
未解明だった数学の超難問「ABC予想」を証明したとする望月新一・京都大数理解析研究所教授(51)の論文が、同所が編集する数学専門誌に掲載されることが決まった。査読(論文の内容チェック)に8年かかったが、その正しさが認められることになった。「フェルマーの最終定理」(1994年解決)や「ポアンカレ予想」(2006年解決)と並ぶ。(毎日新聞記事から)
ABC予想の論文4編を、インターネット上で公開し、既存の数学が存立する枠組み(宇宙)を複数考えるという構想で整数の深い性質をとらえ得るほど十分な深さを持った理論であることを示している。
宇宙際タイヒミューラー(IUT)理論は全く新しい視点と、整数の足し算とかけ算の関係についての深い理解に根差している。今世紀、数学界で得られたいかなる業績より数段上の成果。
とまあ、形容詞が並ぶがどうも取り付く島のないほどで数学者でも8年かかるほどだから相当なもんだろう。命題すら素人には理解不能である。
ABC予想とは1985年に欧州の数学者が提示した整数論の問題。「a+b=c」となる互いに素な(1以外に共通の約数を持たない)正の整数a、bとその和cについて、それぞれの互いに異なる素因数の積(d)を求める。このとき「c>dの1+ε乗(εは正の実数)」となるようなa、b、cの組は「たかだか有限個しか存在しない」とする予想。
つまり命題や背景はさっぱり理解不能だが、この条件に合う解が「無限には存在しない」と言っている。そのことは次の説明ではなんとか理解できる。
具体的にa=1、b=8で考えると、aとbの和は「1+8=9(c)」となる。次に、b=8は「2×2×2」と素因数分解できるので素因数は2。同様にc=9は「3×3」で素因数は3となる。aは1なので素因数はない。すると、a、b、cそれぞれの素因数の積は「2×3=6」となる。この場合、和であるc=9と、積である6を比べると和が積より大きい。
だが、実は、無数にあるa、b、cの組み合わせを試すと、ほとんどで、積が和より大きくなる。ABC予想は和が積より大きくなるのはとても珍しい、ということを主張している。https://www.asahi.com/articles/ASN424TFLN30ULBJ00W.html?iref=pc_rellink_02
さて言いたいことはここからだが、この証明はいかにコンピュータの力をかりてもAIの力をかりても人の脳以外では不可能であること示しているのではないか。
コンピュータの力をかりてこれを証明するとすれば片っ端から上記の計算をして和が積より大きくなるケースを探ればよい。しかしどこまで行ってもそのケースが最後で次が絶対に見つからないという保証はない。チューリングが指摘したコンピュータの限界であり、つまりAIの限界だ。
AIは無限がからむと途端に限界を示す。このことはシンギュラリティーの未来にも限界があることを示している。シンギュラリティーの明るい未来とその限界を知っておくことは極めて重要なことと思われる。