「中国では「病院」のことは断じて「医院」という。「病院」は漢字本来の意味から病原菌センターになる。

チャイナ 医院基礎知識

すこしは改善したのかな

 

宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和二年(2020)4月3日


(宮崎正弘のコメント)以前、五年ほど前ですが、『月刊日本』に「中国の医薬界は『黒い巨塔』だ」として小生は、次の文章を書いています。
 (引用開始)「中国では「病院」のことは断じて「医院」という。「病院」は漢字本来の意味から病原菌センターになる。
 その医院へ早朝に行くと異様な光景がある。診断受付が九時開始というのに午前五時には長い列ができているのだ。
 患者の数と医院の数が実情と適合していないためで、ここに目をつけた「順番待ち」のプロが出没し、早い番号を法外な値段で患者や家族に売る。鉄道の駅では切符売り場の長い列に横あいから乱入して替わりに切符を買うという商売があり、結構流行っている。なにしろ白タクを「黒車」というが、中国全土、黒車だらけ、じつは筆者もよく利用する。競争が激しく、メーターより二割ほど高いだけだから。
 中国の政、官、財界と軍隊が腐りきっているのは一般常識だが、賄賂は中国ビジネスの前提である。民間企業の腐敗もすこぶる「健全」で、ゼネコンは農地買収の建設予定地から立ち退かない住民をヤクザを使って追い立て、住居取り壊しに駆使するため庶民の不満の爆発は自爆テロか、暴動しかない。
 中国にはいわゆる「赤ひげ先生」はいない。江戸時代の赤ひげは、貧者からカネを取らず、医療を施して感謝され、一方では大名や濡れ手で粟の金持ちからふんだくって庶民の喝采を浴びた。
 中国では、医者はカネを掴ませないと手術をしてくれない。薬も呉れない。いや、賄賂を贈らないと入院もままならない。ところが保険適用の特権階級が登場し、さらに過去にはなかった生命保険が90年代の終わり頃から登場し、急速に拡大したのであちこちに新設の医院ができた。
 中国の医療保険制度が貧弱な故に生命保険が大流行したからだ。そのうえ医院とは言っても国家補助金が少なくて医者は薄給に甘んじる。だから医薬保険業界の腐敗は凄まじいことになる。
 中国の医師らは製薬会社から賄賂(相場は薬の売上げの20%)を受け取り患者に必要のない薬も適当に処方し、高いクスリの使用を強圧的に診断して薦め、あげくには賄賂の「額が足りないから車を買って欲しい」と製薬会社に要求し、なかには愛人が欲しいとか。
 「グラクソ・スミス・クライン(GSC)事件」はこうした状況下、おこるべして起きた(本社=英国、世界第四位の製薬会社)
 業界の競争はシェア拡大であり、そのためにGSKは1憶6500万ドルを賄賂として用意し、医者にもっとGSCの薬品を多く処方するよう要請し、中国市場のシェアを確保してきたのだ。四人の中国人販売幹部が拘束される始末となった。
 中国ではジェネリック薬品が奨励されているのにアメリカ人の平均の十倍の薬価を支払い、しかも「ジェネリック薬品は殆ど使われず、たとえば陝西省ではジェネリック薬品そのものが売られていない」(英製薬業界専門紙『ランセット・グローバル・ヘルス』)。
 ふくらみ続ける医薬界の闇のこんにちの状況は、まさしく『黒い巨塔』だ。
「製薬業界の売上げが1650億ドル(邦貨換算17兆円強)に達し、しかも中国は2016年には世界第二位の製薬、薬事大国になる」という(英誌『エコノミスト』、14年2月1日号)。
 医療費にしめる薬代はOECD平均が全医療費の16%だが、中国のそれは40%を越えており、なにしろ先進国でも処方されているジェネリック薬品の価格さえ、数倍高い(だから訪日中国人はあんなにたくさん日本の薬を買って帰るわけだ)。手術をしてくれなくて死んだ患者の遺族らが結束して医者を襲う事件が多発し始めた。
 2012年には七人の医師が殺害された。重軽傷は数えきれず。なんでもありの中国、日本では考えられない事件が起きる。グラクソ・スミス・クラインの中国現地法人が中国当局から収賄の疑いで手入れをうけた理由も医薬品が高いという、庶民の不満の対象をすりかえて、外国企業が悪いことにするからである。これも中国の常套手段だ。
 外国企業は私設カードマンを雇い、独自のセキュリティ対策を駆使し、暴力的な抗議活動や妨害活動に対応しているが、中国ガードマン企業のなかには突如盗人に早変わりする癖がある会社も常識だから、うっかり契約も出来ない。
 こんな中国で病気になったら大変ですゾ」(引用止め)。
 それが大変な事態になった。

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