マメゾウムシはきょうも

虫目、キノコ目、貝殻目・・・。
小さいものを、じーっと見るのが好き。

宝本 ダレルの『虫とけものと家族たち』

2008-04-17 15:11:35 | 

 新聞の書評欄をみて本を買うことはあまりないのだが、なんだか「ギリシャもの」を久しぶりに読みたくなって池澤夏樹の『星に降る雪/修道院』をアマゾンで注文。

 届くまでにそもそも私がギリシャに興味をもった源、ダレルの『虫とけものと家族たち』を引っ張り出して読み返してみよう。  

 小さい時から「読むもの」がないとダメ。食べるように読んできた本のなかで、でも特に宝物のように大事な本、というのはそんなにはない。この『虫とけものと家族たち』はそんな中でも別格。無くすと哀しいので、4冊もっていた。すでに絶版になって久しいので、古本屋のネットなどでみると買っておく(今Amazoに出ているのは4000円以上。たっかー!)。うち一冊は、かつてヨットで旅をするので、その間に読みたい本が欲しい、といった知人に上げたのだが、彼はその旅で遭難して死にそうになり、すべての荷物を失った。『虫とけものと家族たち』も読まれる前に海に沈んでしまったらしい。  

 ギリシャ。行ったことがないけれど、一度行ってみたいような、行かないで想像の中だけで思い描いてずっとあこがれ続けたいような。池澤夏樹さんは、この本を訳してギリシャに憑かれ、コルフという小島に数年住んだという。だから私があこがれるのは、遺跡がたくさんあるアクロポリス的な場所ではなくて、小さな島々のほう。そこの豊かな自然と、ギリシャ的な人々。『その男ゾルバ』みたいな音楽と踊りと、取り付くしまもないような白い乾いた風景が生み出すもの、などなど。

 『虫とけものと家族たち』の著者はジェラルド・ダレル。あの『アレキサンドリア四重奏」で著名な作家ロアルド・ダレルの弟だ。池澤さんの心躍るような解説を引用しつつこの本を紹介すると・・・

 これは30年代に、ギリシャの小さな島へ移住したある一家の物語。語り手はその頃10歳だったダレル少年。ダレルは大人になってから、ジャージー島に小さな動物園をつくったほどの生き物好き。

 父親はいないけれど、おっとりした(いつもダレルをかばってくれる)母親と風変わりな兄ふたりと姉ひとり。そして頑固でお人よしでのんきな、典型的なギリシャ人、そして博学なすばらしい隣人セオドア博士との、めくるめく幸せの日々。

 ダレル少年はとにかく生き物と見れば、自分のベッドに連れてこないではいられない。ケムシやコガネムシはまだしも、サソリ、カササギ、水ヘビ、カモメなど、次々と家へ持ち込んで家族の顰蹙を買う。バルコニーでリクガメの剥製作りなんかもやっちゃう。

 ギリシャが海も陸地もすばらしい自然に囲まれているとは、この本を読んではじめて知った。これを読んでいると・・・幸福感に感染する。