元気な森を

毎日新聞
社説:みどりの日 元気な森や林をつくろう
<全文引用>
人の世界では、メタボリック症候群とか女性のやせ過ぎなどが話題になる。健康願望はことのほか強い。森林の癒やし効果を活用して健康回復を目指す森林セラピーも関心を集めている。
 では、人が頼みとする森林の健康はどうだろうか。はた目では判別がつきにくいが、森の中に分け入ると、病的ともいえる光景が日本の至るところに広がっている。
 この時期、ハイキング客でにぎわう茨城県・筑波山神社近くの山は、20年以上前に針葉樹のスギやヒノキを植えた人工林である。順調には育っていない。直径10センチ程度の細いスギが、葉をほとんど付けず、弱々しく立ち並ぶ。関係者は「人手不足で手入れができなかった」と嘆く。
 日本の森林は国土の3分の2を占め、そのうち4割が人工林、残りが自然林などである。人工林がひ弱になった背景に、林業従事者の激減がある。安価な外国材に太刀打ちできず、放置された山は枯れていった。
 モヤシのような森林が多くては、地球温暖化対策もおぼつかない。森林には、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を吸収し、炭水化物と酸素をつくる光合成の機能があるが、光合成の場となる葉が貧弱では、CO2削減の効果もあまり期待できない。
 求められるのは、たくましく育った元気な木であり、CO2をいっぱい吸収できる「肺活量」の大きな森林である。
 政府は今年2月、「美しい森林づくり推進国民運動」を官民一体となって展開することを決めた。森林が、安倍晋三首相の提唱する「美しい国、日本」の礎になることを念頭に置いたものである。
 しかし現状を見るに、目標が「美しい森林」というのは少々違和感がある。目指すべきは「元気な森林」であり、政府には全国の森林の健康診断を実施し、元気な森づくりを目指してもらいたい。
 現存する森林の手入れだけではない。シイ、カシ、タブなど、その土地本来の広葉樹の植樹により元気な自然林を育てるのが、日本の森づくりにとって重要である。
 MOTTAINAIキャンペーンを進めるノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんは、このほど来日し、「地球環境問題の解決には、木を植え、木を守ることが大切」と訴えた。30年で計3000万本というマータイさんたちのケニアでの植林は、外来種ではなく、土地本来の樹種である。
 毎日新聞社は、創刊135年を記念し135万本を植える植樹事業を推進している。植樹を指導する宮脇昭・横浜国立大名誉教授は、多種類の苗木を混植し、そこから競争で生き抜いてきた木々による森づくりを提唱する。筑波山神社近くでも、その手法の植林が実施された。手入れがいらず、元気な本物の森ができるという。
 今年から「みどりの日」は5月4日になった。大型連休の後半、身近な森や林に足を運び、見かけだけでない、本当にたくましい森のことを考える機会を持ちたいものである。・・・・毎日新聞 2007年5月4日 東京朝刊

みどりの日なのに 森のことを 社説としたのは 主要紙では 毎日のみ
宮脇昭氏の 自然観が 変わる 番組
も ぜひ ご覧ください
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