変人技術士の備忘録(別称:すいりき板改)

技術士の日々の思いつきを列記。
すいりき板は、出身研究室の掲示板(現在閉鎖)
専門用語を不定期掲載

Choosing Not to Choose: Understanding the Value of Choice (選択しないという選択)

2019-03-23 21:41:09 | 読書
 図書館で借りて読んだ“選択しないという選択”の感想を以下に記す。意思決定、特にデフォルト・ルールと能動的選択について書かれている。著書の主張の一つは、人間の注意力や時間には限りがあるため、注意力や時間を節約するデフォルト・ルールは役に立つというものである(P.217)。代理人に選択を任せる事や、デフォルト・ルールに任せる事を“選択しないという選択”と言っている。その選択しないという選択について、論じている。デフォルト・ルールよりも能動的選択が重視される例として、選ぶことを楽しめる場合や学習と行為主体性が重要な場合が挙げられている(P.220)。副題の“ビッグデータで変わる「自由」のかたち”とあるように、ビッグデータを利用した高度に個別化されたデフォルト・ルールについても論じられている(例えばP.170)。個別化したデフォルト・ルールの例として、パンドラやアマゾンが出ている(P.170)。デフォルト・ルールが固着する理由はかなり興味深い。第一は惰性と先送り(P.40)。第二は情報のシグナル(P.46)。第三は損失回避の影響(P.50)。それ以外にも責任感、罪悪感、羞恥心がある(P.53)。責任をとりたくない、自分の選択権を保持する、という理由は納得のいくものがある(P.122)。
 P.78のデフォルト・ルールの選択に関する考えで、“完全には理論化されていない合意”の意味がよく分からなかった。これは、解説のP.234で書かれている解説者大屋雄裕のサンスティーンの印象と合致すると思われる。すなわち、“理論的な洗練や整合性よりも現実的な問題解決に関心を持ち、どれだけ適切な問題処理が可能かというプラグマッティックな志向”を指すと思われる。これは自分にも当てはまる傾向にあるように思う。同じくP.78に書かれている次の文章が印象的である。“最も抽象的な最大の疑問を考慮の対象から外して、そういった問題の解決に依存しない方式に落ち着くことができるかを見きわめることでのみ、われわれは最も効率よく前に進める、という考えが基本にある。”ある意味で便宜主義的な考えであるが、時には役立つことがあるように思う。
 P.155の記述がずいぶん印象的だったので、記載する。まともに機能している社会では、安全な飲み水や空気の確保等について判断する必要がない。それらにわずらわされずに、自分の仕事に取り組めることは、災いではなくありがたいことである。
選択に関して学べる良い本である。
Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3月17日(日)のつぶやき | TOP | 3月23日(土)のつぶやき »

post a comment

Recent Entries | 読書