<視点>水問題研究家・嶋津暉之さん死去 生き続ける「ダム反対」理論 政治部長・関口克己:東京新聞デジタル
2024年3月20日 06時00分有料会員限定記事
全国各地のダム反対運動の理論的支柱で水問題研究家の嶋津暉之(しまづてるゆき)さんが闘病の末、2月に80歳で亡くなった。熊本県の蒲島郁夫知事が2008年に「白紙撤回」を表明した川辺川ダム問題を機に、私は不要な公共工事の「東西の横綱」とされる八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)と川辺川ダム問題を取材した縁で、嶋津さんに何度もお会いした。
嶋津さんは東大大学院で都市工学を学んだ当時、八ッ場ダム予定地を何度も訪れ、反対を訴える住民の声に耳を傾けた。東京都では公害局に配属され、工場の節水技術を指導。ダムは計画が先にあり、理由付けのために水需要の将来値がつくられるとの危機感を抱く。情報公開請求で集めた膨大な国の資料を読み解き計画の欺瞞(ぎまん)を追及。各地のダムを巡る数多くの訴訟や集会にも手弁当で携わり、ダム反対運動の先頭に立ち続けた。
国が八ッ場ダム計画を発表したのは1952年。首都圏の水道需要をまかなう「利水」目的が強調されたが、高度成長が終わると工業用水は減少。バブル崩壊後の90年代以降は家庭用の水道用水も減ると、政府は洪水対策の「治水」を前面に掲げ、建設を促進した。嶋津さんは、各地のダム計画について「建設ありきの虚構づくりはやめるべきだ」と批判し続けた。
八ッ場は民主党政権で中止から再開へと転じた混乱後、安倍政権が本体工事に着手した。完成目前の19年10月...
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