まあるい地球

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日記 オッさんと対峙

2022-12-27 08:01:00 | エッセイ
日記 オッさんと対峙

そんな風なモチベーションで、
私のリハビリは、
日々、日々加速していったのでございました。

そんな中、
意中のオッさんに、
2,3度すれ違う事が出来たのでした。


廊下の最奥の向こうから、
そのオッさんが、
こちらに向かって、
歩いて来ているのが見て取れると、

私は瞬時に、
今まで曲げて歩いていた腰を、
シャンっと伸ばし、

点滴の台車を押していない腕で、
肩を回したりして、

まるで飛ぶ鳥を落とす勢いのごとく、みるみる回復しているように振る舞いました。

3,4日前の、あの衰弱の影は微塵も伺いしれません。

『 オッさん…
これが、君と私の違いなのだよ。
老いては子に従えって、わかる?
(ちょっと例え違うか⁈まあいい)
若者を馬鹿にしちゃいかんぜよ 』

そんな気分でございました。笑



そんな日々が続いたある日、
とうとう退院を明日にと、
迎える日がやって参りました。

食事は出されておりましたが、
ほとんど食べられない状態での退院でしたので、

正直、退院はしたいけれど、
不安は満載でした。

が、しかし、
かと言ってこのまま入院を続けていても、それはそれで悪化の一途であるのは自覚がございました。


ので、退院上等!
と、頭を切り替えると、
やり残したことが、
パッと頭に浮かびました。

そう!あのオッさんに、
『落とし前をつけねば!』
で、ございました。(笑)


例のオッさんに最後の一撃、
この上ない、最上級の快活ぶりを、
あのオッさんの目に
これでもか!ってなくらいに、
焼き付かせなければなりません。


私は早速病室を出、
リハビリ散歩に向かい、
オッさんを探しました。


勢いよく出かけたものの、
連日の、
『私、元気いっぱい回復してるのよ〜』
演技のせいで、
私は予想以上にすぐに疲れてしまったのでした。

幸い、オッさんは見当たらず、
一先ずは、ラウンジで一休みする事に致しました。


しばらく腰を落ち着かせ、
呼吸を整え、休んでおりましたら、

予想外にも、
疲れが取れるどころか逆に、
疲れがドッと出てきてしまい、
一先ず病室へ避難することに致しました。

私は、
重い腰をようやく上げて、
トボ、トボと、
一歩一歩力なく歩き出しました。


ところへ〜
まさかのオッさん参上〜!

なんと!
ラウンジ出て2,3歩歩いたすぐ目の前に、
例のオッさんがこちらへ向かって歩いていたのでございました…。

迂闊にも、
腰を曲げて下を向いて歩いていたので、オッさんに気付くのが遅れてしまったのでした。

もう、演技とか、
そんな事をかます余裕なんてありません。


そして私はすれ違いざまに、
思わず、
『 こんにちは… 』
と、覇気のない声で、
オッさんに挨拶をしてしまっていたのでございました。

(ま、マジか…。私の心中は、自分で自分に驚いておりました。)


初めて挨拶をされたオッさんのほうはというと、
何の抑揚もなく、
『 こんにちは 』と、返して来たのでございました。


本当、今でもあの時のオッさんの高笑いが何だったのか?
不思議ですが、

今こうして考えてみると、
一時的に、何か、『鬼』のような魑魅魍魎が、オッさんに乗っていたのかな…と、そうも思ってみたりもしております。

笑われたのは、あの一度だけでしたし、その後のオッさんの表情を見てきても、普通の寡黙な『おじさん』でございました。


そして私のほうも、
そんな『鬼』がいたからこそ、
激痛のリハビリにも、精力的に取り組めたわけでございます。


与えられたものの一切には
無駄がなく、有難いもの、
というのは、ある意味本当だなと、
しみじみ思いました。



じじい!ブラボー!
早く元気になれよ!

オッさんに感謝を贈らせて頂きました。