男と女

男女間のすれ違い、違い、特徴についての科学的考察

脳の男女差についての否定的意見

2022-08-20 19:23:09 | 男と女

(男と女)

「脳の男女差についての否定的意見」

「脳の性差」については勿論これを否定する意見もある。

ここではこれら否定的意見の中でも、代表的な2つの見解を、一部提示しておく。
(サイトへのリンクを貼ってあるので、全文はこれらを参照)

〇「脳科学者・中野信子が解説。“ジェンダー”の枠から飛び出して自由になる、頭と心のつくり方。」

── かつて、男性脳と女性脳の違いについて書かれた書籍が話題になりました。それから20年近く経ちましたが、脳科学の最新の知見でも、男性と女性の脳には違いがあるとされているのでしょうか?

男女の間で筋肉量や皮下脂肪の量などが異なるのと同じように、脳にも男女の違いはあります。

たとえば神経伝達物質のひとつ、セロトニンは精神を安定させることで知られていますよね。この物質の合成能力には男女で差があり、男性は女性の約1.5倍というデータが。セロトニンが少ないと欠落に過敏になりやすく、不安傾向が強まりやすいのです。

たとえば男女が同じ家に暮らしていて、洗剤がなくなりそうなことには女性のほうが先に気づくということがままあります。もし、そんなことが頻繁に起こり、なかなか互いに噛み合わないと感じるなどのケースが続くなら、男女間でセロトニンの量が違うことが原因のひとつかもしれません。でも、女性よりも早くいろいろなことに気づく男性だっていますよね。結局、男女の差はあるけれど、個人差のほうがより大きいのです。

── たしかに、女性だから不安が多く心配性であるとは言い切れないですよね。性別の差より個人差のほうが大きいということを、もう少し説明していただけますか。

身長差を考えるとわかりやすいのではないでしょうか。統計を取ると、日本の成人男性の平均身長は172センチで、女性の平均身長は158センチ。平均値では明らかに男女差があるのですが、女性の平均値よりずっと背の低い男性もいれば、きわめて背の高い女性もいる。統計上は性別による有意な差があるけれど、そのことによってふたつのグループにスパッと分けられるわけではない、というのが科学の見解です。

とはいえ人間は、男性、女性といったカテゴリーに分けてあれこれいうのが好きな動物。その楽しみはあってよいと思うのですが、そこで生じる困ったことは「ステレオタイプ脅威」というものです。

(以下、項目のみ記載)

「無意識に刷り込まれるメッセージ。」
「“女性だから地図が読めない”のは、思い込みのせい?」
「カテゴリーにはまらなければならない、という“呪い”。」
「性別という枠をはずして、自分の本音を観察する。」

「VOGUE」 2020年12月26日
https://www.vogue.co.jp/lifestyle/article/the-heart-knows-gender-free

中野信子(Nobuko Nakano)
東日本国際大学特任教授、脳科学者、医学博士。東京大学大学院 医学系研究科 脳神経医学専攻 博士課程修了後、フランス原子力庁 サクレー研究所勤務。現在はテレビ番組のコメンテーターとしても活躍中。著書は『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)、『パンデミックの文明論』(ヤマザキマリとの共著。文春新書)など多数。


〇「「男性脳」「女性脳」に根拠はあるか 性差より個人差」

(40年前の、わずか14人のデータに基づいた説)
―― 世の中では「男性脳」「女性脳」という言葉が人気です。「男性は脳が~~だから○○が得意」「女性は脳が~~だから△△を好む」といった説は、企業研修などにも応用され、「性別による脳の違いを理解してコミュニケーションを取ることが重要」などのアドバイスがされるケースもあります。

こうした「男性脳」「女性脳」という考え方を紹介している本の中には、最新の研究成果を反映していない非科学的なものが少なくありません。
男女の脳の違いを示す根拠として「左右の脳をつなぐ脳梁(のうりょう)の太さに差があり、女性のほうが太い」という研究結果がしばしば引用されますが、これは今から約40年も前の1982年に、男性9人、女性5人という限られた数の解剖データを元に書かれたものです(*1)。この見解を否定する研究結果も複数出ており、今も信じている研究者は少ないと思います。

―― 原始時代にまで遡り、「古来、男性は狩りを、女性は採集と子育てをしていた。だから脳や遺伝子が~~である」といった説を聞くこともあります。

それも確かとは言い切れません。昨年、米国の考古学の研究チームにより、9000年前の米大陸では大型動物ハンターの30~50%が女性だったという可能性が示されました(*2)。「男性は狩り、女性は採集と育児」という役割分担は、研究者による後付けだった可能性もあるのです。
ほかにも、「男性よりも女性のほうが会話を好む」という言説が一般的には信じられていますが、科学的な根拠を伴っていません。2007年に米国の科学者チームが発表した研究結果によれば、成人が1日に使う単語数の平均は約1万6000語であり、男女で統計的な差は見られず、むしろ個人差が非常に大きかったといいます(*3)。
また、「男女差がない」という研究結果は、「男女差がある」という結果に比べて発表されにくく、注目もされにくいというのが現状です。

―― では、男女の脳に「差はない」のでしょうか?

