まんだの読書日記

小説の感想メイン。た~まにビーズやペパクラも。
放置しっぱなしで申し訳ありませんでした。ただいま再開準備中です。

「人魚の鱗」Part 2

2005-09-29 16:30:21 | 和書
◆『人魚の鱗 Short Fantasy Stories ファンタジーの宝石箱 vol.1』
  産経新聞文化部編 / ぜんにち出版 

前回に引き続き『人魚の鱗』から第二章の紹介です。

※各章の紹介はこちらのページで見ることができます。
 ◇第Ⅰ章 いつもとなりに君がいる
 ◇第Ⅲ章 秘密の小部屋
 ◇第Ⅳ章 いつかみた風景


◇第Ⅱ章 きらきら家族◇

▽アサガオが枯れた / 松原由美子
朝もちゃんと起きない、ラジオ体操にも行かない。夏休みをだらだら過ごす妹の可奈子。
でもアサガオが枯れて観察日記が書けなくなったらかわいそう、とお兄ちゃんはこっそりお水をあげますが…。

なんだかんだいって下の子には甘い、可愛らしい家族のお話。
私自身も三人兄弟妹の末っ子なのでよくわかります。
それにしても可奈子ちゃん、小学一年生にしてなかなかいい根性してるなぁと感心するやら呆れるやら。

▽通知表 / 野村一秋
ぼくが差し出したまっしろな通知表を見て、お父さんはびっくり。
これは親がつける通知表。親がどれだけ子どものことを知っているのかを試すんです。

うんうんうなりながら通知表をつけるお父さんがとっても微笑ましい。
「ええい、おまけで3だ」(3は三段階で一番良い成績)なんて言葉には思わず笑ってしまいました。
生徒がつける先生の通知表というのは、ウチの大学でもやっていますね。

▽僕の犬 / 川口マーン惠美
パパとママは、僕が三年生のときに離婚していた。
僕は犬を飼いたいのに、それを言うといつもママは怒ってばかりで…。

この作品集の中では複雑な問題を扱っているなあという印象を受けますが、子どもの素直な言葉が、どこかほっとさせてくれます。

▽おかあさんのホクロ / 宮川ひろ
おかあさんのあごの下にある、小さなホクロ。
だれにでもあると思っていたそれが自分にはないと知ったときは、とてもショックだった――

かつて母親とのつながりに疑いを抱かせた小さなホクロが、後には妹とのつながりを確信させるものとなった。
そうした変化が上手くまとまっていると思います。

▽星とりの夜 / 小沢章友
お父さんに誘われて「星とり」に行ったさとし。
お母さんの病気が治るように、一緒に流れ星にお願いします。

お父さんと少年、だからこそのロマンあふれるお話ですね。
ちなみに星の鳴き声は「ホーシホシホシ、ホーシホシホシ」なんだとか。

▽お兄ちゃんごめんね / 浜野卓也
おるすばん中、お兄ちゃんとケンカをしてしまった秋夫くん。
それを言い訳に、お兄ちゃんの分のおやつにまで手を出してしまいます。

この作品集の中でも特に印象深かったお話のひとつ。
ラストのお兄ちゃんがめちゃめちゃカッコ良いです!
秋夫くんが胸いっぱいに感じる罪悪感とお兄ちゃんの優しさが伝わってきて、じわぁっと涙していまいました。

▽キュウリくん / 今江祥智
わけあってじいちゃんと二人暮らしになったキュウリくんこと信一くん。
ビストロ・シェフのじいちゃんから料理の作り方を教わります。

子どもは、私たちが思っている以上に、大人のことをよく見ているし、感じているんだなって思いました。
キュウリくんのじいちゃんやお父さんお母さんは、きっとそれをわかっているんでしょうね。

▽ペチュニアビヤホールはこわいよ / 松谷みよ子
おばあちゃんがペチュニアの鉢の下に開店した、ミニチュアビヤホール。
それは、お花を枯らすなめくじ退治のためのビヤホールだったのです。

