goo blog サービス終了のお知らせ 

ペンネーム牧村蘇芳のブログ

小説やゲームプレイ記録などを投稿します。

蟲毒の饗宴 第21話(1)

2025-04-21 19:41:42 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>完
 存在自体が疎まれる悪魔に対して通常といった言葉は有り得ない。
 だが強いて言うなら、通常、悪魔がこの世界に存在を維持する理由とは、
 契約によるものと言い切れた。
 人と交わされた契約が、現の世で受肉され、地に足を下ろす。
 術者の力、用意した贄、描かれた魔法陣の3つで
 召喚される悪魔のランクが決まるという。
 それらは3つに大別されている。
 下位悪魔(レッサーデーモン)。
 上位悪魔(グレーターデーモン)。
 高位悪魔(アークデーモン)。
 実際には高位悪魔の上にまだあるのだが、
 人がどうこうできる悪魔ではない為、最初からカウントされていない。
 この世界では悪魔召喚自体が世界共通の禁忌な為、
 行えば死刑と処す国がほとんど。
 召喚する方法は知っていても、怖くて手を出せないのが普通だ。
 それなのに・・・。
「当時悪魔召喚した奴って、本当に自分勝手にやったのかしらねー。」
 ボソッと呟くケイトの声に、皆が機敏に反応する。
 ドールがケイトに近寄り
「本当は、国に指示されていた可能性があると?」
 とストレートに聞いてきた。
 ケイトは小首を傾げ
「昔の話だから、仮にそうだったしてもそれ以上の話は無いけどね。」
 アークデーモンなんて高位の悪魔を召喚出来たという事は、
 かなりの実力者だったはず。
 東方から来た男らしいけど、
 あの資料館でもその者の名は欠片も出なかった。
 今も意図的に隠されていると感じてしまうのは私だけなのかなあ?
 なんかヤな予感するのよねー、まあ考えてても仕方ないけど。
 ・・・ん?
「ドール、魔術探偵の方に誰か来たみたい。
 先に行って対応してもらえる?」
「かしこまりました。」

 ・・・なんでこっちのヤな予感は出なかったのかしらねー。
「どうしてもお姉様に直接お伝えしたい事があって参りましたの。」
 今回の仕事を手伝ってもらっている以上無下にも出来ないからだけど、
 伝言で十分だと声を大にして言いたいわ。
 対面のソファーにフランソワを座らせ、ドールにコーヒーを頼んだ。
「で、伝えたい事って?」
「病院に入院していたアメリという女の子、退院したんですの。
 受け入れ先はソルドバージュ寺院。
 まだ通院扱いだから身の安全は確かですけど、
 リディアが誘拐を実行する可能性を考慮した鉄仮面が、
 今それとなく外から見張っていますわ。」
「退院後の受け入れ先があの寺院?
 あそこは孤児の引き取りはしていなかったはずじゃ・・・。」
「アリサちゃんの母が進んで受け入れるとは思えませんから、
 国からの要請と推測するのが妥当かと。」
「・・・・・。」
「お姉様?」
「やっぱりおかしいわ。」
「何がですの?」
「今の状況下であの女の子を誘拐?
 絶対に無理、不可能だわ。
 そう考えると、1つの仮説が思い付く。」
「目線の誘導・・・あのアメリという女の子は
 魔人にするための存在ではなく、ただの囮役という事でしょうか?」
「ええ、そして魔人にするための存在が実はもう一人いるとしたら・・・。」
 ケイトはここまで推測しているが、どこか歯切れの悪い声色。
 それもそのはず、ホムンクルスなど
 そう簡単に何体も作れるものではないからだ。
 常識的にフランソワもそれは分かっているからか、
 こちらも魔人にする人材に思い付くところが無いようである。
 二人で悩んでいる中、ドールと、その後ろからフィルがやってきた。
 フランソワが思わず凝視する。
「お姉様、なんでこの娘がここにいるんですの?」
 背後から青白いオーラでも出ていそうな睨みっぷりだ。
「あ、国からのお目・・・じゃなくて護衛役よ。
 フィルの意志じゃないわ。」
 ケイトの説明に、どこか納得していないフランソワの殺気だった表情。
 が、当のフィルは特に気にしていない。
 いつもの事なので、とりあえず作り笑いしながらフランソワの隣に座った。
 少しも臆する事無く落ち着いている。
 ドールも全く気にせず、普段通りにコーヒーを配し、ケイトの隣へ。
「お姉様の護衛なんて、私一人で十分よ。
 そもそも国が動く理由は何なの?」
 フィルは、フランソワにアークデーモンの存在と討伐宣言の話をした。
 高位悪魔の存在を確定づける話に、フランソワは止む無く折れる。
「ふーん・・・。
 とりあえず状況は理解したわ。」
「ありがとうございます。
 それでケイトさん、今後どういった行動を取りますか?」
「フランソワ、青い花を与えた冒険者の位置は掴める?」
「もちろんですわ。
 ・・・今は、地下迷宮にいますね。」
「え、また?
 ・・・そうか、マーキュリー伯爵夫人たちの潜伏先ね。
 案内して、今から行くわ。」
「はい、喜んで。」
 フィルはケイトの顔を覗き込む。
「冒険者たちの助っ人ではなく、何か気になる事があるんですね?」
「アメリが囮役なら、魔人にする本命が存在するはずなのよ。
 何か見落としているはず。
 でもその何かが未だに分からない。
 なら直接行って確かめるまでよ。」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第21話 タマチ(幽鬼ガキの依... | トップ | 蟲毒の饗宴 第21話(2) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>完」カテゴリの最新記事