58:50 | 読書
 図書館で借りて読んだ“中国の歴史08 疾駆する草原の征服者 遼 西夏 金 元”の感想を以下に記す。中国の歴史というと、漢民族の王朝の視点が中心であることが多いように思うが、本書では漢民族以外の遊牧民族を中心として述べられている。この時代であれば、唐や宋という王朝をすべての価値観の基準にして、論評・叙述しがちになるということになる(P.376の主要人文紹介を元に記述)。少し見方を変えて、中国の歴史を見る事に適している本である。遼、西夏、金と続いた後にモンゴル帝国が勃興したということがよく分かる記述になっている。Amazonのレビューにも書いてあったように、キタイ帝国(遼)に関する記述が多く、3章分の180頁記載されている。盛唐(安史の乱)や五代についても詳しく書かれている。西夏と金は5章で書かれているが、26頁と少ない。西夏はどうやら記述が少ないらしい(P.257)。金の前半についても、記録が少ないため、よく分かっていないと書かれている(P.278)。本筋とは関係ないが、黄河が流れている場所が現在と変わっていること(P.284)は、結構な驚きである。大運河といい、大陸の規模の大きさが伺える話である。
 草原の征服者として名高い元(モンゴル帝国)は、第6章で書かれており、88頁となっている。勢力地図を一目見れば分かるように、モンゴル帝国は空前の大帝国になっている(P.328)。モンゴル帝国が、過去の遼、西夏、金のノウハウを受け継いで膨張したという記述は納得がいくものがある(P.288)。それと文天祥を低く評価する記述がある(P.323)。これは、遊牧民族中心の見方を述べるという本書の趣旨をよく表している。国家の要諦がP.342で述べられており興味深い。この記述は、本書でも書いているように、古今東西に当てはまるように思う。国家の要諦は、首都と各拠点をおさえることはもとより、それらをつなぐ交通・運輸・流通の掌握にこそ存在する。元が比較的短期間で中国の支配権を失ったことは、江南を失ったことの影響が大きいと書かれている(P.361)。
 主要人物略伝は、読み物として面白い記述になっている。主要人物略伝に、耶律阿保機の長子の木耶律突欲(やりつトヨク)を挙げているところに、本書の特徴があるように思われる。“残酷すぎる成功法則”に書いてあるようにチンギス・カンの周到な準備と事前調査、および十全に近い準備(P.385)は見習う方がいいように思う。

 目次 数字は頁
 はじめに 世界史のなかの世界史 13
 第一章 巨大な変容への序章 22 (安史の乱から五代)
 第二章 キタイ帝国への道 75
 第三章 南北共存の時代へ 142 (遼と北宋)
 第四章 失われたキタイ帝国を訪ねて 214
 第五章 アジア東方のマルティ・ステイト・システム 255 (西夏と金)
 第六章 ユーラシアの超域帝国モンゴルのもとで 281
 おわりに グローバル化時代への扉 366
 本文は406頁
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