◆『人魚の鱗 Short Fantasy Stories ファンタジーの宝石箱 vol.1』
産経新聞文化部編 / ぜんにち出版
前回に引き続き『人魚の鱗』から第二章の紹介です。
※各章の紹介はこちらのページで見ることができます。
◇第Ⅰ章 いつもとなりに君がいる
◇第Ⅲ章 秘密の小部屋
◇第Ⅳ章 いつかみた風景
◇第Ⅱ章 きらきら家族◇
▽アサガオが枯れた / 松原由美子
朝もちゃんと起きない、ラジオ体操にも行かない。夏休みをだらだら過ごす妹の可奈子。
でもアサガオが枯れて観察日記が書けなくなったらかわいそう、とお兄ちゃんはこっそりお水をあげますが…。
なんだかんだいって下の子には甘い、可愛らしい家族のお話。
私自身も三人兄弟妹の末っ子なのでよくわかります。
それにしても可奈子ちゃん、小学一年生にしてなかなかいい根性してるなぁと感心するやら呆れるやら。
▽通知表 / 野村一秋
ぼくが差し出したまっしろな通知表を見て、お父さんはびっくり。
これは親がつける通知表。親がどれだけ子どものことを知っているのかを試すんです。
うんうんうなりながら通知表をつけるお父さんがとっても微笑ましい。
「ええい、おまけで3だ」(3は三段階で一番良い成績)なんて言葉には思わず笑ってしまいました。
生徒がつける先生の通知表というのは、ウチの大学でもやっていますね。
▽僕の犬 / 川口マーン惠美
パパとママは、僕が三年生のときに離婚していた。
僕は犬を飼いたいのに、それを言うといつもママは怒ってばかりで…。
この作品集の中では複雑な問題を扱っているなあという印象を受けますが、子どもの素直な言葉が、どこかほっとさせてくれます。
▽おかあさんのホクロ / 宮川ひろ
おかあさんのあごの下にある、小さなホクロ。
だれにでもあると思っていたそれが自分にはないと知ったときは、とてもショックだった――
かつて母親とのつながりに疑いを抱かせた小さなホクロが、後には妹とのつながりを確信させるものとなった。
そうした変化が上手くまとまっていると思います。
▽星とりの夜 / 小沢章友
お父さんに誘われて「星とり」に行ったさとし。
お母さんの病気が治るように、一緒に流れ星にお願いします。
お父さんと少年、だからこそのロマンあふれるお話ですね。
ちなみに星の鳴き声は「ホーシホシホシ、ホーシホシホシ」なんだとか。
▽お兄ちゃんごめんね / 浜野卓也
おるすばん中、お兄ちゃんとケンカをしてしまった秋夫くん。
それを言い訳に、お兄ちゃんの分のおやつにまで手を出してしまいます。
この作品集の中でも特に印象深かったお話のひとつ。
ラストのお兄ちゃんがめちゃめちゃカッコ良いです!
秋夫くんが胸いっぱいに感じる罪悪感とお兄ちゃんの優しさが伝わってきて、じわぁっと涙していまいました。
▽キュウリくん / 今江祥智
わけあってじいちゃんと二人暮らしになったキュウリくんこと信一くん。
ビストロ・シェフのじいちゃんから料理の作り方を教わります。
子どもは、私たちが思っている以上に、大人のことをよく見ているし、感じているんだなって思いました。
キュウリくんのじいちゃんやお父さんお母さんは、きっとそれをわかっているんでしょうね。
▽ペチュニアビヤホールはこわいよ / 松谷みよ子
おばあちゃんがペチュニアの鉢の下に開店した、ミニチュアビヤホール。
それは、お花を枯らすなめくじ退治のためのビヤホールだったのです。
これもかなり気に入っているお話です。
こわい、たしかにこわいけれど、なめくじと戦うおばあちゃんはとっても可愛らしいんです。
最後の1行は、新聞掲載の作品ならではですね。新聞を手に「お父さんちょっとこれ見てよ」なんて苦笑するお母さんの姿が目に浮かぶようです。
◇公園 / 木坂 涼
ごくごくたまにだけど、お母さんはひとりで公園へいく。
わたしもお父さんもいるのに、なぜ?わたしはお父さんにたずねます。
なんとなく一人になりたい、なんとなくいつもと違う景色を見たい。ふとそんな気分になる瞬間。
山川方夫の短編「待っている女」に似ているなあという印象を受けました。(ってどれだけの人に通じるんだろう…)
▽パッチワーク / 笹倉 明
「弟か妹がほしいな」みきちゃんはいつもお願いしていました。
そんなある日、お母さんが弟のかわりにテディベアを作ってくれました。
お下がりの服のパッチワークで作るテディベア。とても素敵です。
いつか自分も子どもができたら、こんな風にやってあげたいですね。
▽ケーキをたべましょう / みやもとただお
フーちゃんが学校から帰るとテーブルにケーキがひとつ、お母さんはいません。
犬のゴンやとなりのネコ、ご近所のカラスが「食べちゃおう」と皆で誘惑してきます。
おしりムリムリ、しっぽピンピン、ペロローっと舐める、と独特の擬態語が面白いです。
「だから……ネ」という誘惑の台詞もなんとも悩ましげ(笑)
▽おまじない / 内海隆一郎 (※「隆」は正しくは旧字体です)
いっつも男の子たちにいじわるをされて泣いてしまうトモミ。
なんとか涙のこぼれない方法は…と相談すると、おばあちゃんがとっておきのおまじないを教えてくれました。
トモミは泣き虫だったけれど、情けない、なんとかそんな自分を変えようと思える、大事な強さを持っていたんじゃないかなぁと思います。
