昨日、私はアネットとリーセンにイサックの事を相談していた。
一人になると自分の毛を自分でもぐもぐ食べてしまうイサック。最初はストレスかとも思って気にかけるようにしていたのだが、ぽんぽん達との関係も悪くなく、運動不足ということもなかった。そんな悩みをアネットにぶつけてみると、リーセンともどもありえない話だと深刻になってしまった。
『ミオッコ、私達の経験から言ってもそういう癖のポンの話は聞いたことがないわ。』
ああでもないこうでもないと真剣な話がされたもののいい解決策はなく、アネットがどんどん落ち込んでいくのが手に取るようにわかった。
『ミオッコ、イサックはまだ若いわ。直すなら今のうちよ。ねえ、カティスに相談してみるのが一番だと思うの。きちんと相談してみなさいな。』
あまりにも深刻なアネットの様子に少々気が滅入っていた私だが、こんなチャンスはなかなかないはずだ。カティスに聞いてみなければならない。
『あの・・・カティス・・・イサックがね、毛を食べちゃうの。』
『あらそ、暇なのね。』
昏倒せんばかりに驚いていたアネットとは違い、あまりにも簡単に返事をされて拍子抜けしてしまった。
犬は昔から人間と狩に出かけ、戻って来た時におすそ分けを貰って食べていた。外から戻ってきて、落ち着いた時に自分の手を舐めたりかじったり、更には何かしらのきっかけで自分の毛を食べてしまうというのは本能みたいなものだというのだ。
外産の犬は野生が強いとよく聞くが、こういう自然の中で生活していれば本能は残り続けるかもしれない。
『暇なのよ。暇を与えないようにヘトヘトにさせるのが一番。頭を疲れさせるのが手っ取り早いわね。』
そうだ、そうかもしれない。ポンは元来物事に執着する性質だ。他に目を向けさせるには頭を使わせるのが一番だ。
『そういう意味ではさっきの探索・追跡トレーニングはイサックにいいと思うの。短時間でヘトヘトになるし、いざあなたが森で倒れた際にも助けてもらえるわ。奥深くに分け入ってイサックに探させるのよ。』
『・・・・・・うっ、うん。』
『鍵なんかを落としたときにも便利よ。絶対に探し当ててくれるもの。』
『・・・・・・。』
カティスは忘れている。私がどこから来ているのか全く忘れていると思う。・・・東京には・・・東京には森なんてないよっ!森の中で倒れることもないし・・・鍵も落とさないっ!
『そっ、そうね・・・ビルの間に隠れるわけにはいかないわね。でもね、こんなやり方があるからやってみて。家の中におやつやオモチャを隠して探させるの。』
・・・・・・。
羊はいないし、森もなければ川もない東京の片隅の小さな部屋。そっと好きなおやつを隠してごらん。あらゆるものを頭突きしながら探すよきっと。フガフガ、ドッシャンガラガラ、フンガフンガ、ドンガララン。イサックがおやつを見つける頃・・・家中のものが転がっている。
『ありがとう、カティス。とりあえず、何かやってみる。ヒントをくれてありがとう!!』
一人になると自分の毛を自分でもぐもぐ食べてしまうイサック。最初はストレスかとも思って気にかけるようにしていたのだが、ぽんぽん達との関係も悪くなく、運動不足ということもなかった。そんな悩みをアネットにぶつけてみると、リーセンともどもありえない話だと深刻になってしまった。
『ミオッコ、私達の経験から言ってもそういう癖のポンの話は聞いたことがないわ。』
ああでもないこうでもないと真剣な話がされたもののいい解決策はなく、アネットがどんどん落ち込んでいくのが手に取るようにわかった。
『ミオッコ、イサックはまだ若いわ。直すなら今のうちよ。ねえ、カティスに相談してみるのが一番だと思うの。きちんと相談してみなさいな。』
あまりにも深刻なアネットの様子に少々気が滅入っていた私だが、こんなチャンスはなかなかないはずだ。カティスに聞いてみなければならない。
『あの・・・カティス・・・イサックがね、毛を食べちゃうの。』
『あらそ、暇なのね。』
昏倒せんばかりに驚いていたアネットとは違い、あまりにも簡単に返事をされて拍子抜けしてしまった。
犬は昔から人間と狩に出かけ、戻って来た時におすそ分けを貰って食べていた。外から戻ってきて、落ち着いた時に自分の手を舐めたりかじったり、更には何かしらのきっかけで自分の毛を食べてしまうというのは本能みたいなものだというのだ。
外産の犬は野生が強いとよく聞くが、こういう自然の中で生活していれば本能は残り続けるかもしれない。
『暇なのよ。暇を与えないようにヘトヘトにさせるのが一番。頭を疲れさせるのが手っ取り早いわね。』
そうだ、そうかもしれない。ポンは元来物事に執着する性質だ。他に目を向けさせるには頭を使わせるのが一番だ。
『そういう意味ではさっきの探索・追跡トレーニングはイサックにいいと思うの。短時間でヘトヘトになるし、いざあなたが森で倒れた際にも助けてもらえるわ。奥深くに分け入ってイサックに探させるのよ。』
『・・・・・・うっ、うん。』
『鍵なんかを落としたときにも便利よ。絶対に探し当ててくれるもの。』
『・・・・・・。』
カティスは忘れている。私がどこから来ているのか全く忘れていると思う。・・・東京には・・・東京には森なんてないよっ!森の中で倒れることもないし・・・鍵も落とさないっ!
『そっ、そうね・・・ビルの間に隠れるわけにはいかないわね。でもね、こんなやり方があるからやってみて。家の中におやつやオモチャを隠して探させるの。』
・・・・・・。
羊はいないし、森もなければ川もない東京の片隅の小さな部屋。そっと好きなおやつを隠してごらん。あらゆるものを頭突きしながら探すよきっと。フガフガ、ドッシャンガラガラ、フンガフンガ、ドンガララン。イサックがおやつを見つける頃・・・家中のものが転がっている。
『ありがとう、カティス。とりあえず、何かやってみる。ヒントをくれてありがとう!!』