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コラム2 (少女の友 昭和9年)

2011年09月20日 | コラム類
御存じですか                             
       少女の友 よみもの 昭和9年6月号

バラを蕾のまゝ長く保(も)たせる法(はふ)



 いよいよ花のシーズンになりました。中でもバラは皆さんから可愛がられる花ですが、何しろ盛りが短いので、知らない間にバラバラと花瓣(くわべん)が散ってしまひます。
 バラは半開の蕾の時が一ばんいゝですネ。どうしたらつぼみの時期を長くたのしめるか面白い工夫がありますからお試みになつてごらんなさい。
 花屋さんからお求めになる時、或はお庭からお切りになる時、なるべく六部咲き位の蕾をえらんで水揚は普通にし花瓶に合せて切り、その切り口を五分ほど焼いておきます。それは従来と何の變りもありませんが、お庭の垣根などをさがせば必ずクモの巣が二つや三つは見つかります。クモの巣は無色で細いものですからこの絲をそつとつまんで、つぼみにクルクルとからませます。外観を少しも損しないで丁度いいつぼみのまゝで最後まで樂しめます。

牛乳はかうして召上れ

お腹が空いてゐるからといつて、一氣にぐつと飲み下すのはよくありません。空腹時(くうふくどき)は胃の中にたまつてゐる鹽酸(ゑんさん)のために凝結物(こけつぶつ)を作りますから、消化程度を悪くします。で少しずゝゆつくり召し上るのがよろしいが、ビスケツトやパンなどを浸(し)めして一緒にのむ方が胃のために具合がよろしい。
 これからは苺が澤三出ますから、苺にかけて召上る方が多いやうですが、苺の酸のために凝固しますから、ほんたうは感心しません。
 又牛乳を温めると上に薄い幕様のものが出来ますが、これは脂肪分で滋養が多いものですから取り出して捨てたりしないで召し上がれ。

小豆の煮方

 小豆はなかなか煮るのに時間がかゝるものですが、大根の尻尾を一寸位切つて入れて一緒に煮ますと、役半分位の時間でやはらかく煮上がります。尚昔から小豆には、馬鹿水と云ふやうに、煮立てば少しづゝ水を幾度も差しますが、はじめからどつさり水を入れて煮るよりも、ちよいちよいと水を差す方が早く柔かになるから不思議です。

眼にゴミの入つた時

 道を歩いてゐる時、風で、よく眼の中にゴミが入ることがあります。又汽車の煙の中に混つてゐる灰がらのやうな小さなものが入つて困ることがあります。こんな時には、決して、ヒドク擦つてはなりません。ゴミや、石灰の粉や、砂、小蟲(こむし)などは、眼に入つても、しばらく閉ぢて、じつとしてゐますと、自然に泪が出て来て、眼頭の方へ流れ寄りますから、その時、ソツとハンカチの端でとりのぞきます。又なかなかとれさうにない時は、瞼の上に薄荷水(はつかすゐ)を少しぬつてごらんなさい。泪がポロンポロンと出ますから流れ出します。又はつか水のない時は、冷水の中へ眼を伏せてパチパチと開いて洗ひ去る方法もあります。
 焼けた小鐡片(せうてつぺん)や溶けた鉛、マツチの燐などが入つて眼球に焼きついたのは、冷水で濕した手拭がハンカチ等で抑へて痛みを和らげ乍ら眼科醫へ行きます。もしも、酸類とかアルカリなどのやうな強い腐蝕の薬品などの飛び込んだりした場合は、手早く澤三の冷水で何度も何度も洗つて早速お醫者さんへとんで行きます。入つた直ぐにどんどん水で洗はないと、他の部分まで悪くなつたりする事があります。

香水(かうすゐ)の見分け方

 香水はおしやれの人が使ふものと考へてゐる方がまだあるかもしれませんが、必ずしもさうではありません。あまり毒々しい下品な香(かをり)をさせるのは返つてよくありませんが、これから夏向きになつて汗などのいやな體臭(たいしう)を遠慮なく發散させるのは身だしなみのない方です。よい香水を、ほんの少し、ハンカチや下着などに、かすかに、つけておくのは大變感じのいゝものです。香りはお好みによつて異りませうが、必ず、新鮮な、丸味のある薫(かほり)のものがよいのです。天然の花の香(にほひ)に近いものをお選び下さい。
 香水瓶の蓋をとつて、手の肌にこすつて、アルコールを蒸發させ、その後に残つた香をかひで見て、ツーンと鼻をつくのはいけません。丸味のある上品な香りを残すのがよろしい。又香水は渇いても褐色にしみの付くのは定着剤(香を長く保せるための薬品)が多過ぎるので、あまりいゝ香水とはいはれません。


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