まんだの読書日記

小説の感想メイン。た~まにビーズやペパクラも。
放置しっぱなしで申し訳ありませんでした。ただいま再開準備中です。

多読 『Love by Design』

2004-10-31 00:33:20 | 洋書、翻訳
◆『Love by Desigh』 Kieran MacGovern
  Heinemann Guided Readers: ELEMENTARY level (総語数 10,800)

▽あらすじ

芸大の試験に落ちたトムは仕方なく図書館で働き始めるが、芸術家の夢を諦めきれず憂鬱な毎日を送っていた。
そんな中トムは、雨宿りのため図書館に訪れたリタという少女と恋に落ちる。
しかしある日、モデル志望のリタに一人の男が仕事を持ちかけてきた事から、2人の関係が崩れ始めて…。

▽コメント

お騒がせな2人がいろいろと周りを巻き込んだ末にハッピーエンドを迎える、という典型的青春ラブストーリー。
ツッコミどころも多いですが、ラストは「良かったね」とすっきり終われるお話です。

彼女の決断に男の子がまったく関わっていないっていうのがなんとも情けない感じだったり。
女の子っていうのはおバカさんに見えて、イザという時には強いんですよね。

多読 『As the Inspector Said...』

2004-10-30 00:42:50 | 洋書、翻訳
◆『As the Inspector Said... Short Stories』
  Retold by John Escott
  Oxford Bookworms: Stage 3 (総語数 9,600)

イギリスのミステリ作家5人の短編を、易しく書き直された物が収められています。

どんなに念入りに計画したつもりでも、ちょっとした偶然によって思わぬ結果を招いてしまう。
悪い事を考えるとどうも上手くいかないモンなんだよね。
そんな皮肉が込められた作品たちです。

以下は一行あらすじ+コメントです。

◇As the Inspector Said... / Cyril Hare

近所で多発している強盗事件に乗じて、夫の殺害をたくらむ妻とその愛人。
ああ、なんて皮肉な偶然なんだ。と驚かされました。

◇The Man Who Cut Off My Hair / Richard Marsh

人の唇が読める少女ジュディスは、偶然、泥棒たちの会話を"見て"しまいます。
「髪は女の命」とは言うけれど、大事な髪を切られた恨みをはらすため、恐怖そっちのけで泥棒たちを追い詰めていくジュディスがおもしろかったです。

◇The Railway Crossing / Freeman Wills Croft

横領をネタに脅迫され続けていた主人公は、ついに耐えかね相手の殺害を計画します。
上手くやろうとすれば失敗し、もういいやと見切りをつけた途端に成功してしまう。
運命のイタズラです。

◇The Blue Cross / G.K.Chesterton

ブラウン神父の持つ、青い石のはめこまれた銀の十字架が大泥棒フランボウに狙われる!
ブラウン神父モノは読んでみたいと思っていたので、こんな所で出会るなんて得した気分です。
神父さまの鋭い洞察力と、優しい人柄が表れています。
この短編の中では、このお話が一番お気に入り。

◇Cash on Delivery / Edmund Crispin

大金を積んで殺し屋に妻の殺害を依頼するエリストンだったが…。
片手しか使えない自分から容疑をそらすため、「両手を使って」という条件を出すところは上手いなぁと思いました。
殺し屋のビジネスライクな冷酷さにぞっとします。

多読 『Banker』

2004-10-28 21:11:30 | 洋書、翻訳
◆『Banker』
  Dick Francis (Retold by Stephen Colbourn)
  Heinemann Guided Readers: INTERMEDIATE level (総語数 11,000)

▽あらすじ

主人公ティムは、彼の勤める銀行の上司の紹介でカルダー・ジャクソンと出会う。
彼は、馬の病気をたちどころに治してしまうと名高い男だった。

ほどなくして取締役となったティムは、種牡馬購入のための500万ポンドの融資を担当する。
ところが、その種牡馬から相次いで奇形の仔馬が産まれるという異常事態が発生。
融資を無駄にするわけにはいかないティムは、真相究明に乗り出します。


▽コメント

競馬場での人々の出会い。ふいに起こった強盗殺人。名馬への融資依頼。
前半で何気なく並べられた出来事が、話が進むにつれて、名馬をめぐる一連の事件へと一気に収束していきます。

今回はエレメンタリー・レベルから1つレベルアップ。
英語が難しくなったというよりも、人物関係や伏線など、お話の面で少し複雑さが増したかなぁという印象を受けました。
そのぶんストーリーに厚みが増して、より楽しめるものになっています。

