
津市芸濃町、市立明小学校の前にある、
旧明村役場庁舎です。
「貴重な大正時代の洋風建築として保存する」か
「老朽化して危険だし、壊したほうが、後方の小学校の見通しが良くなる」
という議論の末に、
国の登録有形文化財として保存する方向に決まりました。
先般11月7日には、内部の一般公開が行われ、
今後の活用方法について、市民から意見を募集していくということです。

歴史散歩(10)
新たに国の登録有形文化財となる 旧明村役場庁舎
市内の北西部、芸濃町林の集落を西から東に向かって旧街道を進むと、集落の中ほどで
小さな交差点に差し掛かる。この交差点の北東隅に、レトロな雰囲気を醸す1棟の洋館が
建っている。これが、新たに国の登録有形文化財として登録されることになった「旧明村
役場庁舎」である。
この建物は、大正5(1916)年に当時の明村役場として建設された。1階には役場事務
室や来賓室などを設け、2階の大広間は議場であった。
設計者は敷地の立地にも配慮したのであろう。建物の角に玄関を設け、敷地隅の門から
の連続性を持たせた建物構造とし、玄関ポーチの上部の2階部分にはバルコニーを設けて
洋風建築の特徴を際立たせている。
建物を見上げ目を引くのは、バルコニー上部の紋章デザイン。丸枠に「日」と「月」の
字形を合わせてデザインした「明」の文字が、当時の明村のシンボルとしての建物を象徴
するように、またその存在を主張するかのように誇らしげに輝いている。建物はのちに、
昭和31年の合併によって芸濃町明支所となり、昭和46年から近年まで芸濃町郷土資料館と
してその機能を発揮してきた。
国の登録有形文化財の基準に「造形の規範となっていること」があり、この建物は当地
域への近代建築技術の波及を示す一例として、また役場庁舎建築としても高く評価された。
徐々に深まりゆく秋。旧街道の一角に静かにたたずむ建物である。
(「広報津」平成18年11月1日号)

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