これもかなり気に入っているお話です。
こわい、たしかにこわいけれど、なめくじと戦うおばあちゃんはとっても可愛らしいんです。
最後の1行は、新聞掲載の作品ならではですね。新聞を手に「お父さんちょっとこれ見てよ」なんて苦笑するお母さんの姿が目に浮かぶようです。

◇公園 / 木坂 涼
ごくごくたまにだけど、お母さんはひとりで公園へいく。
わたしもお父さんもいるのに、なぜ?わたしはお父さんにたずねます。

なんとなく一人になりたい、なんとなくいつもと違う景色を見たい。ふとそんな気分になる瞬間。
山川方夫の短編「待っている女」に似ているなあという印象を受けました。(ってどれだけの人に通じるんだろう…)

▽パッチワーク / 笹倉 明
「弟か妹がほしいな」みきちゃんはいつもお願いしていました。
そんなある日、お母さんが弟のかわりにテディベアを作ってくれました。

お下がりの服のパッチワークで作るテディベア。とても素敵です。
いつか自分も子どもができたら、こんな風にやってあげたいですね。

▽ケーキをたべましょう / みやもとただお
フーちゃんが学校から帰るとテーブルにケーキがひとつ、お母さんはいません。
犬のゴンやとなりのネコ、ご近所のカラスが「食べちゃおう」と皆で誘惑してきます。

おしりムリムリ、しっぽピンピン、ペロローっと舐める、と独特の擬態語が面白いです。
「だから……ネ」という誘惑の台詞もなんとも悩ましげ(笑)

▽おまじない / 内海隆一郎 (※「隆」は正しくは旧字体です)
いっつも男の子たちにいじわるをされて泣いてしまうトモミ。
なんとか涙のこぼれない方法は…と相談すると、おばあちゃんがとっておきのおまじないを教えてくれました。

トモミは泣き虫だったけれど、情けない、なんとかそんな自分を変えようと思える、大事な強さを持っていたんじゃないかなぁと思います。
だからこそ、おばあちゃんのおまじないも効いたんでしょうね。

「人魚の鱗」 Part 1

2005-09-25 21:17:02 | 和書
◆『人魚の鱗 Short Fantasy Stories ファンタジーの宝石箱 vol.1』
  産経新聞文化部編 / ぜんにち出版 
産経新聞の児童書コーナーに読み切りで連載されていたという童話集です。
綺麗な表紙とタイトル、豪華な作家陣に惹かれて買ってしまいました。
一話は原稿用紙3枚分ということでさらりと読めてしまいますが、どれも可愛らしく優しい雰囲気で、まさに宝石のようにきらきらとしたお話ばかりです。

141人の作家による150作品を四分冊にしたもので、第一巻であるこの『人魚の鱗』にはその内の46作品が収録されています。
各章10話前後で全四章。久しぶりの紹介ということで、少し長くなってしまいますが、リハビリも兼ねて章ごとに4回にわけてそれぞれの作品を紹介していきたいと思います。

ということで今回は第一章の紹介です。

※各章の紹介はこちらのページで見ることができます。
 ◇第Ⅱ章 きらきら家族
 ◇第Ⅲ章 秘密の小部屋
 ◇第Ⅳ章 いつかみた風景


◇第Ⅰ章 いつもとなりに君がいる◇

▽「このドア、キケン?」/ あさのあつこ
学校に行けば、いじめたくないのにいじめてしまう。ともやもや。
そんな稲垣くんは、空き地に捨てられた古いドアを見つけます。

いじめっこの視点で語られるというのが珍しいお話。
互いの良い所を認め合えるって、素敵なことだと思います。
母にすすめたところ「いい話すぎてつまらない」とバッサリ(^^;)


▽ でぶら / 姫野カオルコ
太っているから、でぶら。これがヒトミのあだ名だった。
さみしい、悲しい。そんな時に食べることを止められないヒトミのお話。

最初は姫野カオルコさんと童話というのはどうもイメージが結びつかなかったのですが、女性らしいテーマで、少し大人びた女の子の姿が描かれています。


▽ 信也とテツ / 香月日輪
信也は六歳、犬のテツは三歳。
なのに、年下のテツが兄貴ヅラをしているのが信也は気に入りません。

犬は人間より成長が早いから、テツは信也より体も大きくて力も強い。
でも兄貴だから威張っていいとか、そういうことじゃなくて、兄貴っていうのは、弟や妹、家族を“守る”ものなんですよね。
テツがまた、良い兄貴なんです。


