ルールーのお気に入り

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お気に入りをツラツラと…

映画『ぐるりのこと。』

2008-06-17 23:58:40 | 恋する映画
90年代の殺伐とした事件の数々と並行して描かれる、「いろいろあるけど一緒にいたい」夫婦の、10年に及ぶ希望と再生の物語・・・。
※公式サイト→コチラ




リリー・フランキーが役柄にピッタリで、とってもイイ味を出していてびっくりしました。

美術教室で講師をやる傍ら、普段は靴の修理のアルバイトをしていたのが、先輩の紹介で法廷画家をやり始める、生活力がなさそうでちょっといい加減な、どこか飄々として女好きでのんびりした性格のカナオという男です。


妻は小さな出版社に勤める几帳面で少し融通がきかない、というかなんでも計画通りにしないと気が済まないちょっと口うるさい女性・翔子で、これを木村多江さんが演じています。

木村多江さんは好きな女優さんで、ドラマの「てるてるあした」とか「アンフェア」とか「大奥」とか、彼女の芯が強く綺麗なんだけど幸が薄そうな控え目な女性という役どころが、いつも雰囲気があるなーと思っていたんですが、今回の役は最初は下ネタ系も同僚と話したり、排卵日を計算してなのか、この日に「ヤル」と決めたらどんなに夫が疲れていようが決めたことだからとムードもへったくれもなく無理強いする女性で、今までのイメージとは全然違う感じ。
ていうか、あんな美人でもそんなことされたら、外の女にちょっかい出したくなるってもんだろうなーと思う。

でも二人のやりとりがすごく自然で、序盤はユーモアもあって思わずクスリとしてしまうセリフもあったりして、軽い癒し系コメディのようでした。


ところがようやく授かった命に喜んでいたのもつかの間、その子供を亡くしてしまって、翔子は生真面目な性格が災いしてかどんどん心が壊れていってしまうのです。。





翔子の変り様は、観ていて本当に切なくなりました。
いろんなことが上手くやろうとするほどできなくなって、そのたびにパニックに陥る様子は鬼気迫るものがあるのですが、でもそんな翔子の背中をカナオは優しくさすってあげるんです。

法廷画家として、90年代を騒がせた悲惨な事件のやり切れなさ、凶悪犯たちの悪意を目の当たりにするうちに、自分だって子供を亡くした親で辛いのは同じはずなのに、もっと世の中には悲惨な目に遭って殺されてしまった子供たちがたくさんいるのだと、その親御さんたちの姿を見るにつけ、最初はいい加減で頼りなさげだったカナオの、辛いことを受け止められる心のキャパシティーが広くなっていったのかもしれません。


心の病に苦しみぬいている翔子からどんなに攻められても、黙ってそれを受け止めそっと傍にいるカナオ。
どうして一緒にいるのか?と問い詰められれば、「好きだから一緒にいるんだよ」と優しく諭して抱きしめてくれる・・・


誰かがずっと自分を見守ってくれている、そう信じられれば、人は希望が持てて辛い出来事からも立ち直りだんだんと再生できるものなんだろうなーと、ちょっと似たような状況に陥っている知り合いを想い出しながら思ってしまいました。。





ところでカナオが似顔絵を描くために傍聴する法廷で映画に登場する事件は、90年代に実際にあった事件を彷彿とさせるモノばかりで、これらの公判シーンもかなり見応えがあります。

折りしも昨日死刑執行された宮崎某の事件もあって、本当に法廷ではこういう態度でこんな証言をしたんだ!と思ったらとてもショックでした。
それ以外にも、子供たちを殺された上に、犯人にひどいことを言われた親御さんたちの気持ちを思うと居た堪れなくなったり。。
それぞれの犯人や証人を演じている俳優陣も巧くて、非常に臨場感たっぷりだったのでした。

連続幼女殺人事件もそうですけど地下鉄サリン事件など、本当に今思い返すと90年代ってショッキングな事件が多かったなーと。
もちろん現代だって悲惨な事件はたくさんあるけれど、少し麻痺してしまったというか、90年代はこうした異常な凶悪犯罪の、それ以前と明らかに事件の質が違った感じがして、そういう意味では激動の時代だったような気もします。。





丁寧に丁寧に夫婦の「ぐるりのこと=身の回りのこと」を見つめ、希望が持てる夫婦の再生を描いていて、なかなかしみじみと心に沁みる映画だったのでした。

後半だんだんと翔子が立ち直っていく過程で、絵を描いたり野菜を育てたり、生き別れになった父親に逢いに行ったりと、日々の些細な出来事の積み重ねで、2人の結びつきがゆっくり穏やかにでもさらに強くなって行くシークエンスに、とてもとても心がほっこりさせられます。


それにしても、リリー・フランキーは、自分の出番が終わった後も木村多江さんのシーンが終わるまで毎回残っていたようで、でもだからといって終わって一緒に帰るとかそういうわけでもなくて、ただ本当の夫婦のようにそっと傍にいた、そんな演技を超えた2人の雰囲気が映画からも伝わってきました。
本職は役者さんではないのに、恐るべしリリー・フランキー、という感じだったのでした。




・・・そんなわけで
ルールーのお気に入り度
★★★★★★★☆(75点/100点満点)
橋口亮輔監督は、自身も前作『ハッシュ!』公開後にうつ状態になったそうで、実際の経験からか非常にリアルで見ごたえがありました。
実際の事件も非常に重く、観ていて辛い部分もあるけれど、最後はじんわり優しい気持ちになれると思います♪
わたしもまた絵とか描こうかな~


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは! (とらねこ)
2008-06-20 00:49:43
ルールーさん、ご無沙汰しています。
奇しくもこないだ、宮崎被告が、処刑されましたね。
「私はやっぱり人気者だ。」「いいことをして良かった。」なんて言っていたらしいですけど、
本気で最悪ですね・・・。

ほんのチョイ役で、名の知れた実力派俳優さんがたくさん出て来て、ビックリしました
返信する
とらねこさん♪ (ルールー)
2008-06-20 21:28:54
こんばんはー☆
こちらこそおひさしぶりです~

そうなんですよね、宮崎被告・・・
あの役を演じたのは加瀬亮でしたよね?
すごく上手くて、実際の本人より見た目は良いけど、得体の知れなさが本当に不気味でしたわ。。
法廷のシーンはどの事件もいたたまれない気持ちになりました。
それだけどの役者さんたちも上手かったですね。
返信する
Unknown (mai)
2008-06-28 23:38:25


はじめまして。

今日「ぐるりのこと」を観てきました。
夫婦が絆を確かめ合うシーンに感動しました。

実際に母が今、空の巣症候群という症状で木村さんが演じていた女性のような状態になっています。

自分では感情をどうやってもコントロールできなくて、身近な人に自分の必要性を求めています。

そういうこともあり、
このシーンでは、母のことを思い、泣いてしまいました。

トラックバックさせていただきました。
ありがとうございます。
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maiさん♪ (ルールー)
2008-06-29 22:01:59
はじめまして&コメント本当にありがとうございます♪

お母様、今大変な状況なんですね。。
空の巣症候群というご病気のことはよくは知りませんが、なんとなくこの映画の翔子さんのような感じのようですね。。
傍で見ているだけでも辛いと思いますが、カナオのようにmaiさんがそっと傍にいるだけでも、きっと力になっていると思います。
翔子さんのように、いつかお母様も前向きにお元気になられることを祈っていますね。。
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