だからこそ、おばあちゃんのおまじないも効いたんでしょうね。
産経新聞文化部編 / ぜんにち出版
前回に引き続き『人魚の鱗』から第二章の紹介です。
※各章の紹介はこちらのページで見ることができます。
◇第Ⅰ章 いつもとなりに君がいる
◇第Ⅲ章 秘密の小部屋
◇第Ⅳ章 いつかみた風景
◇第Ⅱ章 きらきら家族◇
▽アサガオが枯れた / 松原由美子
朝もちゃんと起きない、ラジオ体操にも行かない。夏休みをだらだら過ごす妹の可奈子。
でもアサガオが枯れて観察日記が書けなくなったらかわいそう、とお兄ちゃんはこっそりお水をあげますが…。
なんだかんだいって下の子には甘い、可愛らしい家族のお話。
私自身も三人兄弟妹の末っ子なのでよくわかります。
それにしても可奈子ちゃん、小学一年生にしてなかなかいい根性してるなぁと感心するやら呆れるやら。
▽通知表 / 野村一秋
ぼくが差し出したまっしろな通知表を見て、お父さんはびっくり。
これは親がつける通知表。親がどれだけ子どものことを知っているのかを試すんです。
うんうんうなりながら通知表をつけるお父さんがとっても微笑ましい。
「ええい、おまけで3だ」(3は三段階で一番良い成績)なんて言葉には思わず笑ってしまいました。
生徒がつける先生の通知表というのは、ウチの大学でもやっていますね。
▽僕の犬 / 川口マーン惠美
パパとママは、僕が三年生のときに離婚していた。
僕は犬を飼いたいのに、それを言うといつもママは怒ってばかりで…。
この作品集の中では複雑な問題を扱っているなあという印象を受けますが、子どもの素直な言葉が、どこかほっとさせてくれます。
▽おかあさんのホクロ / 宮川ひろ
おかあさんのあごの下にある、小さなホクロ。
だれにでもあると思っていたそれが自分にはないと知ったときは、とてもショックだった――
かつて母親とのつながりに疑いを抱かせた小さなホクロが、後には妹とのつながりを確信させるものとなった。
そうした変化が上手くまとまっていると思います。
▽星とりの夜 / 小沢章友
お父さんに誘われて「星とり」に行ったさとし。
お母さんの病気が治るように、一緒に流れ星にお願いします。
お父さんと少年、だからこそのロマンあふれるお話ですね。
ちなみに星の鳴き声は「ホーシホシホシ、ホーシホシホシ」なんだとか。
▽お兄ちゃんごめんね / 浜野卓也
おるすばん中、お兄ちゃんとケンカをしてしまった秋夫くん。
それを言い訳に、お兄ちゃんの分のおやつにまで手を出してしまいます。
この作品集の中でも特に印象深かったお話のひとつ。
ラストのお兄ちゃんがめちゃめちゃカッコ良いです!
秋夫くんが胸いっぱいに感じる罪悪感とお兄ちゃんの優しさが伝わってきて、じわぁっと涙していまいました。
▽キュウリくん / 今江祥智
わけあってじいちゃんと二人暮らしになったキュウリくんこと信一くん。
ビストロ・シェフのじいちゃんから料理の作り方を教わります。
子どもは、私たちが思っている以上に、大人のことをよく見ているし、感じているんだなって思いました。
キュウリくんのじいちゃんやお父さんお母さんは、きっとそれをわかっているんでしょうね。
▽ペチュニアビヤホールはこわいよ / 松谷みよ子
おばあちゃんがペチュニアの鉢の下に開店した、ミニチュアビヤホール。
それは、お花を枯らすなめくじ退治のためのビヤホールだったのです。
これもかなり気に入っているお話です。
こわい、たしかにこわいけれど、なめくじと戦うおばあちゃんはとっても可愛らしいんです。
最後の1行は、新聞掲載の作品ならではですね。新聞を手に「お父さんちょっとこれ見てよ」なんて苦笑するお母さんの姿が目に浮かぶようです。
◇公園 / 木坂 涼
ごくごくたまにだけど、お母さんはひとりで公園へいく。
わたしもお父さんもいるのに、なぜ?わたしはお父さんにたずねます。
なんとなく一人になりたい、なんとなくいつもと違う景色を見たい。ふとそんな気分になる瞬間。
山川方夫の短編「待っている女」に似ているなあという印象を受けました。(ってどれだけの人に通じるんだろう…)
▽パッチワーク / 笹倉 明
「弟か妹がほしいな」みきちゃんはいつもお願いしていました。
そんなある日、お母さんが弟のかわりにテディベアを作ってくれました。
お下がりの服のパッチワークで作るテディベア。とても素敵です。
いつか自分も子どもができたら、こんな風にやってあげたいですね。
▽ケーキをたべましょう / みやもとただお
フーちゃんが学校から帰るとテーブルにケーキがひとつ、お母さんはいません。
犬のゴンやとなりのネコ、ご近所のカラスが「食べちゃおう」と皆で誘惑してきます。
おしりムリムリ、しっぽピンピン、ペロローっと舐める、と独特の擬態語が面白いです。
「だから……ネ」という誘惑の台詞もなんとも悩ましげ(笑)
▽おまじない / 内海隆一郎 (※「隆」は正しくは旧字体です)
いっつも男の子たちにいじわるをされて泣いてしまうトモミ。
なんとか涙のこぼれない方法は…と相談すると、おばあちゃんがとっておきのおまじないを教えてくれました。
トモミは泣き虫だったけれど、情けない、なんとかそんな自分を変えようと思える、大事な強さを持っていたんじゃないかなぁと思います。
だからこそ、おばあちゃんのおまじないも効いたんでしょうね。