「座標としてのサイン・コサイン」を例にとって説明してきましたが、
「知識の融合」について実感が得られたでしょうか?
今回の例では「三角比」と「三角関数」を横断して学んだわけです。
小手先のテクニックが通用せず、幅広いアプローチに対応できる力が必要不可欠となる昨今の入試問題を攻略する上で、このような学習方法は非常に大きな効果を発揮します。
難関大学受験に必要不可欠であること、そして生徒の独学での達成が難しいことから、
私たちの持つノウハウを存分に活用して、
「知識の融合」の効果を生徒に与えます。
しかし、「知識の融合」には難点がひとつあります。
それは「この学習法を取り入れるタイミング」です。
と言うのも、
実践力向上を水泳に例えるなら、
「深く知る」ことは、準備運動、フォームの練習であって、
「知識の融合」は、実際に泳ぐということです。
「このバタ足で大丈夫だろうか?」
「この足の動きで平泳ぎができるか?」
「クロールの息継ぎがスムーズにできているか?」
思案の末に泳いでよいと許可を下すタイミングの難しさ。
「知識の融合」に移行するタイミングの難しさは、これに似ています。
そして、私の経験上、
時期尚早の「知識の融合」を目指した学習への移行は、
生徒に一切の実践力向上を与えません。
現に、多くの進学校では、教科書に載っているような基本事項は軽い説明にとどめ、
ひとつの問題に対して多角的なアプローチを行うことに重点を置く、
まさしく「知識の融合」を重視した授業を実践しているところも少なくありません。
しかし、基本的な内容を既に習得できている生徒には問題ありませんが、
そうでない、いわゆる初学の段階でいきなりこのスタイルの授業を受けることで、逆に伸び悩んでしまう生徒が、驚くほど多くいるものです。
このような現象の原因こそ、まさしくタイミングの悪さにあります。
例えば、先の記事の中でも、
・2次不等式の解法
・不等式で与えられた領域
・円の接線の傾きの求め方
に関しては、基本的な内容であるという理由から、読者が既に習得できているものと仮定され、詳しい解説がなされていません。
これらの内容理解がまだおぼつかない状態で記事を読んでも曖昧な感覚が消えず、読んでいて疲れがたまる一方でしょう。
正しく泳ぐには、正しいフォームを身に付けていることが大前提。
「知識の融合」という学習を経て新たな発見を得るためには、
「深く知る」ことで、個々の分野の知識を深めておくことが大前提……。
この順番を間違えてしまうと、いくら勉強してもモヤモヤが消えず、成長を期待できません。
(当然と思う方も多いと存じますが、このことがボトル・ネックとなって成長できずにいる国公立・医学部志望の生徒が世の中にはたくさんいるので、あえて強調して言わせていただきます。)
ですから、私たちが「知識の融合」という学習を生徒に提案する際は、
生徒の定期テストの結果、模試の結果、モチベーションといった判断材料をもとに、慎重に決定します。
(移行のタイミングは生徒によって異なりますので、具体例を挙げづらいですが、成績的な観点で申し上げるとすれば、定期テストは正答率90%以上、基礎レベルの模試で正答率80%以上、一方で、難関レベルの模試で歯が立たないような状態が、移行タイミングとしては一般的です。)
「深く知る」という学習が十分になされていて、
かつモチベーション的にも良好であると判断できた状態で、
「知識の融合」を行う段階がくる。
得になるか、損になるか。
それがタイミング次第で決まるのなら、
タイミングを見極めるのは私たちの使命です。
では、
「知識の融合」により、各分野に知識融合が生じることでひとつの事物を様々な視点で捉えられるようになったら、どこに行きつくのか……?
それは、難問との真剣勝負の世界。
そのときは、
難関大学の問題に触れる準備が整ったということ。
よりハイレベルな難問との出会いの中で、更なる実践力向上を目指します。
すべては生徒の実践力向上のために。
私たちは、段階的指導を基本姿勢とし、
生徒ひとりひとりの着実な成長を後押しします。
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数学専門塾ヘウレーカ
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(次回の更新は11月20日です)