昨晩珍しくオット、1号、2号の男三人衆が早く寝た。暫く一人でテレビを見ていたが「そろそろ寝るか…」
とテレビを消し部屋の電気も消した。
「外は寒いのかな」
明日の天気が気になる。何気なくベランダに出てみた。ひんやりとした空気の中に夜露で湿ったアスファルトと木々のかすかなにおいがした。
「夜の匂い…」
そう思った。
私が小学校の2年か3年の時だった。
夏休み。
目が覚めた時は明るかった。時計の針は5時前だったと思う。東向きの、2階の子供部屋の窓からは低く柔らかい朝日が差し込んでいた。
「何でこんな時間に目が覚めたんだろう」
普段はまだぐっすり眠っている時間だ。だがその割にはすっきりとした目覚めだった。そして何故か急に外が見たくなった。同じ部屋で寝ている姉を起こさない様に、そっとそっと起き上がり窓を開けた。夏の朝の空気は少しひんやりとしていた。朝露で湿ったアスファルトの匂いにわずかに木の葉の緑の匂いが混ざっていた。
「いいにおい…」
目を瞑って何度も胸一杯に吸いこんだ。忘れないように何度も吸った。目を開けると猫が一匹、すぐ前の道を小走りに横切っていった。
「猫も朝の匂いをかいだかな…」
ゆっくりと布団に戻った後は再びぐっすりと眠った。
そのあとまた早く起きて朝の匂いをかいでみたいと思ったが、同じ時間に目が覚める事はなかった。
夜の匂いは、あの朝の匂いとは少し違う。地面の近くに静かに溜まった重い匂い。
朝の匂いはみずみずしく澄んでいて、空気の中をするすると流れるように軽かった。匂いに色があるならば、薄く透明に近い青だった。
明日の朝早く起きてみようか。夜の匂いは朝の匂いに変わっているかも知れない。
それとも朝の匂いはあの頃に戻らないと見つからないのか。
とテレビを消し部屋の電気も消した。
「外は寒いのかな」
明日の天気が気になる。何気なくベランダに出てみた。ひんやりとした空気の中に夜露で湿ったアスファルトと木々のかすかなにおいがした。
「夜の匂い…」
そう思った。
私が小学校の2年か3年の時だった。
夏休み。
目が覚めた時は明るかった。時計の針は5時前だったと思う。東向きの、2階の子供部屋の窓からは低く柔らかい朝日が差し込んでいた。
「何でこんな時間に目が覚めたんだろう」
普段はまだぐっすり眠っている時間だ。だがその割にはすっきりとした目覚めだった。そして何故か急に外が見たくなった。同じ部屋で寝ている姉を起こさない様に、そっとそっと起き上がり窓を開けた。夏の朝の空気は少しひんやりとしていた。朝露で湿ったアスファルトの匂いにわずかに木の葉の緑の匂いが混ざっていた。
「いいにおい…」
目を瞑って何度も胸一杯に吸いこんだ。忘れないように何度も吸った。目を開けると猫が一匹、すぐ前の道を小走りに横切っていった。
「猫も朝の匂いをかいだかな…」
ゆっくりと布団に戻った後は再びぐっすりと眠った。
そのあとまた早く起きて朝の匂いをかいでみたいと思ったが、同じ時間に目が覚める事はなかった。
夜の匂いは、あの朝の匂いとは少し違う。地面の近くに静かに溜まった重い匂い。
朝の匂いはみずみずしく澄んでいて、空気の中をするすると流れるように軽かった。匂いに色があるならば、薄く透明に近い青だった。
明日の朝早く起きてみようか。夜の匂いは朝の匂いに変わっているかも知れない。
それとも朝の匂いはあの頃に戻らないと見つからないのか。