▽ 千匹のオニが笑った / 河原潤子
クラスの男の子とケンカ。「オニ女」なんて言われて、いらいらいらいら。
そんな女の子のお話です。

男の子って、いつもは憎まれ口ばかりでも、ふいにすごく嬉しい言葉を言ってくれたりするんですよね。
何も考えずに素直に出てきた一言だってわかるから、余計に嬉しくて。
私自身も、そんな「嬉しかった言葉」を思い出しながら読んでいました。


▽ 朝起きて、ごはんを食べよう / 石井睦美
テストの偏差値とにらめっこ、塾の合間にマックの夕食。
そんな毎日がなぜか無性に頭にきて、2人の少年は塾を抜け出します。

私は塾も家庭教師も経験せずのほほんと過ごしてきたので実感がわかないのですが、最近の子どもたちには多いんでしょうね。
朝起きて、ごはんを食べて、いっぱい遊んで。子どもはそれで十分だと思うんだけどなぁ…。


▽ ばけニンゲンになったるぜ / 光丘真理
ニンゲンのマモルと、ネコのサブ。生まれたときからずっと一緒の兄弟だ。
マモルと入れ替わり「ばけニンゲン」になったサブは、マモルをいじめる少年に仕返しをします。

ネコのサブの視点で語られるのですが、「おいら」なんて口調もぴったり、生き生きしていてとっても面白いお話でした。
ネコとニンゲンながら、互いに助け合い信頼しあえる強い絆が感じられるのもいいですね。


▽ かんたとモンタ / 長谷川摂子
まだねない、とぐずるかんたは、毛布のモンタに「だいきらい」と言ってしまいます。
モンタは悲しくなって、新しい居場所を探しに行きますが…。

行く先々で拒否され、ふらふらさまよう毛布のモンタくんの姿がなんとも切ない。
最後はふんわりあたたかなラストです。


▽ ごめんね / 風野 潮
借りてた本を忘れたことが原因で大ゲンカになってしまったユカちゃんとわたし。
ずっと仲良しだったのに、口もきかず、顔も合わせず…戸惑う少女のお話。

わかっているのに「ごめんね」の一言がなかなか言い出せない。
意外なものが、そんな彼女の背中を押してくれます。


▽ ふたりのムック / 東野せい子
お引越しした咲季ちゃんと、ファクス文通を続けている真美ちゃん。
新しい小学校になかなかなじめない様子の咲季ちゃんが、とても心配です。

私はいつも引越ししていく方なので、最初どうしても前の居場所が恋しくなる気持ち、わかります。
そんな時、私も友だちにこんな心配をかけていたのかもしれないなぁと複雑な思いでした。


▽ ミナミさん / 川上弘美 
僕のうちの下宿人、ミナミさんはいつも布団の中にばかりいる。
ミナミさんの布団の横に座っているうちに、僕は眠くなってくる。

踏み込みすぎず、でも突き放すわけでもなく。
ミナミさんと僕の独特の距離感が、川上弘美さんらしいなぁと、なんともいえない心地好さを感じます。

お久しぶりです。

2005-09-22 09:35:08 | 日々のいろいろ
すみません、全く更新できないまま1ヶ月以上もたってしまいました…。
それでもいつも見に来て下さっていた皆さん、ありがとうございます

この間、自動車運転免許をとるため教習所に通っていたというのが主な理由です。
慣れないことも運転ともなると、気付かないうちに神経使っているモノですね(×_×;)
教習から帰ってくると、時間はあるのにぼ~っとしてしまうことが多くて、結局読書やパソコンにほとんど触れない日々でした。

が、なんとか無事に免許を取得
大学も始まって、生活も元のリズムに戻せそうです。

ブログの更新も本日再開です
徐々に更新を増やしていく予定ですので、あらためて、これからもよろしくお願いします♪