まんだの読書日記

小説の感想メイン。た~まにビーズやペパクラも。
放置しっぱなしで申し訳ありませんでした。ただいま再開準備中です。

「ステイ・ゴールド」野沢尚

2006-06-29 12:12:02 | 和書
◆『ステイ・ゴールド』 野沢尚 / 幻冬舎文庫

▽あらすじ

蓼科高原への修学旅行中、ひとり休んでいた生徒、奈美が自殺した。
それを知ってしまった彼女の親友、麗子・真琴・理沙の3人は黙って宿舎を抜け出す。
「ずーっと川をのぼったところ、その最初の一滴をみんなで飲めば友情は永遠になる」
いつか奈美が教えてくれた伝説の雫を求めて分水嶺へと向かうために。

▽コメント

宝物を目指して冒険した末、手に入れた本当の宝は仲間との絆だった…
という話はよくあるけれど、最初から「永遠の友情」という形の無い物を求めていくというのは、やはり女の子ならではですね。

ともに冒険したひとり・麗子が大学の卒業制作で自伝的小説を書くという形で、小学生時代の出来事を振り返ります。
S・キングの『ザ・ボディ』に挑戦してのこの形式ということですが、この前置き部分がやや演出過剰でうるさい感じも。

何も言わずに、ひとりで死んでいった奈美。
3人は三様にどこか奈美を神聖視し、その奈美と居られることに誇りのようなものを感じていた。
最初はそんな奈美に置いていかれ、縋り付きたい気持ちで追っていった旅立ちだったのかもしれません。
しかし大きな回り道をする中で、自分という存在を、奈美という存在を確認し、最後に水源の地で決別を告げます。

視界いっぱいに広がる紅葉に彩られた山々、きらめく川辺で過ごす休息のひととき、突然襲いくる嵐、明かされる絶望的な真実、そして迎える最後の瞬間――
短いお話の中に、そんな劇的で、きらきらした一瞬一瞬がぎゅっと凝縮されているのを感じます。
3人をそっと見守る2人の先生、それから森の番人のようなおじいさんもとても温かい。

センチメンタルに過ぎると言えば過ぎる、そんなお話。
しかしこの本を読む内に、あなたも私も、子どもの頃のきらめくあの一瞬を思い出すのではないでしょうか。