銀行や獣医さんが出てくるので、専門的な言葉にはちょっと戸惑うかもしれません。
例えば「興味・関心」という意味でよく使われる「interest」という単語は、銀行で使うとどんな意味を持つか知っていますか?
そうです、この単語には「利子」いう意味もあるんです。
しかしこうした意味は文脈から自然に理解できますし、"知っているはずの知らない単語"を発見するのも楽しいですよ。

洋書の紹介に総語数を加えました。

2004-10-26 00:49:45 | 洋書、翻訳
<お知らせ>
過去の洋書の紹介に、わかる範囲で総単語数をつけ加えました。
計算については、こちらを参考にさせてもらっています→SSS英語学習法研究会
ブックマークにも入れてあるので、ぜひ利用してください☆

では、本日の紹介です。

◆『 SKYJACK! 』Tim Vicary → Amazon.co.jp
  Oxford Bookworms Library: Stage 3 (総語数 9,300)

◇あらすじ

女性総理の夫を乗せた飛行機がハイジャックされた!
テロリストの要求は、爆弾事件で逮捕された仲間の釈放。
タイムリミットは2時間。総理は決断を迫られます。

◇コメント

要求を呑まなければ、人質の命が危険にさらされる。
しかし、テロに屈すれば同じような事件がまた繰り返されるだろう。
そんな緊迫した状況の中で、どんな決断を下すのか。
ドキドキしながら読んでいました。

人質に自国民がいることを理由に介入し、指揮権をとろうと争うアメリカとイギリス。
抵抗のできない状態になったテロリストを躊躇いもなく射殺する特殊部隊員。
そうしたやり方に対する批判的な見方がうかがえます。

テロという方法をとるまでに追い詰められた彼らと、一人の少女の思いなども描かれていて、読んだ後はなんともし難い気持ちになりました。

「クビシメロマンチスト」西尾維新

2004-10-24 14:46:21 | 和書
これを紹介というのもなんだか今更な感じもしますが。戯言シリーズ2作目です。
ちなみに1作目の紹介は→ココ


◆『クビシメロマンチスト―人間失格・零崎人識―』西尾維新/講談社

▽あらすじ

鴉の濡れ場島で起こった密室殺人事件から二週間。
遅ればせながら大学に戻った「ぼく」こといーちゃんは、強烈な個性を持った少女・巫女子と出会う。
彼女に引きずられる形でクラスメイトの江本智恵の誕生日パーティに参加する彼だったが、その翌日、智恵が死体で発見される。
一方世間では、連続通り魔殺人事件が古都・京都を震撼させていた…。

▽コメント

京都の某大学(と、伏せるまでもありませんが…)関係者は、思わずニヤリとさせられてしまう場面が多いというこの作品。

お互い核心に触れないままに笑顔で保っていたギリギリの均衡が、ちょっとしたきっかけでが崩れ出す。
天才×孤島というかけ離れた環境だった前回とは違い、クラスメイト×京都の街という一気に身近となった舞台が、そんな「日常」の危うさを感じさせました。

この作品に登場する彼らはことごとく、精神・肉体ともに現実世界には到底あてはまらないような人物として描かれています。
その徹底的なまでのキャラクター化に、危険を感じている人も多いようです。
しかしそれでも、この作品が多くの若者に支持されているという事実がある。
それは、彼らが極端な存在であると認めたうえで、自分に感じる「欠陥」であったり、反面教師的な危険性であったり、真っ直ぐに誰かを愛したいという希望であったり、どこか根底の部分で自分たちと通ずるものを感じているからではないでしょうか。

"衝撃の真相"ももちろん用意されているけれど、「犯人を当てよう、トリックを暴こう」というミステリ的な楽しみよりも、事象に対して登場人物らがそれぞれ何を考えどう行動するのか。また、読者である私たちはそれをどう受け止めるのか。それが重要なのではないかと思います。

――と、なんか小難しい割にわけのわからない話になってしまいました。
しかも今見てみたら、以前にもまったく同じ事を喋ってます…。

イラストの竹さんは派手にやってくれてますね~。
正直レジに持っていくのを躊躇わせるようなイラストですが、それだけの価値はアリです。

余談ですが。
いーちゃんの対人記憶力。まるで自分を見ているのかと思いましたよ。
ええ、2年目にも拘わらずクラスメイトで私が名前を言える人数は、片手で足りてしまいますよ。
ついこの間、「俺のこと覚えてる?」と真正面から聞かれた人間です…。

多読 『THE CANTERVILLE GHOST』

2004-10-22 00:46:30 | 洋書、翻訳
◆『"The Canterville Ghost" and Other Stories』
  Oscar Wilde (Retold by Stephen Colbourn)
  Heinemann Guided Readers: ELEMENTARY level (総語数 8,200)

