麻乃はいつも 風のように走った

引退した競走馬を引き取りました。


脚を壊した麻乃は
もう二度と走れません

もう1頭の「あさの」

2016-11-07 09:29:26 | 麻乃

1年前位からかな?

競馬の馬達の事をもっと知りたくなって、「馬、ブログ」で検索して馬関係のお仕事をしてる方々のブログを読んだりしていた。

その中に元厩務員の女性が書いたブログがあって、その内容が辛かった。

仮にA子さんとしよう。

A子さんはもとより馬の仕事に就きたくて、それなら全部を体験してみようと

生産牧場(仔馬を生ませる所。1才までは母馬とここで過ごす)

育成牧場(人に馴れさせたり、鞍を着けたりと競走馬としての基礎を作って行く)

乗馬クラブ(一般の方が趣味などで馬に乗る所。元競走馬も沢山いる)

厩舎(競走馬を馬主から預かり、レースに備え管理、調教する所)

と働いてみた。

 

その結果、彼女は「馬が幸せなのは生産牧場にいる時だけ」と感じたそうだ。

A子さんの最後の仕事は厩務員だった。

初めて担当したのが「あさの」と言う名前の2歳の牝馬だった。

「あさの」は良くも悪くも天真爛漫でA子さんは右往左往しながらも、初めて担当馬を持てたのが嬉しく「あさの」を可愛がり、毎朝放牧場に連れていったりして信頼関係を深めていった。

そんなある日、「ゲート試験」の日が来た。

デビュー前の競走馬には「ゲート試験」と言うのがあって、ゲートにすんなり入り、大人しく立っていられ、ゲートが開いたらダッシュで出る。と言う試験に合格しないと競走馬としてデビューできない。

デビュー出来ないと言う事は殆どの場合、「死」を意味する。誰かが引き取ってくれない限り、お肉屋さんのトラックに乗るしかないのだ。

「あさの」は1回目のゲート試験に受からなかった。。。

A子さんは焦った。受からなければ、厳しい運命が待っているのだ。それは、なんとしてでも避けたかった。

次の朝からA子さんと「あさの」の2人(1人と1頭?)の秘密の訓練が始まった。A子さんはまだ誰も起きてこない早朝、「あさの」を連れ出し、ニンジンなどおやつを与えて特訓した。その成果があって「あさの」はゲートに入れるようになった。

しかし、、。

A子さんも初めて馬を担当したので、未熟だった。ニンジンなどおやつで調教したのがまずかった。2回目の試験の日。調教師がゲートに入れようとしても「あさの」は言う事を聞かず、ゲート試験には受からなかった。

そう、、「あさの」はA子さんの言う事しか聞かなくなっていた。でも競走馬と言うのは誰の言うことでも人の指示に従うようでなければダメとされる。

馬主は「あさの」を諦め、とうとう「あさの」が出されてしまう朝が来た。

「お前が「あさの」を連れて行け。」と調教師はA子さんに告げた。

競走馬には「健康手帳」と言うのがあって、馬が移動する時には必ず付いて回る。それには両親の名前や血統、生まれた時からの色々な病気や治療など全ての事が書いてある。

馬が移動する時、次の引き取り手がある場合は馬と共にその「健康手帳」を渡す事になっている。

「これは置いてけ!」と言う調教師の手から「あさの」の「健康手帳」をひったくるように取ってA子さんは「あさの」を引いて歩き出した。

毎朝「あさの」と歩いた長い長い道。「あさの」はいつもの大好きな放牧場に行くんだと上機嫌でA子さんに甘えて寄り添ってくる。

A子さんは堪らず、声を出して号泣した。今日ばかりはこの道がどこまでも、どこまでも永遠に続いて欲しいと願った。「あさの」はいつもと違うA子さんの様子に戸惑いながらもやはり嬉しそうだった。

とうとうトラックに着いた。A子さんは万感の思いを込めて「健康手帳」を差し出した。これを受け取ってもらえたら「あさの」は何処かで生きられる。

でも、A子さんの願いもむなしく「それはいいよ。」と運転手は言った。

いよいよ「あさの」をトラックに積み込む時になった。この時になって初めて「あさの」は異変に気づき激しく抵抗した。トラックには他の厩舎から出された馬達が何頭も繋がれていた。

