昨日、親父を棺の中に入れた。
母がぼくと妹に、何を着せたらいいかと個別に聞いたところ、母の意見も入れて満場一致でスーツということになった。(有効投票数3票)
棺の中に入れる前に、湯かんというものをして体を清めた後、着せたい服を着せるわけであるが、もちろん遺族がやるわけではない。
それ専門のプロがやるのだ。
「遺体の体を拭いて、固まった体に服を着せ師」とでもいうのだろうか。
この人が(今回来てくれた人は女性だった)、親父を拭いて、服を着せてくれたわけだが、その手際に驚きである。
親父はパジャマを着て、その上に薄いタオルケットをかけていた。
だから順序としてはパジャマを脱がしてから、スーツを着る、という流れになるのである。
その時に、タオルケットの下で、全てを手作業で行うのだ。
どういうことかというと、タオルケットをかけたままパジャマを脱がせた後に、ぼくらに親父の肌を見せないようにスーツをまたタオルケットの下で手探りで着せる。
言葉じゃわかりづらいだろうが、まあ相当すごかった。
こんな機会は絶対無いほうがいいが、もしあったなら、是非見ておいたほうがいい。
なので、ぼくは親父がスーツに身を包んだ姿を見たとき、「よかったねぇ、スーツを着れて」と思うより先に、不謹慎と思われるかもしれないが、「すげぇ!」と思ったのだ。
その後、その人がメイクもしてくれて、久しぶりにパリッとスーツを着た親父は、やはりまだ死ぬには若く見えた。
やっぱりもう少し生きて、仕事をさせてあげたかったと思う。
ところで、この「着せ師」であるが、どういう経路でこの職業に就いたのかが、とても気になる。
どこぞに「着せ師」専門学校とやらがあるのだろうか。
また、一朝一夕で出来る仕事ではない(とは思う)ので、バイトというわけにはいかないだろう。
つまり、「この仕事をやりたい」という明確な意思の元にどこぞの何やらで修行を積んだことになる。
一体、どんな人がこの職業に就こうと思ったのだろうか。
普通に就職を考える時に一般的ではない職業であることは間違いない。
もしかしたら一子相伝だったり、伝統的な職業なのかもしれない。(ほんとにそうか?)
まあ何にせよ、とてもすごい職業だった。
明日は通夜だ。
親父は昼過ぎに家を出る。
まだ実感がないだけなのかもしれないが、悲しいというよりも、よく頑張ったねと笑って送り出せそうな気がする。
みんなからのメール、電話、全部ありがとうな。
俺と面識ない人からの言葉も聞いています。
明日、明後日、来てくれる人はもちろん、来れない人も、みんなの気持ちは届いてます。
上手い言葉が見つからないが、ホントに感謝しているよ。
ありがとう。
明日は、母がたぶん泣いて何も言えないので、ぼくが喪主代理としてしゃべります。
緊張せずにちゃんとしゃべれたらいいが。
まあ、いつも通りのぼくならば、大丈夫だろ。
親父のためにも、ぼくはきちっと締めなければならないしな。
それじゃあ、また明日、笑顔で。
バイトのことは気にすんな。何とかなってるから。お前がいないと少し静かになったけどな。
告別式、しっかりがんばって来い!
おかげで、告別式ちゃんと終われたよ!