(わずかな男女差を上回る、大きな「個人差」がある)
いいえ、「差がない」というわけではありません。平均値を見れば、男女の脳や能力・思考には差が見られます。しかし、脳は男女による差よりも、個人による差のほうがとても大きいのです。以下の図を見てください。(以下省略)

(以下、項目のみ記載)

(MRIを用いても「男性脳」「女性脳」は見つからず)
(大人になってからでも脳は「変わる」)
(「男子は後から伸びる」は本当か)

「日経xwoman」 2022/6/3 (日経xwoman 2021年12月8日の記事を再構成)
https://style.nikkei.com/article/DGXZQOLM276XJ0X20C22A5000000/

四本裕子(よつもと・ゆうこ)
東京大学大学院総合文化研究科 教授
東京大学卒業後、米国ブランダイス大学大学院でPh.D.を取得。ボストン大学およびハーバード大学医学部付属マサチューセッツ総合病院リサーチフェロー、慶応大学特任准教授を経て、2012年東京大学准教授、2022年4月より現職。専門は認知神経科学、知覚心理学。

(考察)

これらの意見について共通するのは、「男性脳」「女性脳」という区分けを否定しているものであり、脳に性差はあるということは認めつつも、「脳の性差」よりも「個人差」の方が大きいということ。
また、四本先生の否定的意見にしても、「サンプル数が少ない」「否定的な研究結果も複数ある」「確かとは言い切れない」などと言うものである。

従ってこれらの意見は、ここで考察している内容を、(事実として認められている事柄は言うまでもなく)間違っていると頭から否定しているものではないと言える。


(追記)・・脳の性差についての否定的意見の追加

〇「科学で分かる男と女の心と脳」(麻生一枝氏の著書)

[左右の脳をつなぐ脳梁の性差]

1980年代、脳梁後部の膨大部と呼ばれる部分が、女では男より厚いという研究結果が発表された。
それ以来、さまざまな解釈が一般向けの本や雑誌に登場しているのだが、とにかく行き過ぎとしか思えない断言のオンパレードだ。

・女の脳では脳梁膨大部が厚く左右の脳の連絡がいいので、視覚情報や聴覚情報がすばやく交換される。だから女は男より人や物の小さな変化に気づくのがうまい。
・女の脳では脳梁膨大部が厚く左右の脳の連絡がいいので、何かをするとき女は両方の脳を使う。一方、左右の脳の連絡が悪い男は、左右どちらか一方の脳に頼る。
・女の脳では脳梁膨大部が厚く左右の脳の連絡がいいので、多くの情報を素早く交換できる。しかし膨大部が薄い男の脳ではそれができない。だから男は1つのことに集中しやすく、女はいくつものことをこなすのが得意だ。

こういった説明を聞いたら要注意。こう言い切れるだけの科学的根拠はない。

実際には、脳梁の性差の意味は推測の域をでていない。それどころか脳梁に性差があるかどうかすら疑問視されている。いまも次々と論文が発表されているが、脳梁の性差の有無について決着はついていない。

(サイエンス・アイ新書 2010/03/25)

麻生一枝
成蹊大学理工学部講師 動物生態学、動物行動学
2011年10月より、長浜バイオ大学英語専任准教授

(考察)

麻生一枝氏は、女性の特性である以下のことを全て脳梁膨大部に関連付けて、そのように言い切れるだけの科学的根拠はないとしているが、ここでの疑問点(問題点)は、何故脳梁の膨大部に限定しているのかということ。(加えて脳梁の性差についても疑問視している)

「人や物の小さな変化に気づくのがうまい」
「何かをするとき女は両方の脳を使う」
「女はいくつものことをこなすのが得意だ」

しかし脳梁の性差については女性の方が男性より大きい(太い)ことは既に実証されている。
脳梁膨大部に限定しても、女性の方が男性より太く丸く膨らんでいることがスキャンした画像などで数多く示されている。

著者もこのようなことは分かっているはずで、何故この箇所がこのような表現になったのかは分からないが、この部分が引っ掛かったものの、その他については多くの内外の論文やデータなどを参照して科学的根拠も示され、簡潔に纏められているので入門書としては参考になる本だと思う。

(ビーズ夫妻の著書では脳梁の違いだけで結論付けている訳ではなく、MRI画像による実際の脳の活動領域も検証して総合的に判断している。)

 

(参考)

*「右脳と左脳」(右脳と左脳の話が出たので、その機能についても触れておく)