表題作と他2編がおさめられた短編集。
ワイルドらしい世界を楽しむことが出来ます。

以下は各話の紹介です。

▽「The Canterville Ghost」

イギリスにあるカンタービルのお屋敷にすむ幽霊、カンタービル・ゴースト。
しかし、屋敷に引っ越してきたアメリカ人・オーティス一家は、全然彼を恐がってくれずやりたい放題。
そんな中、一家でただ一人心やさしい娘のバージニアに、彼は悩みを打ち明けるのだった。

何とか一家を恐がらせようとする彼の姿がとってもおもしろくて、でも最後はちょっぴり切ない、心温まるお話です。

▽「The Model Millionaire」

貧しい主人公ヒューイは、売れっ子画家である友人宅で絵のモデルをするみすぼらしい男に出会う。
その稼ぎの少なさを哀れんだヒューイは、手持ちのわずかな金を男にあげてしまうが…。

短いですが、とてもいいお話です。童話作家としてのワイルドの一面が表れています。

▽「Lord Arthur Savile's Crime」

アーサー卿は、手相鑑定士から自らの恐ろしい運命を告げられてしまう。
占いを信じ運命から逃れる事ができないと考えた彼は、「どうせ起こってしまうなら、せめて自分の都合のいいものに変えれば…」と驚くべき行動に出ます。

結末は、これでいいのかしら?とちょぴり疑問。
カットされた部分が多そうなので、これはオリジナルを読んだ方がいいかもしれません。
しかし、社会や人間に対する皮肉に満ちた作品であることは十分うかがえます。

「ドミノ」恩田陸

2004-10-20 00:06:15 | 和書
◆『ドミノ』 恩田陸/角川文庫

▽あらすじ

今にも雨が降り出しそうな真夏の東京。物語は、締め切り直前の契約書を待つ生命保険会社のオフィスから始まる。
オーディション会場の少女と母親。推理バトルをするミス研の学生。俳句仲間のオフ会で上京した老人。過激派の爆弾魔。
そんな何の関係もない27人と1匹が東京駅に集まった時、ドミノ倒しのごとく事件が動き出す――。

▽コメント

始めの人物紹介のページで「こんなに覚えられるわけがない!」とあきらめかけた人も多いはず。
しかし不思議なことに、読み進めていく内に見事に描き分けられたキャラクターがすっと頭に入ってきて、一気に読み終えることができました。

最初はバラバラだった彼らの運命が、ほんの些細なきっかけの積み重ねによってどんどん連なっていく。
まさに登場人物の27人と1匹、全員が主役。
一所懸命でどこか滑稽な愛すべきキャラクターたちは、みんな魅力的です。

パニックコメディとしてのアイデア自体はそんなに真新しいわけではありませんが、思わぬところで交わる連鎖、一気に最後まで持っていくスピード感は鮮やか。
個人的には、バイクのエピソードがお気に入りです。

ジョビジョバとかサブ監督とか好きな人にオススメ。

多読 『Matty Doolin』

2004-10-18 00:05:07 | 洋書、翻訳
◆『Matty Doolin』 Catherin Cookson (Retold by Diane Mowat)
  OXFORD BOOKWORMS: LEVEL 2 (総語数 6,600) →Amazon.co.jp

▽あらすじ

動物が大好きなマティは、農場で働くことを夢見ていました。
しかし彼の両親は許してくれず、友達とのキャンプもダメ、いたずらがすぎる愛犬も捨ててこい、と彼に反対してばかり。
ある日、愛犬ネルソンが車ではねられ死んでしまった事をきっかけに、マティは友達とともに農場で過ごすことになります。

▽コメント

人との関係に戸惑いながらも、自然を感じ動物と触れ合うことで、農場での生活に日に日に思いが募っていく様子が鮮やかに描かれています。
上手く想いが伝えられずにいらいらしたり、誰も無愛想な自分なんて好きになってくれないと悩んだり。
そんな彼の姿になんだか自分を見ているような気がして、すっかり感情移入してしまいました。

ただ、最後だけは、やっぱり自分で意志を伝えなければいけないんじゃないかなと感じました。
彼の姿を見ていれば、その成長は見てとれるかもしれない。
でも"自分の言葉で"伝えるっていうのは、彼の最大の課題だったんじゃないかなぁと思うのです。

多読 『CHEMICAL SECRET』

2004-10-16 17:19:17 | 洋書、翻訳
そろそろ後期の授業も落ち着いてきたので、多読を頑張ってみようと決意。
易しめのものを沢山紹介できればいいなぁと思っています。


