国語学者の大野晋氏が今年の7月に亡くなっていたことを知った。
私は大野氏の著書から、たくさんの文法を学ばせていただいた。
心よりご冥福をお祈りいたします。
今日は紛らわしい文法について、大野氏の著書から抜粋していきたいと思う。
「へ」と「に」について
都へのぼる
大和へ越ゆる雁がねは
「へ」はこのように、「のぼる」「越ゆ」など移動の動作を導く。
「へ」の上は「都」「大和」など遠い土地の名が八割を占める。
つまり、遠いところに向って移動する時に「へ」を使った。
ところが「に」にも同じような使い方がある。
家に帰りて
韓国に渡る
これだけを較べると「へ」と「に」の間には区別が見えない。
しかし、「に」には次のような例がある。
比良の港に漕ぎ泊てむ(比良の港に停泊しよう)
寄する波、辺に来寄らば(寄せる波が岸まで寄せて来たら)
この「に」の使い方は、「港(に)停泊する」「岸辺(まで)寄せて来る」であり、つまり「遠いところを目指して移動する」のではなく、確かな場所に「動作が動いて止まる」ことを導いている。
「に」にはこのように「結果として確かな地点や場所に止まって動かない」という意味に使うことが多い。
「比良の港に漕ぎ泊てむ」といえば、「比良」の方向へということでなく、到着する地点が「比良」だと示すのだ。
「に」は動作のしっかりとした帰着点を示し、「へ」のように、そっちを目指して行くのとはちがうという区別が古来そこにあった。
「球を庭へ投げる」というと、「球を庭の方へ向って投げる」こと。
「球を庭に投げる」といえば、「球の落ちて着く場所が庭」ということ。
いずれにしても、「へ」といっても「に」といっても通じることは通じる。
「机の上に置いといた」「ノートへ書く」なども意味は通じるが、「置く」「書く」はそこに落ち着く動作。
移動・移行の方向の時は「へ」。
動作の帰着点をきちんと示したい時は「に」。
聞き手・読み手に事態をはっきりと伝えるためには、「机の上に置く」「ノートに書く」と使い分けるべきである。
私は大野氏の著書から、たくさんの文法を学ばせていただいた。
心よりご冥福をお祈りいたします。
今日は紛らわしい文法について、大野氏の著書から抜粋していきたいと思う。
「へ」と「に」について
都へのぼる
大和へ越ゆる雁がねは
「へ」はこのように、「のぼる」「越ゆ」など移動の動作を導く。
「へ」の上は「都」「大和」など遠い土地の名が八割を占める。
つまり、遠いところに向って移動する時に「へ」を使った。
ところが「に」にも同じような使い方がある。
家に帰りて
韓国に渡る
これだけを較べると「へ」と「に」の間には区別が見えない。
しかし、「に」には次のような例がある。
比良の港に漕ぎ泊てむ(比良の港に停泊しよう)
寄する波、辺に来寄らば(寄せる波が岸まで寄せて来たら)
この「に」の使い方は、「港(に)停泊する」「岸辺(まで)寄せて来る」であり、つまり「遠いところを目指して移動する」のではなく、確かな場所に「動作が動いて止まる」ことを導いている。
「に」にはこのように「結果として確かな地点や場所に止まって動かない」という意味に使うことが多い。
「比良の港に漕ぎ泊てむ」といえば、「比良」の方向へということでなく、到着する地点が「比良」だと示すのだ。
「に」は動作のしっかりとした帰着点を示し、「へ」のように、そっちを目指して行くのとはちがうという区別が古来そこにあった。
「球を庭へ投げる」というと、「球を庭の方へ向って投げる」こと。
「球を庭に投げる」といえば、「球の落ちて着く場所が庭」ということ。
いずれにしても、「へ」といっても「に」といっても通じることは通じる。
「机の上に置いといた」「ノートへ書く」なども意味は通じるが、「置く」「書く」はそこに落ち着く動作。
移動・移行の方向の時は「へ」。
動作の帰着点をきちんと示したい時は「に」。
聞き手・読み手に事態をはっきりと伝えるためには、「机の上に置く」「ノートに書く」と使い分けるべきである。