木曽路は なべて 山の中なり
いはゆる
山のぼり
河わたりし時に
「われありき」とぞ 思ふ
されば
われに 時あるべし
しかして
われ すでにあり
時 去るべからず
街道を逸れ(それ)草木に分け入り
深山を下れば
石苔ありて 道ふたがれぬ
前途数十里の思ひにこれを越え
いとどしき坂を行き行く
其よや(そよや) このわたりに(辺りに)古人のいひ残せし
「寝覚の床」などありて 訪なふ(おとなふ)
やがて 時 かの去来の相を見せたれば
われ しばし 有時の時をすぐす
木曽川に沿ひて 更に十数里・・・茅葺きの宿に至りぬ
石に さまざまとり混ぜて 苔むすによりて
「石苔(せきたい)の館」と称す
ひと夜の宿を請ふ
鴨居に ほだされし(つなぎ止められた)木菟
たをやぐ(ものやわらかな)宿主(あるじ)が渡せし部屋には
鬼女の面 待ち取るさましてあり・・・(・・;)
♪・・・山里は 秋こそ ことに わびしけれ 鬼女待つ宿に 目をさましつつ・・・♪(本歌214古今)