海部健三×井田徹治:ウナギの保全は河川の生態系を守ることだ
https://www.videonews.com/ セーブアース 第7回(2023年4月29日) ゲスト:海部 健三氏(中央大学法学部教授・IUCN種の保存委員会ウナギ属魚類専門家グループ委員) 司会:井田 徹治 地球環境について考えていくセーブアース。第7回の今回は「ウナギ」を取り上げる。 ウナギは2014年にIUCN(国際自然保護連合)によってジャイアントパンダなどと並んで二番目に絶滅の可能性が高い種に指定されたが、個体数が少ないものの手厚い保護を受けているパンダと比べると、個体数が多い半面適切な保護を受けられていない。ではどのようにウナギを保護すれば良いのだろうか。 一般に天然の水産資源には再生産速度と呼ばれるものがあり、消費速度がそれを上回らなければ資源を持続的に利用することが可能になる。だから資源を保護するためには、再生産速度を上げると同時に、消費速度を落とさなければならない。特にウナギの場合、人間が壊した生育環境を取り戻すことが重要だと、中央大学法学部教授でIUCNの種の保存委員会で委員を務める海部氏は述べる。具体的には川を遡上する上での障害となるダムや堰などを除去したり、コンクリ―トによる護岸で失われたウナギの隠れ場所などを取り戻すことなどだ。 また海部氏は、現在広く行われているウナギの放流が産卵に結びつくことを証明する科学的なデータは存在しないと語る。古くは明治期から行われてきたウナギの放流は現在も各地で続いているが、海部氏の研究によれば、河川に放たれた養殖ウナギは天然ウナギとの種内競争において劣位にあり、実験では天然ウナギから攻撃を受けるなどするため生残率も低い結果が出ているという。さらに、養殖場の密集した環境で生育したウナギは病原体に弱いため、実際にアメリカやヨーロッパでは養殖ウナギを放流した結果、感染が河川全体に広がった事例も存在するという。漁業者によるこの放流には、かけるコストに対してどれだけの利益があるのかの検証が不十分だと海部氏は言う。 また養殖についても問題がある。2015年には中国や台湾、韓国、日本の四か国の非公式協議によるシラスウナギの池入れ量の上限が設定されたが、四か国の割当量の上限である78.8トンは実際の池入れ量の約40トンほどと比較しても二倍ほどの数字に設定されているなど、制限としての意味をなしていない。昨年助言を行う専門家会議が設立されたが、未だ十分に機能しておらず、取りたい放題がまかり通りっているのが実情だ。 ウナギは食文化の面でも注目度が高い。しかし単に人間がウナギを食べることができなくなるということ以上に、ウナギは捕食者として河川の生態系における重要な役割を果たしていることも忘れてはならない。海部氏はウナギを守ることは河川全体の生態系を守ることだと語る。 ウナギが減り続けている原因や取るべき対策、生態系における役割などについて海部氏と環境ジャーナリストの井田徹治が議論した。 【プロフィール】 井田 徹治(いだ てつじ) 共同通信編集委員兼論説委員 環境・開発・エネルギー問題担当 1959年東京都生まれ。83年東京大学文学部卒業。同年共同通信社入社。科学部記者、ワシントン特派員などを経て2010年より現職。著書に『ウナギ』、『生物多様性とは何か』『データで検証 地球の資源』など。 海部 健三(かいふ けんぞう) 中央大学法学部教授・IUCN種の保存委員会ウナギ属魚類専門家グループ委員 1973年東京生まれ。98年一橋大学社会学部を卒業。2005年東京水産大学(現・東京海洋大学)海洋科学技術研究科修士過程修了。11年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。同研究科特任助教、中央大学法学部助教、准教授を経て21年より現職。15年よりIUCN(国際自然保護連合) 種の保存委員会ウナギ属魚類専門家グループ委員。専門は保全生態学。著書に『ウナギの保全生態学』『結局、ウナギは食べていいのか問題』など。 【ビデオニュース・ドットコムについて】 ビデオニュース・ドットコムは真に公共的な報道のためには広告に依存しない経営基盤が不可欠との考えから、会員の皆様よりいただく視聴料(月額500円+消費税)によって運営されているニュース専門インターネット放送局です。(www.videonews.com) (本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。) #環境問題 #井田徹治 #海部健三 #ウナギ