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蒼のマハラジャ

2007年05月27日 | コミック詳細

『蒼のマハラジャ』神坂智子 コミック全10巻/文庫版全5巻

 ●ワンポイントあらすじ (注意!ネタバレを含みます)

時は第二次大戦前夜、主人公のモイラは、英国大使の父に連れられ母ともどもインドのラジャスターン州ジョドプールにやってくる。彼女はそこで若い王子シルバと出会い―――インドを虎視眈々と狙うイギリスの外交姿勢を背景に、英国側に立って内乱を狙う父と、王位を狙って王子を殺そうと画策する王弟、屋上に隠された銃器と、なにかときな臭い序盤、その裏で元気なモイラと慎重なシルバの友情と愛情は着々と育まれていきます。中盤は、ジョドプールの混乱収束後、一旦英国に帰ったモイラが勃発した世界大戦のせいでなかなかシルバのもとに辿り着けず、送られてきた目付け役シバ(ヒンズー教徒)とパンディット(ムスリム)を随えて大冒険を繰り広げた挙句再開するまで。その後結婚する時にもインドの風習やら後宮問題やらいろいろと揉め、終盤はいかに藩王制廃止後のジョドプールを立て直すか。最初と最後がややシリアスですが、全体的にコミカルです。

●お薦めポイント 

  • 古き良き藩王国の気分を満喫できる。 たぶんにわたくしもともと歴史好きではございますが、欧州以東中国以西・以南の地域の歴史ものには特に超弱いのでございます。なので、舞台がインドだというだけでもうかなり点が甘くなっていることはお察し下さい。この作家さん、アラビアのロレンスの話も書いているし、中央アジアものを描かせたら天下一品、考証がしっかりしているので安定感があります。 
  • カラーが明るい。 この方の描く作品には、シリアス一辺倒な物語とコメディタッチの物語、二種類あるのですが、この『蒼のマハラジャ』はコメディタッチの部類に入るものだと思われます。肩肘張らずに楽しんでください。ザッツエンターテイメント!
  • 一大大河ドラマ。 幼かったモイラの人生を10年ちょっとはおっかけてます。N●Kの朝ドラも真っ青!しかも、コミカルで次から次へとはらはらさせられ、ソレを鮮やかに切り抜けてスカッとし、そんな爽快な語り口ながら、時々深刻な問題や歴史的な事実を織り交ぜてくるのだから油断なりません。誰か版権を買い取って映画化すればいいのに!今流行の3部作とかでさ。絶対当たると思うんだけど…。 
  • ラブコメ。 一応この話ってモイラとシルバが出会って結ばれるまで、でもあるのですよね。そう思ってみれば、引き裂かれて離れ離れになる展開あり、恋敵が出て来る展開あり、姑(たち)に邪魔される展開あり、と、王道設定がてんこ盛り。しかも、シルバがモイラに甘いんだ。そりゃあ恥ずかしくなるようなダダ甘い台詞なんかは言わない人ですが、一言一言に込められた真情に読者はもう胸いっぱいになること請け合い。ホント、狙わずに言った告白って破壊力抜群です。

 ●難点 

けっこうくせのある絵なので、あの絵が駄目という人もいるでしょう。わたしはあのあっさり目の線とか、バランスの取れたデッサンとか、独特の独白部分なんかが好きなんですが。あと、貸した友達に「こんな展開有り得へん」と評されたことが。007シリーズみたいに娯楽だと割り切ってください。

●キャラ語り 

  • 主人公モイラ・ベル・バーンズ この作家お得意のおかっぱの明るくて前向きで元気のいい女の子。そのバイタリティたるや、並みではありません!彼女の事をシルバ王子は「こんなすごい女の子がプロポーズを受けてくれるなんて、やった!と思った」と述懐していますが、まさに!やったねシルバ! 
  • シルバ・アジット・シン モイラの相手である、ジョドプールのマハラジャ。主人公、もしくはそれに順ずる殿方には普段あまり心が動かないわたくしではありますが、このシルバは別格!最初青白いちびっ子で、我侭放題育てられたボンボンだったシルバですが、モイラと友達になったあたりから大器の片鱗を見せ始めます。即位してからの彼はもう完璧。かっこいい、というより、本当に立派な王様で、モイラと同じく彼が何かするたびに思わず尊敬の念を抱いてしまいます。あの絵なのに、読んでるうちにどんどんシルバが素敵に見えてくるのですよ(すごいだろう)!!…このときめきはパトロクロスやヘクトールにときめくのと似ている…(ぽ)。 
  • ジャイ ジョドプールと同じラジャスターン州のジャイプールのマハラジャ。おそらくシルバより5つほど年上の、ポロと美人を愛するナイスガイ。この人面白いのよね。どちらかというと、本来のわたしの好みはこの立ち位置の人。行動が鮮やかで機転が効いて、いつも人生を楽しんでそうな人です。どうもこの人にはモデルがいるらしい。 
  • シバ&パンディット 一旦モイラに付けられてからというもの、のちのちまでモイラ付きの部下として出て来る面白コンビ。特にヒゲのパンディットがカワユイ…(じゅるり)。彼の「新月は好きだ、給料日だからな」のコメントはわたくしの中でベスト10に入る名言です。 この人の話って、少女漫画なのにかわいいおじさんがてんこ盛りなのですよね。

 その他にも語りつくせぬ面白い登場人物がわんさか出てきますのでぜひぜひ御一読あれ!

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