安倍首相は「任期中に税率を倍にした首相」としてのみ、歴史に名を残しそうだ

倉山 満

安倍晋三、菅義偉、山本太郎「首相にふさわしいのは?」答えは一択

言論ストロングスタイル]―

安倍首相は「任期中に税率を倍にした首相」としてのみ、歴史に名を残しそうだ

 室町時代、天皇の御世代わりには南朝の残党が蜂起し、将軍の代替わりには徳政一揆が勃発した。ならば、令和の我々は?  とうとう安倍晋三首相が消費増税をやらかし、暗い気分で台風を迎え、新帝即位のパレードも延期となった。だが、即位の当日、陛下がおでましになると雨がやみ、虹がかかった。多くの人が、日本は神国であると実感したのではないか。しかし、皇室と国民の絆は神話だけによって結ばれているのではない。

 日本はどうなるのか?ではなく、自分の国をどうするのか?と心ある国民が考え行動してきたので、日本は守られてきたのだ。  安倍首相の思惑は明確だった。新帝即位を、国民は必ず歓迎する。祝賀ムードの中、高い支持率も維持できる。消費増税による景気悪化は、まだ先だ。ならば、今の内に解散総選挙をしてしまえば、引きずりおろされることもない。

 憲法上は、衆議院の解散権は総理大臣にある。だが、それは表のルールにすぎない。実際には、創価学会が握っている。創価学会とは、連立与党の一角の公明党の支持母体であり、かつ自民党の最大支持基盤である。だから、その意向に逆らえない。自民党総裁(総理大臣でもある)と雖(いえど)も、創価学会の意向を抜きにしては選挙ができない。これが真のルール、掟だ。  さっそく公明党筋からは「台風で解散は吹っ飛んだ」という声が聞こえる。仮に安倍首相が解散を打ちたくても、創価学会・公明党を説得できるだろうか。そんな公明党も逆らえない勢力がある。官僚だ。  安倍内閣が空前の長期政権と化した理由は簡単だ。霞が関の官僚機構の傀儡と化したからだ。真の官僚とは、立法を握る内閣法制局と、行政(予算)を握る財務省主計局である。法制局は最強の拒否権集団で、主計局は最強の推進集団だ。安倍内閣は常に、この両者に遠慮してきた。  現在、主計局の意向は明快である。「安倍は用済み。次は菅」だ。どうやら安倍首相は「任期中に2度の消費増税を成し遂げ、税率を倍にした首相」としてのみ、歴史に名を残しそうだ。

「ポスト安倍」の筆頭は菅官房長官だが…

 読者諸氏も、現在の日本政治が菅義偉官房長官を中心に回っているのは感じているだろう。安倍内閣7年を官房長官として支え、政官界ににらみを利かせてきた。最近では「令和おじさん」として一般の知名度も上がり、「安倍後継」の最右翼と目されている。しかし政権の座は、どのような就きかたをするかで、意味が変わる。安倍首相に禅譲されるか、あるいは霞が関の傀儡となるか。  菅官房長官が推した大臣のスキャンダルが噴出し始めているが、意味は簡単だ。「従うなら首相にしてやる。逆らうなら潰す」

 即位の礼では、男性皇族の少なさが際立った。多くのメディアが「先送りできない、皇位の安定継承」と迫る。要するに、「女帝と女性宮家を認めよ」と言いたいのだ。  さすがに安倍・菅も、「日本の伝統は皇室の男系継承だ」とは理解できている。だが、その正論を守る力が残っているか。  本欄でも「皇位継承の問題は、引き分けならば、国体護持派の勝ち」と強調してきた。詳細は、小著『13歳からの「くにまもり」』で詳述しておいた。悠仁親王殿下がご無事に成人され、即位され、男の子が生まれ、その子が即位される。時間がたてば、女帝や女性宮家など出る幕が無い。女系など、論外だ。  だから国体破壊派は、「先送りするな」と迫っているのだ。その首魁(しゅかい)は、内閣法制局である。  安倍内閣が有識者として不肖倉山を呼ぶくらいなら、女系・女帝・女性宮家の推進論など、鎧袖一触(がいしゅういっしょく)で粉砕できる。だが、その根性を求めても無駄だろう。今の安倍内閣に任せておけば、ズルズルと下手な妥協をするのは目に見えている。過去7年間が、そうだったので。  ならば結論は一つ。打倒するのみ。

山本太郎ー馬淵澄夫の動きに注目

 注目の動きがある。先の参議院選挙で既成政党の心胆を寒からしめた れいわ新選組の山本太郎代表が、無所属の馬淵澄夫衆議院議員と「減税」に向けた研究会を開くという。  山本氏の「消費税廃止!最低でも減税」という主張は、多くの国民の心を掴んでいる。枝野幸男如き、口では政権反対を唱えながら、実態は与党の補完勢力に過ぎない偽物野党とは違う。山本氏は、本気で政権奪取を考えている。その山本氏よりも先に消費減税を唱えていたのが、馬淵氏だ。ちなみに、この事実を伝えているのは、私が主宰するインターネット番組の「チャンネルくらら」だけではないか。

 安倍内閣の政権基盤は、経済だ。景気が回復軌道だったから、国民は多くの悪行に我慢してきた。ならば、経済問題で攻めればいい。まずは、安倍内閣よりも正しい経済政策を訴え、浸透させる。  次に、国民の不安を払拭すべきだ。山本太郎氏は共産党とも組み、さらには背後に共産党よりも左の勢力がいると見做されている。一部の人たちからは、生理的に受け付けられない人なのである。これは理屈ではなく、感覚的なものだ。それを、「自民党より、よっぽど保守」と玄人筋では評価されている馬淵氏が組むことで、払拭できるかどうか。少なくとも、その努力をすべきだろう。  現在の日本の悲劇は、まともな野党が無いことだ。あの「民主党の悪夢」を覚えている国民は、政権交代恐怖症になっているのだが、仮に馬淵氏と山本氏が共同代表になるような新党ができたらどうか?「馬淵首相」ならば、政権交代させても、何も問題ないのではないか? 少なくとも、経済政策は安倍内閣よりもマトモだ。皇室典範とて、「改悪阻止」くらいはできよう。既に安倍内閣で、「改正」などと高望みできないのだから。

筆者はズバリ「首相にふさわしいのは山本太郎」と答える

 究極の選択である。「安倍晋三、菅義偉、山本太郎、この3人の中で首相にふさわしいのは誰か?」と聞かれたら、今の私は迷うことなく「山本太郎」と答える。安倍・菅両氏は官僚の言いなりだが、山本氏は「それではダメだ」との意思はある。官僚の言いなりならば、日本はいつまでたってもダメな国だ。

 かつて「安倍救国内閣」に身命を賭した私に、ここまで言わせるのは誰か?  とにもかくにも、皇室典範と消費減税。つながっている、最も重大な問題だ。

 
倉山 満

憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」

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