goo blog サービス終了のお知らせ 

ペンネーム牧村蘇芳のブログ

小説やゲームプレイ記録などを投稿します。

蟲毒の饗宴 第29話(2)

2025-05-20 21:00:33 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>完
 DNA、遺伝子組み換え、クローン等の技術を
 神の領域と語る者がいるように、
 解魔術と封魔術も
 魔法の世界においては神の領域と言われている。
 魔法の成り立ちから発動に至るまでの全工程を解析し、
 新たな技術として確立させた魔術だ。
 禁断の魔術とも言える技術を世に認めさせた目的は
 “邪悪なるもの”の完全抹殺。
 魔法を無効化し、強大な攻撃魔法を使役する
 悪魔、妖魔、邪神、邪龍どもをこの世から消し去る為の、
 必要不可欠な魔術と言われていた。
 しかし悪魔とて馬鹿ばかりではない。
 人間に化け、人間界のみに伝わる知識を学び、
 より凶悪な存在へと成る悪魔もいる・・・。

 昔から黒い羊や山羊は悪魔崇拝の象徴として
 最もポピュラーな存在。
 闇組織ブラックシープの紋章は
 “この世界に魔法が確立していなかった頃からの”
 非常に古い時代のものであった。
 今では西の帝国の組織の一部と言われているが、
 それも本当の事なのかは分からない。
 巨大な組織故に一枚岩ではないのだが、
 利害の一致でとりあえず共に行動しているだけとも噂されている。
 そもそも、その組織を肌で感じ目にする者はごく少数。
 存在自体が不明瞭で雲を掴むような話であった・・・。

 まさか、そんな彼らが国内に存在しようとは。

 城下町南門から南に数キロ行ったところにある森の中の屋敷。
 そこに彼ら2人の気配があった。
 紺のスーツ姿の男性と、黒いドレスを着た女性。
 距離をとってお互い古めかしい椅子に座り、
 コーヒー片手に話し合っている。
 仲間という雰囲気ではなさそうだ。
「オリジナルの2本が行方不明のままですから、
 見本の無い状況で簡単に成功とはいきません。
 しかしながら、聖女サリナと白銀の騎士ヴェスターの2人を
 一撃で倒すくらいの真空刃を発動させる事は出来ました。」
 自信あり気な男の声。
 それでも返ってきた女の声は手厳しい。
「・・・それでもフィルには簡単に封じられ、
 挙句折られたのでしょう?
 現役引退間近のロートル2人を一撃で倒せたからといって、
 鼻を高くしないでもらいたいわね。」
「王国の御庭番を倒せば信用してもらえると?」
「・・・そうね、御庭番の序列10位以内の者か、
 手出し厳禁の5人のどちらかなら少し信用してもいいわよ。」
「倒しても少しですか。」
「悪魔相手に全面的に信用する人間がいると思って?
 私は貴方と契約しているわけじゃない。
 利害一致の元に協力しているだけよ。」
 かなりしたたかな女性のようだ。
 ブラックシープの幹部の1人らしい。
「この関係が終われば、私を殺しますか?」
「今のところ殺す理由は無いわ。
 悪魔だから必ず殺すという事はあり得ない。
 それはどの国にも言える事よ
 もちろんあの王国にも・・・ね。
 殺すか殺さないかの天秤は、
 人に害をなすかなさないかで決まっているだけ。
 邪なるものの存在を滅せよ。
 太古の昔から掲げられてきた教義は、
 我らブラックシープの中にもあるわ。
 ・・・せいぜい邪な存在ではない事を証明してみせなさい。」
「さて、それは人間側の受け取り次第ですから、なんとも。
 私はあくまで、ただの武器商人ですので。」
「ただの武器商人が、闇組織と手を組むの?」
 すると男はニコリと笑みを見せる。
「商人ですから、お客様と接しているだけですよ。」
「喰えない男ね。」

 西の帝国に付いている闇組織の者が、
 王国を滅ぼす為に悪魔と手を組んでいる。
 非常に分かりやすい図式がここにあった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 蟲毒の饗宴 第29話(1) | トップ | 蟲毒の饗宴 第29話(3) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>完」カテゴリの最新記事