「わしらじゃ無理そうだ。あんたの言う事なら聞くかもしれないから、あんたが乗せてくれないか?」と言われA子さんが引手を取った。

A子さんが先に立って誘導すると「あさの」はすんなりトラックに乗った。

扉が閉められ、トラックが出発した。

遠ざかるトラックの中で「あさの」だけがいつまでも、いつまでも鳴いていた。

その時の辛さが忘れられず、A子さんは厩務員を辞めた。。。

と言うようなブログでした。

私はそのA子さんのブログに衝撃を受け、ずっと心に残っていて。。

だから、「麻乃」を引き取った時、そのもう1頭の「あさの」の分も幸せになって欲しいとの思いもあり「麻乃」と言う名前をつけました。

 

 

☆現役時代の「麻乃」

顔がりりしいやっぱ現役だね。練習もレースも頑張ったよね

 

 

☆今の「麻乃」

とにかく何か食べてれば幸せなあーちゃん

 

と言う訳で。。私、がんばります 

 

まかせろ!!あーちゃん 

 

 

 

 

 

 

 



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8 コメント

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こんばんは (koichiw)
2016-11-07 20:15:11
立冬ですね。
りっとうを変換すると第一に
「栗東」が出てきます(笑)。
栗東の近くに住んでいます。
返信する
こちらこそよろしく (まちみち)
2016-11-08 00:45:45
この度は、自分(一人称)のブログに読者登録してくださって、どうもありがとうございます。昨朝、このお話を読んですぐに読者登録させていただきました。切なくて悲しい話でしたが、仕方ないと言えばそれまでなんだよなあ・・・。元競走馬を引き取られたなんて、自分(一人称)のような奈良の町中で住んでいるような物では考えられない話ですが、命には形の大小も値段が高い安いもありません、「麻乃」さんをどうぞ大切にしてあげてください。また寄らせていただきますのでよろしくお願いします。       まちみち
返信する
有難うございます (麻乃)
2016-11-08 02:51:10
<koichiwさん>

コメント有難うございます。

りっとう変換で栗東(笑)

栗東の近くにお住まいとは羨ましい
返信する
有難うございます (麻乃)
2016-11-08 03:06:20
<まちみちさん>

こちらこそご登録頂きまして有難うございます。

そうなんですよ。本当にこの問題を突き詰めて行くと、じゃ猫は?犬は?

更にいつもあちこちで話題にのぼる牛や豚を食べるのはどうなの?って方に話が発展して行ってしまうんですね。

私も随分悩みましたが、、。目の前の出来る事をやって行こうと決めました。

これからも麻乃に会いに来てやってください。

宜しくお願いいたします
返信する
麻乃さん、こんばんは! (Taka ちゃん)
2018-07-19 00:00:29
このブログにお邪魔して以来、何故麻乃さんが引退馬を女手一つで、お世話されるようになったのか、気にかかっていて、足跡辿りをして直ぐに、このページに。。。涙しました。
プチギャンブラーとして、鼻っ柱を思い切り折られた感じです。
これからは心して遊びます。
麻乃さんは、これまで一体何頭引き取られたのでしょうか。
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有難うございます。 (麻乃)
2018-07-19 07:02:21
〈Takaちゃんさん〉

こんな過去の記事まで読んでくださり
有難うございます。

本当に私もこの厩務員さんのブログを
読んだ時は衝撃でした。
その時はまだまさか自分が
将来馬を引き取る事になるとは
思ってもいなかったので、
レースに出る1番人気の無い
馬に賭けて応援してました。

麻乃を引き取った時に
麻乃を担当してた厩務員さんが
「競走馬は現役で走っている時が華。
現役で走っている時が一番大切にされる。」
と言っていました。
その子達を支えているのは
Takaさん達お客さんです。

だからこれからもずっと
一頭でも多く応援してあげてくださいネ。
それが今、走っている馬達にとって
一番嬉しい事だと思います。

私が引き取った馬はホウキで3頭目です。
この子が最後の子になると思いますが、
天命を全う出来なかった沢山の競走馬達の分まで
全力で幸せにしてあげたいと思っていますので、
これからも応援よろしくです。^_^
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Unknown (Taka ちゃん)
2019-04-07 05:05:59
もう一頭のア~ちゃんストーリー、切なくもあり感動さえ覚えました!
生きとし生けるものすべてが好きな自分。
最初は面白くて、。。。今ではやっぱり「愛」なのかな!  
私自身が二度も死線を越えた人だから、分かるんですよね!
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有難うございます (麻乃)
2019-04-07 10:28:55
〈taka ちゃんさん〉

私も2度死線を彷徨いました
あれから確実に人生観が変わりました。

生き物全てにおいて愛しさが増したように
思います。
残された人生を生き物の為に頑張ろうと決心し、今はそれが出来ていて幸せです。
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