おやすみなさい

　そろそろゴールデンウイーク。毎年のことではあるが、春先というのは気温の変化が激しくて、シャツ一枚でも汗ばむような日もあれば、コートを羽織らなければ寒くて震えてしまうような日もある。そんな日を何回か繰り返しながら、いつの間にか初夏へと変わっていく。今年もそんな季節になってきた。ついこの前まで活躍してくれていた手袋もマフラーも次の秋が訪れるまでは、出番が来ることもないだろう。
　暑ければ脱げばいいだけなのだが、寒いのは対応が難しい。かといっていつもいつもコートを持って歩くのも煩わしい。そんな時期には、鞄の中に入っている手袋とマフラーが役に立つ。毛細血管が集中している指先を保温するだけで、体温の放熱を防ぐことができるから手袋は有効だし、前開きの上着の首筋から吹き込む風をシャットアウトするマフラーは同時に脳に送られる血液を温めるから、寒さを感じさせない効果がある。医学的に見て正しいのかどうかは知らないが、多分論理的にはそんなところだろうと思う。でも、実際のところはお気に入りのグッズがいつも手元にあって、それが自分を包んでくれている。そんな安心感が体でなく心を温めてくれているような気がするのである。それはいい歳をしたおじさんにしてはちょっと気持ち悪い感傷なのかもしれないけれど。
　ともかくも、しばらくはこの友人たちともお別れである。革手袋の手入れの仕方はこれから調べるしかないけれど、マフラーはクリーニングに出して、その後はゆっくりとタンスの中で寝てもらうことにしよう。今シーズンの疲れがすっかりと取れるように。
　木枯らしが吹く頃になったら、またたくさん付き合ってもらわなくちゃね。
　それまで、おやすみなさ～い