ルールーのお気に入り

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お気に入りをツラツラと…

映画『ノーカントリー』

2008-04-15 18:52:04 | 恋する映画
ということで?そろそろ映画の話題。
実は先日観た例の映画のあまりに衝撃的なインパクトからなかなか抜けられず、しばらく心に穴が空いてしまったような感じが拭えなくて他の映画への食指が動かなかったのでありますが、ようやく復活!
というわけで、まずは今更だけどやっぱり観ておかなきゃね、というこの作品。



いや~この映画も観終わって後を引きました。。
ご存じ2008年アカデミー賞の作品賞、監督賞、助演男優賞など主要4部門を受賞した作品。

アカデミー助演男優賞のハビエル・バルデム演じる殺し屋シガーの奇妙な風貌ばかりが目立つサイコサスペンスと思いきや、わたしなどよくよく噛み砕いてもいまだ「理解」の扉の前にすら立てないような気がするほど、非常に哲学的なストーリーでした。





発端はテキサスの果てしなく虚しく広がる荒野で、ベトナム戦争帰りの男モス(=ジョシュ・ブローリン)が、ハンティングの最中に麻薬取引のもつれから撃ち合いになった後らしい惨劇の現場に遭遇するところから。
残された大金をネコババしたために、モスはシガーに追われるはめになるのです。


もうこの惨劇の跡地に転がる屍体の、あまりにリアルな、まるで血の匂いや少し腐敗しかけた匂いまでもしそうな空ろな屍体ぶりに、いや~なモノを呑み込んだ気持ちにさせられました。
おびただしく流れたであろう血は、乾ききった大地にただ滲み込んでいくだけ・・・
冒頭でシガーが保安官を殺害するシーンとともに、こうした「死」のあまりにリアルな表現によって、まずこれから始まる物語の特異な世界観が植えつけられます。。

そして普通の一般市民ならあっさりシガーに殺されるであろうところを、モスはベトナムでの極限状態で培ってきたサバイバル能力や戦闘能力、度胸といったものを駆使してタッチの差で逃げおおせるので、モーテルからモーテルへ場所を移しながら続くこの2人の攻防、駆け引きが、観ていてさらなる異常な緊張を強いてくるわけです。

彼らを追う老保安官ベル(=トミー・リー・ジョーンズ)が惨劇の現場に引き返した時の、高圧ボンベで壊した鍵穴のアップ映像、息を殺して潜んでいるシガーの姿にも心臓がバクバク・・・





異常な緊張を強いて体を強張らせるのは、こうした映像による絶妙な“間”と“沈黙・静寂”が一役買っているのは言うまでもありませんが、やっぱりシガーのそのボリュ-ミーなおかっぱ頭の奇妙な風貌から発せられる見た目のインパクト、そして普通の理屈が全く通らない唐突過ぎる彼の行動・彼の存在そのものが、得体の知れない恐怖の塊となって、観ているわたしたちの心の奥底にも忍び寄り、巣食って行くからなのでしょうね。。

会話が噛み合わないことの怖さったら、尋常じゃないです。
頭をフル回転させたところで、彼に殺されないで済む受け答えなんてできそうにありません。。
せめてコインを出すところまでこぎつければいいけれど・・・

よく現実の凄惨な事件の後、人はその犯人を生みだしたバックボーン、たとえば育った環境とか体験などを知ることで、「自分とは別の次元の人間」であると安心したり納得したりしたがるものですが、シガーの場合、そうした具体的な背景が何もない(というか見えてこない)んですよね。

そのことは、結局最後までシガーともモスとも直接対峙することはなく、ただ悲惨な事件の痕を見せつけられるだけだったベル保安官にも、言いようのない敗北感を植え付けるわけです。

ラストシーンのあの長いセリフの解釈をめぐってはいろいろと論議されたようですが、あの夢の話から見えてくるのは「途方もない現実への挫折や絶望」と、一方で「ほんの些細な希望」についてなのかな???(ひぇぇぇっ~違うかも・苦

殺人鬼シガーと彼に狙われる逃亡者モスが繰り広げる凄惨な事件を通して、彼らを追いかけながら、実際には事件の収束になんら手だてを打つことができなかった老保安官ベルが体感する、「もはや想像力の域を超えてしまった」現代への絶望感・虚無感・挫折感といったものを描き、それでも生きて行かなきゃならない現実・・・みたいな。