右脳と左脳の機能については一般的に次のように言われている。

右脳: 直観的、総合的(全体的)、芸術性が高い、クリエイティブ
左脳: 論理的、分析的(解剖的)、言葉を使った思考、数学的思考

しかし、このように区分することについてはほとんどの専門家は否定している。

(*)
[右脳は直観的で、左脳は論理的?](麻生一枝氏の著書より抜粋)

右脳と左脳が、ある程度作業分担をしているのは確かだ。
少なくとも右利きの男性に関する限り、声を出して話すという機能に関連した部分は左脳に偏っているし、空間認識に関連した部分は右脳に偏る傾向にある。

現在少なくとも専門書では、このように単純化した右脳・左脳論は登場しない。
過去の研究を吟味した総説論文でも、直観的・論理的と言った相対する2つの概念で左右の脳を特徴づけることには懐疑的だ。

(*)
[右脳神話」はなぜ生まれたか?](中野信子氏のネット記事より抜粋)
https://logmi.jp/business/articles/322664

(“右脳神話”が生まれた背景)

ロジャー・スペリーという人が、ノーベル医学生理学賞を取りました。脳梁を切断した患者さんを被験者として、左脳右脳の機能の差が調べられていったんです。

(スライドを指して)例えば、こういったNavon課題というものがあるんですが、この図形、おおまかに見るとHの字ですよね。H型に並んだ小さいAの字が見えると思いますが、これを、右脳が損傷している人と、左脳が損傷している人、それぞれに見せます。

見せるとなにが起きるか。左半球が損傷している人は、この小さいAが認識できないんです。「なにが見えますか?」と聞くと、大きいHの字を書きます。一方で、右が損傷している人は、小さいAがまとまってこの大きなHのかたちになっていることを認識することができません。小さいAの字を紙全体にバラバラに書くんです。

不思議ですよね。それぞれ見ている階層が違うのです。見える解像度が違う。要するに、処理する情報の、空間解像度が左右で異なるということです。

(右脳と左脳が担当する役割の違い)

左右の機能分化。右と左では担当する機能が確かに異なります。
脳を持っていて、左右にわかれている。左右にわかれていることにはやっぱり理由がなくはないのであって、魚類、両生類、鳥類にもこうした機能分化があります。
右脳は全体視をする。全体を見て予期しない事態への対応をします。天敵を回避するためにそういう機能があるんだろうと考えられている。
一方で、左脳はなにをしているのか。部分視、中心視。注意を向けたところの情報を解像度高く処理するということをします。

(*)
[右脳型?左脳型? でもそれには科学的な根拠はない!?](山本恵一氏のネット記事より抜粋)
https://start.jword.jp/magazine/detail/3367

左半球と右半球とをつないでいる「脳梁」を、手術などによって切断し、左右の脳が切り離された状態が「分離脳」です。
もともと、病気の発作を軽減するための手術法でしたが、別の深刻な影響を与えてしまいました。
それは、分離された脳がおのおの独立したふるまいを始めたことです。
たとえば、一方の手がズボンを下げようとしているのに、もう一方は上げようとする、といった具合です。
あるいは、左目に絵を見せても見えるだけで、それが何かと認識できないこともわかりました。
これにより、左右の脳はそれぞれ分化された機能は持ってはいるものの、別々に働いているのではない、
そして、両方が統合されてはじめて、物事を理解するという役割を果たす、ということが明らかになってきました。
すなわち、複雑な絵の鑑賞や、微妙な音色の聞き分けなどは、左右の脳の相互連携により理解にいたるということです。

(*)
[左脳と右脳本当の役割](日経サイエンス 1998年10月号)
https://www.nikkei-science.com/page/magazine/9810/sano-uno.html

ヒトの左脳と右脳をつなぐ連絡橋である脳梁が切断された「分離脳」の研究から,左右の脳の違いがどのように生まれてきたかがわかってきた。左脳は,外の世界で起きた出来事をつじつまの合う物語に仕上げる解釈機能を獲得,言語や会話の能力につなげたが,反対に本来もっていたいくつかの能力を失った。左右の脳の機能分化は,進化の過程で,限られた脳の容積を生かすために,すでにある能力を右脳に残し,左脳に新しい能力を割り当てるために古い能力の一部を捨ててたために起きたと考えられる。

(考察)

右脳と左脳についての問題点は、「右脳型・左脳型」或いは「右脳は直感的で左脳は論理的」というように、2分化して決めつけることにある。
右脳と左脳の機能の違い、作業分担については誰もが認めており、反論しているのはこの断定的な区分に対してである。
つまり右脳と左脳で機能的な明確な区分はなく、何か作業を行う時はどちらの脳も連携して働いており、作業の内容によって左右どちらの脳がより働いているかの違いはあるということ。

(ビーズ夫妻の著書でも、左右の脳の機能の一律的な区分はしておらず、MRI画像の脳の活動領域の違いを検証して、男女の左右の脳の働き方の違い、そして男女それぞれの得意分野の判断をしている。)

 

 


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