これまでの話は「昔話」のカテゴリーにあります。
ホノルルの空港に降り立った私の目の前にある世界は、今まで私が暮らしてきた世界とはあまりにもかけ離れた世界だった。
私は小学校4年の後半から中学受験のために塾へ通い、勉強に追われてた。自分から言い出した受験だったが、勉強は苦手だった。ただ姉と同じ学校へ行きたい、理由はそれだけだったから受験勉強は苦痛でしかなかった。それでもなんとか志望校に合格することはできた。
合格すれば後はバラ色か?やっと合格できた中学校での成績は一年の2学期あたりから落ち始め、それからは……。 併設の高校と短大へ進み勉強が楽しいと感じたのは短大に入ってからだった。
2年間しかない短大生活はあっと言う間に過ぎていった。短大を卒業すれば今度は就職だ。当時はバブルの最中で、今では考えられないかも知れないが、一人で何社もの内定をもらえる時代だった。私も内定をもらったうちの一社に就職が決まった。
入社が決まった会社だが一体何をする会社なのか、実際に自分はどんな仕事をするのか、入ってみるまでわからなかった。配属されたのは営業の管理部門だった。さて、営業の管理とはどんな仕事か…平たく言えば、営業マンがかき集めてきた仕事の社内処理である。バブル真っ只中の仕事の量は半端ではなかった。しかも新入社員はわけも分らず先輩社員に手取り足取り教えてもらい、気が付けばどっぷり残業に浸かっているという具合だった。とにかく、新入社員は突っ走るしかなかった。
突っ走り続ければ疲れる。日曜日はぐったりと昼近くまで寝ていた。そんな生活のせめてもの救いは、お給料が他の短大卒のOLより良いということだった。めちゃくちゃ忙しいのだから、当然と言えば当然だった。
くたくた生活を一年続けた頃、ハワイ行きの話に出会った。『溺れる者はわらをも掴む』もみくちゃ生活に何か区切りをつけたかったのかも知れないし、父を亡くしたショックから自力で抜け出したかったのかも知れない。天から下りてきた蜘蛛の糸を私は掴んだのだ。
ホノルルの朝は眩しかった。太陽も、木も、道路も、人も、風も、全てがゆったりキラキラと輝いていた。花の香りが漂う空気に全身を包まれて、心が解きほぐされてゆく感じがした。
迎えのバスに乗り、いよいよ観光の始まりだ。ガイドさんの説明を一言一句聞き漏らさずに頭にいれた。
バスの窓から外を見ながら聞いていたら、ふと今までの自分の生活が浮かんできた。そしてそれがだんだん小さなものに思えてきた。ハワイの開放的で明るい大きな空気の中に居ると、自分がどれだけ小さな存在であったか思い知らされたようで、なんだか悲しくなってきた。
つづく
ホノルルの空港に降り立った私の目の前にある世界は、今まで私が暮らしてきた世界とはあまりにもかけ離れた世界だった。
私は小学校4年の後半から中学受験のために塾へ通い、勉強に追われてた。自分から言い出した受験だったが、勉強は苦手だった。ただ姉と同じ学校へ行きたい、理由はそれだけだったから受験勉強は苦痛でしかなかった。それでもなんとか志望校に合格することはできた。
合格すれば後はバラ色か?やっと合格できた中学校での成績は一年の2学期あたりから落ち始め、それからは……。 併設の高校と短大へ進み勉強が楽しいと感じたのは短大に入ってからだった。
2年間しかない短大生活はあっと言う間に過ぎていった。短大を卒業すれば今度は就職だ。当時はバブルの最中で、今では考えられないかも知れないが、一人で何社もの内定をもらえる時代だった。私も内定をもらったうちの一社に就職が決まった。
入社が決まった会社だが一体何をする会社なのか、実際に自分はどんな仕事をするのか、入ってみるまでわからなかった。配属されたのは営業の管理部門だった。さて、営業の管理とはどんな仕事か…平たく言えば、営業マンがかき集めてきた仕事の社内処理である。バブル真っ只中の仕事の量は半端ではなかった。しかも新入社員はわけも分らず先輩社員に手取り足取り教えてもらい、気が付けばどっぷり残業に浸かっているという具合だった。とにかく、新入社員は突っ走るしかなかった。
突っ走り続ければ疲れる。日曜日はぐったりと昼近くまで寝ていた。そんな生活のせめてもの救いは、お給料が他の短大卒のOLより良いということだった。めちゃくちゃ忙しいのだから、当然と言えば当然だった。
くたくた生活を一年続けた頃、ハワイ行きの話に出会った。『溺れる者はわらをも掴む』もみくちゃ生活に何か区切りをつけたかったのかも知れないし、父を亡くしたショックから自力で抜け出したかったのかも知れない。天から下りてきた蜘蛛の糸を私は掴んだのだ。
ホノルルの朝は眩しかった。太陽も、木も、道路も、人も、風も、全てがゆったりキラキラと輝いていた。花の香りが漂う空気に全身を包まれて、心が解きほぐされてゆく感じがした。
迎えのバスに乗り、いよいよ観光の始まりだ。ガイドさんの説明を一言一句聞き漏らさずに頭にいれた。
バスの窓から外を見ながら聞いていたら、ふと今までの自分の生活が浮かんできた。そしてそれがだんだん小さなものに思えてきた。ハワイの開放的で明るい大きな空気の中に居ると、自分がどれだけ小さな存在であったか思い知らされたようで、なんだか悲しくなってきた。
つづく