原題は『NO COUNTRY FOR OLD MAN』ということなので、「ここはもはや老人たちの住む場所ではない」といった意味なのでしょうか。

おそらくは観た人それぞれに解釈が違うであろう、明確な答えはないけれど観終わった後にどうしてもいろいろ考えてしまう映画、という意味でも凄い映画だったことは間違いないと思います。



・・・そんなわけで
ルールーのお気に入り度
★★★★★★★★(80点/100点満点点)
※非常に緊迫感を伴い、緊張で身体が強張ってしまったほど、どっぷり映画の世界に釘づけになりました。
非常に有意義な映画だったけど、次に観た映画はさらに釘づけに。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは☆ (きらら)
2008-04-18 21:52:13
ルールーさん♪
私もまったくこの映画の真髄に達していないかもしれないけれども、、、どっぷり引き込まれてしまいましたよー。
いやいや~あのシガーの恐ろしさ。。。
モスも逃げ切ったかと思いきや、あっけないけど衝撃的な結末で。。。
私もずーっと緊張感でいっぱいいっぱいでした。

次の映画は、、、あの作品なんかな?
レビュー楽しみにしています!

あしたはドームに野球観にいく予定です♪
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きららさん♪ (ルールー)
2008-04-19 10:57:58
ホントに哲学的な映画でしたよねー
でもそういうのと別の次元で、頭だけじゃなくて体まで反応して緊張しまくってしまったというのが、本当にすごかったです。
わたしはアカデミーに値する映画だったと思いますわ。

次に観たのはアレです。(^^;;;
実はもう1回観たいくらいなので検討しているところで、まだ途中までしか記事書いてないの。
どうしよー

それで本日は東京ドームに野球観戦ですかー
珍しいですね~
あ、それってオリックスvsロッテかな?
わたしも誘われたんだけど、夜神宮にヤクルトvs阪神戦を観に行くので遠慮したのでしたー。
キャ~行けばきららさんに逢うことができたかもね。
残念ですわ~
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こんにちは♪ (ミチ)
2008-05-08 14:45:30
連休は野球観戦三昧でしたか~?
私は信州まで行ってきました
日常生活に戻ってバタバタしていてTBのお返しがすっかり遅れてゴメンナサイね。

さすがはオスカー受賞作でしたねぇ。
あれほど緊迫感のある作品は最近無いかもしれません。
そして意味深な終わり方!
何を言いたかったのか正解は無いのかもしれないけれど、私も虚無感とか諦観などを感じました。
主演三人がみんないい演技だったな~と!

そうそう、「実録、あさま山荘への~」がとうとう6月にこちらに来るんですよ!
できれば初日の監督舞台挨拶を見たいなと思ってます!
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ミチさん♪ (ルールー)
2008-05-09 20:13:41
コメントどうもです~♪
ミチさんは信州まで旅行されていたんですね。
いいなー、昨年今年とお金かかるし混んでるしで、GWに旅行に行く習慣がすっかりなくなってしまったわが家ですわ。

ところでこの映画、ここにきてさらに拡大?で公開されているようで、じわじわ評判が上がってきているような。
本当にさすがはオスカー受賞作という、非常に考えさせられる、後引く映画でしたわ。
あの終わり方は、すごく唐突でしたよね。
意識してないとうっかりなんの会話だったのか見逃しそうなほどに。
でもとても唐突で不思議な会話だったので、とても印象に残ってます。
(といっても理解できてるか微妙なんですが^^;;;
3人はホントに凄かったですね。
トミー・リー・ジョーンズなんて、日本では宇宙人なのに!!(笑)

ところでところで、きゃ~とうとうそちら方面でも『実録 連合赤軍~あさま山荘への道』やることが決まったんですね!
監督の舞台挨拶なんてすごすぎーーー!(羨)
しっかりいろいろ聞いてきてくださいね!
レポよろしくです~♪
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お久しぶりです☆ (ノルウェーまだ~む)
2009-06-18 20:05:00
ルールーさん、お久しぶりです♪
ラストの唐突な終わり方が、いろんな人にいろんな感想を持たせるためだったのかなーと思っています。
ルールーさんもお気に入り度が高いですね。
私も初コーエンながら、すっかり嵌ってしまいそうです。
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ノルウェーまだ~むさん♪ (ルールー)
2009-06-19 21:43:32
おひさしぶりですー
こちらこそご無沙汰しちゃってすみません!!

この映画は今思い出してもザワザワする感じが蘇ってきますわ。
昨年の6位にランクインしました。
観終わってあれこれ考えさせられる映画は、なんとも楽しいですね。
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