TOKYO ⇔ SAIGON そしてたくさんの街へ

東京とサイゴン、そして、いろいろな街を巡ります。

Thuyくん

2008-02-18 | Weblog
はじめてサイゴンを訪れたとき、今ではもう行くはずのない「フランス料理店」なんぞに行った。サイゴンではあり得ない高価な店。

支払いのときAMEXが使えなかった。現金は、というと・・・足りなかった。そのとき、足りない分の金額を自分の財布から出してくれたのがThuyくんだった。Thuyくんはその店で、夜だけウエイターのアルバイトをしている学生だった。まだ19歳だった。

そんな苦学生に、わたしはお金を出してもらってしまったのだ。

要らないという彼だけど、それでは気がすまないから、翌日すぐに返しに行った。Thuyくんは学校に行っていていなかったから、名刺にお礼を書き店の人に渡した。

そこからThuyくんとのメールのやりとりが始まった。彼の実家はダラット近く。そこで採れるベトナムコーヒーは「最高なんです」と彼は言う。次回の訪越のときに、持ってきてくれることになった。

再会の日、電話をくれたThuyくんに、「REXホテルのロビーで待っててね」と言った。ところがいくら探しても、ロビーにThuyくんの姿は見当たらない。

よくよく見ると心細そうにThuyくんは、ホテルの入り口からはるか離れた場所に、ポツンと立っていた。「なぜ入らなかったの?」「こんなホテルに入ったことがないから」。

ロビーに座っても、彼はおどおどしていた。持ってきてくれたコーヒーは、なんと3キロも!さっそく飲んでみると、たしかに普通のベトナムコーヒーと味が全然違う。

なんでも彼の親戚が作っているもので、そこではバターでコーヒーをローストする際、バニラバターを使うという。だから、バニラの香りがするのだ。あとからフレーバーだけで香りをつけたものと全然違う。香りが飛ばない。

食事にいくことにした。「高いレストランは嫌い。Thuyくんがいつも行く安い食堂に連れてって」。今ではローカルフードしか食べに行かないが、初めてベトナムのローカルフードを教えてくれたのは、Thuyくんということだ。

あるときのメールで、
「ニャチャンに新しくできるホテルに抜擢された。だからサイゴンを離れるので、しばらくお会いできない」と。

初めてホテルに来たとき、物怖じして足を踏み入れることもできなかったThuyくん。今は、すっかりホテルの仕事に慣れて、一倍のホスピタリティで、笑顔でお客様に尽くしていることだろう。

ベトナム式の「茶道」「書道」そして「地元レストラン」。私が喜びそうなことを、いっぱい教えてくれた最初の人だった。

Thuyくん、いつまでも感謝している。

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