◆『CHEMICAL SECRET』 Tim Vicary
  OXFORD BOOKWORMS: Stage 3 (総語数 10,000) → Amazon.co.jp

▽あらすじ

自動車の塗料を作る工場に雇われたダンカン。
彼は、工場の排水に有害な化学物質が含まれていることに気付きます。
しかし、老齢で2人の子供を抱え職を失うわけにはいかない彼は、責任者に脅され事実を黙認してしまう…。

▽コメント

汚染の事実を隠すのは、もちろん悪い事。そんな事は誰だってわかってる。
でも、彼の立場を考えると、単純に責めてよいものかと考えてしまいます。
これが、目先の利益に走り対応策の提案にも耳を貸さない工場長だったら、躊躇いなく糾弾もできるのでしょうけど…。

最後の終わり方も、すごく気になります。
この後どうなったのか。彼はどう行動すべきだったのか。
読んだ後で考えさせられる事がたくさんあるので、読書会や学校での授業など、意見を交換し合える場で読むのもいいかもしれません。

多読 『THE FLOWER SELLER』

2004-10-14 21:55:43 | 洋書、翻訳
最近は翻訳モノが多かったので、久しぶりにちゃんと(?)英語の本です。

◆『THE FLOWER SELLER』Richard Prescott
  Heinemann guided readers: ELEMENTARY LEVEL (総語数 7,900)

▽あらすじ

2週間前、名画"THE FLOWER SELLER"が盗難に遭った。
クライヴとアンディの2人は偶然その取り引き現場に出くわし、運び屋と勘違いされてその絵を受け取ってしまう。
間違いに気付いた泥棒たちがアンディを誘拐。クライヴは警察と協力して彼を救いだそうとします。

▽コメント

エレメンタリーレベルということでお話は少し物足りない感じもしますが、ハラハラ度は十分。
泥棒の手下のマヌケぶりや、画家を目指す学生ならではのクライヴの作戦もユニークです。
いかつい警部さんがエピローグでみせる茶目っ気が見もの。

英語学習者用につけられた巻末の問題が、お話の割にヤケに多い気がするのですが…。
お話に沿ってポイントを順番に質問していってくれるので、読んだ後に「どうもよくわからないなぁ」という部分があれば、参考に見てみるのも良いサポートになるかもしれません。

カレーライスは知っていた

2004-10-03 21:53:17 | 和書
今日紹介の一冊は、
「ミステリーなんて難しそう/恐そう…」
そんな方にもオススメな、ちょっとユニークな推理短編集です。


◆『カレーライスは知っていた―美少女代理探偵の事件簿―』愛川晶 / 光文社文庫

ちょっと変わった敏腕刑事・根津刑事とその娘・根津愛の活躍を描いた短編集。
タイトルからしてちょっとおかしなこの作品。
途中で「読者への挑戦状」が出されるあたり、パズル感覚で楽しめます。

あ、"美少女"探偵とは言うものの、きらきらした女のコの絵なんかは出てきません。念のため。
出てくるのは妙なネコのイラストのみ。だけどこのネコがなかなかのくせもので、各編の扉ページのイラストは重要なヒントを示していたりと侮れません。

各話の間に「根津愛の独白」と称するキャラクターから読者への語りかけや、謎の「ネコマンガ」が挿入されていますが、この"女子高生"なノリには拒否反応を示す人が多いかも。(私もこれにはイマイチ…)
これはちょっと…と思った方は、飛ばして読んでも大きな問題はないかと思います。

以下は表題作をちょこっと紹介。


◇「カレーライスは知っていた」

犯人は殺害現場で悠々とカレーを作って食べていた!?
犯人が犯人なら探偵も探偵。なんと現場に残されたそのカレーを一口食べただけで、犯人がわかったなんて言い出す始末。
オマケに冒頭では「カレーのレシピは、隅から隅まで本気で読んでくださいね」と釘をさされ…。

こんな遊び心いっぱいの趣向を凝らしながら、謎解きの方はしっかり「本格」。
「料理」というモチーフを巧みに謎解きに絡めてくる作者の発想には脱帽。
とにかくすごい方向から真相が見えてきます。
思わぬところにヒントが隠されていたりと油断ならない小説です。


この表題作以外にも、
ダイヤモンドができたてのコロッケの中をワープしてしまう「コロッケの密室」
ボーナストラックとして一般公募による解答編を加えた「スケートおじさん」
唯一ミステリらしい題名と思いきや、一気に脱力してしまうような言葉が隠されている「死への密室」
など、ユーモラスかつ読み応えある作品が揃っています。

おカタい長編ミステリのインターバルに、一冊どうでしょうか?