2011年11月7~8日に「野生鳥獣被害対策指導者研修会」を
新潟ワイルドライフリサーチ主催、長岡市共催、新潟県後援で実施しました。
私は新潟ワイルドライフリサーチのメンバーとして
この研修会の準備に力を入れてきたので、
無事終了し、今は感無量な気持ちでいっぱいです。
何より、お手伝い頂いたスタッフのみなさん、
長岡市農政課の皆様には感謝の気持ちで一杯です。
本当にありがとうございました。
さて、具体的な研修会の様子についてお知らせしたいと思います。
11月7日 午前 長岡市教育センターにて
1野生動物管理の基本的な考え方
講師 長岡技術科学大学 山本 麻希
2サルの生態的特性と被害防除
講師 新潟大学 望月 翔太
3イノシシの生態的特性と被害防除
講師国際自然環境アウトドア専門学院 長野 康之
という3つの講義を行いました。
午前の参加者は、約40名でした。
午前中から盛りだくさんの内容で、休憩も挟まずびっちりの講義です。
参加者の多くは、市町村など自治体の鳥獣被害を担当している方のため、
みなさん大変真剣に講義を聴いておられました。
基本的な考え方の中では、山本より鳥獣対策に取り組む基本単位が集落であること、住民のみなさんへの教育系初の大切さ、そして、その住民のみなさんを啓発するために必要な被害対策の指導者育成が大切であることが紹介され、本研修はそのような被害対策の指導者を育成することが目的であることが示されました。
また、今年は堅果類が全県にわたって豊作で、クマの出没が少ないが、ブナの場合、豊作年の翌年は凶作になる可能性が高く、来年はツキノワグマの出没に十分な警戒が必要なこと、また、全国的に大きな被害を出しているニホンジカが近年新潟県に侵入しつつあることなどが紹介されました。
サルの講義では望月氏よりサルの基本的な生態の特性に基づきながら、サルの群れ管理のための捕獲技術やサルの農作物被害を防除する具体的な事例について紹介がありました。特に望月氏の専門であるGIS技術を生かし、テレメトリーの行動データを基に、地域でサルの被害対策をどのように生かしていくかが新発田での事例を示しながら説明されました。
イノシシの講義では、長野氏よりイノシシの基本的な生態の特性、特にサルやクマと違って繁殖率が高いため、非常に個体数の増加が早い点、そして、新潟にやってきた水稲に大きな被害を出す初めての野生動物であるという点について説明がありました。イノシシには、電気柵の設置が非常に高い効果を生むこと、また、個体数の増加が早いことから適切な捕獲圧をかける重要性についても説明がありました。
午後は、長岡市の千歳公園にて
サル対策の基本技術であるテレメトリー実習と
イノシシ対策の要となる電気柵設置実習が行われました。
天気はあいにくの雨でしたが、30名以上の参加があり、
みなさん熱心に電波発信機が出す電波を探査するアンテナを振り、
事前に主催者が隠した電波発信機の位置を特定する実習に取り組みました。
電気柵の設置実習は、ガラガー社代理店の近藤さん、ガラガー社の青木さんを講師に迎え、実際に自分たちで電気柵を設置しながら、設置時の注意点について講義を受けました。
11月8日は 長岡市栃尾地区にあるR290の道の駅に併設する
栃尾産業交流センターおりなすに場所を移して
地域の合意形成と集落環境診断についての講義と実習を行いました。
午前 山本から地域の合意形成と集落環境診断についてというタイトルで1時間の
講義があり、鳥獣被害対策の単位となる集落において、
地域のみなさんが一致団結し、集落ぐるみで鳥獣被害対策を行う上で
大変役立つ技術である集落環境診断の実際について説明がありました。
鳥獣被害のチェックリストを利用しながら、集落の環境を調査し、
その調査内容をもとに集落地図を作製。
そして、その地図情報を見ながらワークショップを開き、
その集落に有効な鳥獣被害対策に順位づけをして具体的な被害対策案を作成する
という集落環境診断の具体的な流れと、実施に際してのポイントが紹介されました。
そして、講義の後、
長岡市葎谷地区に移動し、参加者全員で集落環境調査を行いました。
どこから動物が集落にはいってくるのか?
集落を調査する上で大切なポイントは何か?
放置果樹の状況はどうか?
なと実際に現場を歩きながら、集落環境診断のポイントについて
講師から講義を受けながら実施しました。
午後は、午前中に各自が作成した集落環境調査の地図を基に
各班にわかれて集落の課題の洗い出しとそれを基に被害対策を立案する
ワークショップを行いました。

みなさん、最初は初対面の人も多かったのでぎこちないところもありましたが、
議論が進むに連れて大変excite!
当初ワークショップは1:30の予定でしたが、予定を延長し、2時間じっくり
みなさんで議論をしてすばらしい環境診断ができました。
そして、最後はみなさんが実際に環境診断をして決めてもらった対策を
代表者の方に発表して頂きました。
集落環境診断というのは、全国的には地域の合意形成と鳥獣被害対策の実施を行う上ですでにマニュアル化されている技術です。
しかし、新潟ではこの導入が遅れています。
本研修会の参加者のいらっしゃる自治体や集落の中から、集落環境診断技術を導入し、被害対策を実践するところがでてくることを心から楽しみにしています。
またこのような診断を実施したいという地域があれば、
私達ワイルドライフリサーチに御連絡頂ければそのノウハウや実施のお手伝いを
いつでも支援して参りたいと思いますので、御連絡をお待ちしています。
また、本研修会の様子が、本日の新潟日報に掲載されました。
新潟ワイルドライフリサーチとして、初めての被害対策について講義だけでなく
実技を含む研修会でした。
先週はテキストの作成と準備で目の回るような忙しさでしたが、
研修の参加者の方に書いて頂いたアンケートに大変ためになったという
お声をいただき、主催者としてうれしいかぎりです。
この研修会は今年だけではなく、これから毎年実施を計画しています。
新潟県における鳥獣被害対策の正しい知識の普及は非常に遅れています。
新しく鳥獣被害の担当になった自治体職員の方、地域で被害対策をなんとかしたいと
思っている地区長さんや集落の農家の方、JAの方、普及指導員の方、
こういう人に是非参加してもらいたいと思っています。
今年参加できなかった方は是非来年御参加をお待ちしています。
山本 麻希