MINOKICHI JP   Tokyo Japan

毛玉生活満喫中?
濃すぎるポーリッシュ・ローランド・シープドッグのお話。

北欧珍道中記 パート3 (その11)

2008-08-19 00:22:55 | 北欧珍道中記 パート3-2
今回のショーのジャッジはポーランド人。
ポーランド人は典型的なポーランド・ポンをお好みで、どのクラスでも選ばれるのはドッシリ・ゴッシリ・ズッシリなポン。

イギリスタイプのポンの飼い主はどんどんやる気を無くしていくし、ハーフタイプのポンでもでかい子だけが残されていくジャッジングに、
「なによっ、何処見てんのよぉぉぉ!何にも考えてないし見てないじゃないの、このジャッジ。大きければいいってもんじゃないでしょ!!」
という声がありとあらゆる場所から飛び出してくる始末。
どこの国でも出る文句は同じ。皆自分の犬が一番可愛いからね。



アネットも明らかに意気消沈していたが、これも全てはジャッジの好み。次のショーでイギリス系のジャッジが来れば今日の判定は全て覆る。
それがドッグショーというものの面白さでもあるのだ。



現在ポーランドやヨーロッパで実質的なトップのポンであるアラーシュと、その子供達がほとんど1席を取っていくショー展開。
子犬であろうがジュニアであろうが、オスもメスもアラーシュの子供達のオンパレード。
もちろんチャンピオンクラスではアラーシュが栄冠に輝くと言う結果だった。



これを見ていてすごいなと思うのはアラーシュのDNAのすごさ。
5歳のアラーシュは現在種オスとしても売り出し中なので、ポーランド国内だけでなくスウェーデン国内にも多くの子供がいる。
その子犬達の多くがショーにおいて高評価というのはすごい話である(雄でも雌でも)。



実は今回このアラーシュのスウェーデン遠征に乗じて、精子を保存しようということになったのだ。
今年から日本でも可能になった「凍結(フローズン・チルド)精子の輸入」を見据えて採取をし、30年以上の実績があるスウェーデン「犬精子バンク」で凍結保存をしようという話である。



長いスパンで優秀なDNAを確保していくということは世界中のポンクラブの大きな命題となっている。
インブリードでなく、なるべく血の離れたアウトブリードを選択していく傾向のあるヨーロッパ諸国にとって繁殖は簡単な事ではなく、常に真剣勝負。
どの精子をいつ採取するか、どのメスにいつ使うか等々、タイミングを計って話を進めていくことが大事なのだ。
性格の良し悪し、遺伝的疾病の有る無しを慌てることなくジャッジできる凍結精子による繁殖。
理論としては1000年大丈夫(牛なんかもそう)な為、盲導犬協会でも積極的に取り入れられ始めている方法である。



ある程度の金額はかかるので、スウェーデンの犬舎数件と共同で数頭のオスの採取をすることになっていたのだが、予定のアラーシュから違うオスに替わっていたのにはびっくり。
しかし・・・紹介されたオス犬の素晴らしいことと言ったら、アラーシュに負けず劣らずであった。



どっかで見たような・・・?・・・・・???・・・・誰だったっけ?
そーだ、アブソルウェントだ!リーベンダールのアブソルウェントだよっ!!

「そう、アブソルウェントよ、ミオッコ。彼は9歳だけどまだまだいけるわ。でもあと2・3年というところでしょ。アラーシュはまだまだ若いからいつでもOKだし、考えがあっての選択なのよ。」

カティスはこう考えていた。

(現在のトップはアラーシュだが、その前に一世を風靡していたのがこのアブソルウェントである。9歳の彼は今も種オスとして活躍していて、現在までに100頭以上の子供を残している。その子供達からも新たな命が生まれていて、子孫は多い。ところがデータを集めたところ、子孫は皆股関節が良く特定の遺伝的疾患が出ていない。特にこのアブソルウェントのDNAはオスよりもメスによく反映される傾向があり、最高ランクのメスが多数生まれてきている。沢山の子孫がいても日本にはいないし、ヴォッコとの間に素晴らしいメスが生まれてくれば最高である。どんなにいいオスがいても、いいメスからでなくてはいい犬は生まれてこない。島国の日本に今必要なのは、土台となるいい台メスだと思う。沢山の子孫を残しつつあるアラーシュのデータも今後出揃うだろう。だったら、子孫の遺伝的疾患をチェックしてからの採取がベストである。)

うーん・・・なるほど。すごい説得力だ。
彼女が若くして世界中の犬関係から一目置かれている理由はここにあるのだね。
膨大な量のデータを世界中から集め、分析する力があってこその決断だもの。
アブソルウェントにしてもアラーシュにしても性格は穏やかで、声がどんな声だかもわからないままだった。
ちなみにアラーシュは昨年、おなかに出来ていた毛玉を無理やり取ろうとした私のあごを蹴り上げた時に(寝転んでいたのに、立ち上がろうとした)『フングッ』っとわずかに声を上げたのみ。
海外のポンは皆あまり泣かないのだ。


最新の画像もっと見る