お風呂に入っていて急に思い出した人がいる。かつての職場の同僚。
体の大きな、戦車みたいに動く人だった。有能な人だったのだろうが、なんとなく怖かった。退職して、身体に障がいのある人たちのお世話をする施設に勤めた。その人があるときメールに書いてきた。
にっこり笑った年寄りの顔がテレビで大写しになっているのを見たりするとゾっとする、と。
ああ、彼女は介護の仕事が本当は嫌いだったのだと知った。
なんの脈略もなく思い出したことがもう一つ。
私は30台後半までは言葉に異常なくらい敏感だった。言葉の底にある真実さや嘘に敏感だった。本能的と思うくらいに敏感だった。それがあることをきっかけに、たぶん、私にとっては生きやすくなったのだろうが、鈍感になった。
今は言葉の調子を変えて本心をごまかすことを覚えた。そうしないと生きていけないこともある。
でも、それはダメだなぁーと今思う。もっと正直になりたい。言わなくていいことなら黙っていればいい。言葉に魂は宿る。嘘のない言葉を話したいと思う。