ルールーのお気に入り

野球(ファイターズ)・映画・本・写真・TV・料理・旅行・嵐&東方神起(^^;;;
お気に入りをツラツラと…

映画『ジェシー・ジェームスの暗殺』

2008-01-29 14:09:38 | 恋する映画
実は先日の今年の初映画鑑賞直後に急に気分が悪くなって、それは今まで経験したことのないような相当なもので、もちろん映画そのものや映画館に原因があったわけではないのだろうけど、とりあえずしばらくは映画館で映画を観るという行為に少し躊躇していたわけなのでした。
せっかく昨年あまり観れなかった分、今年は年始からビシバシ映画観るぞー!と息巻いていたのに、のに・・・


ま、そんなわけで映画鑑賞再開のしょっぱなはできるだけ明るく短い映画にしようと思っていたのに、なぜかこのあまりにも深遠なる映画が妙に気になってセレクト。
2時間40分という長尺だけど、わたし的には美しい映像と息詰まる心理戦の駆け引き、そしてヴェネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞して評判の高いブラット・ピットと、今回アカデミー助演男優賞にノミネートされたケイシー・アフレックの2人の演技に引き込まれて、気分悪くなるのも忘れてました。(^^;;;;;




19世紀のアメリカ・・・犯罪者でありながらその圧倒的なカリスマ性で、まるでヒーローのように崇められていたジェシー・ジェームス。
ブラット・ピット演じるこの「ジェシー」がケイシー・アフレック演じるロバート・フォードに暗殺されるにいたるまでの心理劇。



南北戦争後、仲間を率いて銀行&列車強盗を繰り返し17人もの殺人まで犯しながら、なぜヒーローのように今もなお伝説的に語り継がれているのか・・・

ジョシー・ジェームスについては正直全く知識はなくて、それどころかそもそもこの映画がそういう時代のそういう人物の話だというストーリー的な予備知識も全くないままに鑑賞し、しかも映画始って5分以上は経ってから着席したという・・・
この映画を観るにはあまりにリスクのあるスタートだったのだけど、もしかしたらそれがかえってよかったのかも?
しばらくは状況や人間関係がつかめず置いて行かれたままだったので、とにかくそれらの断片を必死で紡いでいるうちに、いつの間にかストーリーの中に入っていけたみたいでした。

特に列車強盗をするために準備を始め、線路に耳を当てて彼方の列車の音を聴き、暗闇の向こうからスポットライトを浴びたかのように列車が登場してそのヘッドライトに照らされたブラピの後姿を観たとき、それらのシーンのあまりの美しさにまず目を奪われて、そこから一気に引き込まれてしまった。。




ブラット・ピットの演技は、「狂気」とどうしようもない「孤独」「怯え」が常に背中合わせにあって、その表情のひとつひとつにハッとさせられ通しでした。
特に眼に涙を溜めながら何も語らず・・・というところには、とまどいながらゾクッと背中が冷たくなったり。

映画は実はロバートが主役なんじゃ?と思うほど彼の主観に沿いながら進むので、ジェシーの気持ちは客観的にしかわかりえない。
そのことは逆に、観客にもロバートたちと同じようにジェシーという人間のとらえどころのない不可解さと緊張感・恐怖感を植え付け、ロバートがあんなにも憧れたジェシーを暗殺するに至る心理が理解できるわけです。

で、それはやっぱり、ブラピの自分で自分の演技を客観視したような、たぶん他人に本当の自分を見せなかったであろう実際のジェシーに同化したような演技が、あまりにも冴えていたからだと思うのです。
同時に、ヒーローに祭り上げられていたカリスマ・ジェシーが、実は人を惹きつける魅力的な男なだけでなく、猜疑心の強い、常に恐怖に苛まれていた狂気に満ちた男でもあったことも浮き彫りにしていく。。。


一方のロバートを演じたケイシー・アフレックも素晴らしかったー
最初は使えない男のようで、実は頭もよく野心を持って策をめぐらし、だんだんと羨望から恐怖へ変わってジェシーを暗殺するまでの微妙な心の機微を、見事に演じてましたね。
その兄を演じたサム・ロックウェルも、必死に空気を読もうとしている様子が哀しいほどに可笑しかった。





映画はとにかく長いです。
ナレーションで状況説明する部分も多く、退屈に感じることもあるかもしれない。
ただストーリーを追うだけならもっと簡潔にできたのだろうけど、人物の表情ひとつひとつに時間をかけ、そして登場人物の心理状況を表しているかのようなひとつひとつの「画」にも、非常に時間をかけて表現されています。

とにかく「画」が美しいです。
中央にだけフォーカスを合わせて周りをぼかしたり、まるで撮影時の天気までが映画の心情と寄り添っているかのような、光の具合とか雲の動きとか・・・自然もすっごく美しい。




「俺のようになりたいのか、俺になりたいのか」

ある日ジェシーがロバートに言った言葉だけど、本当に「ジェシー」になりたかったのは「ジェシー自身」だったのではないか・・・

暗殺された時、ジェシーは壁にかかった額を直そうと台に上がった。
いつも必ず身につける銃を携帯せずに。
あの額のガラスに映るフォード兄弟の気配を感じたはずで、これ以上怯えを感じながら狂気の世界に身を置くことに、自ら終止符を打ったように思えました。。


心理的な駆け引きに息詰まり、美しい「画」に圧倒された映画でした。
アカデミー賞も楽しみ♪



・・・そんなわけで
ルールーのお気に入り度
★★★★★★★★(80点/100点満点)
※長い映画なので万人にはおススメできないかも。
でも、わたし的にはけっこうハマりました。


←ひっそりと参加中♪_(-_-)_ペコリ

当ブログの【映画レビューINDEX】



最新の画像もっと見る

14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして! (真紅)
2008-01-29 16:38:10
ルールーさま、こんにちは。拙記事にコメント&TBをありがとうございました!
私も、深くて重い映画だと思ったのですが、何せ観た日は絶不調で・・・。
もっと体調のいい日に観るべきでした。
ブラピも、ケイシーもいい演技でしたね。私も、主役はボブなんじゃ・・と思って観ていました。
サム・ロックウェルが徳永英明に見えてしまいましたが、彼もよかったですね。
映像も美しく、大きなスクリーンで観るに値する作品だったと思います。
ではでは~。
返信する
真紅さん♪ (ルールー)
2008-01-29 17:29:02
こんにちはー&コメントどうもありがとうございます♪

いや~この映画は体調悪い日だと辛いかもですね。
早く終われ~って念じてしまいそうです。(^^;;;
わたしも実は、その前に映画館で映画を観たとき気分悪くなって、こんなに長いし途中で具合悪くなったらどうしようって心配だったんですけど、そんなの忘れるくらいブラピとケイシーの演技に没頭してました。

でもってサム・ロックウェルが徳永英明ですかー?
言われてみれば似てなくもないかもしれなくもないというか・・・
彼もすごく上手かったですね。
結局はジェシーにロバートにって翻弄されて、気の毒な男でした。
なかなか評判も二分されている映画ですけど、やっぱり観るなら大スクリーンで観るべき映画でした。
ということで、今後ともよろしくお願いします~
返信する
ルールーさん☆ (mig)
2008-01-29 18:40:42
お久しぶりです~、コメントTBありがとです

キャストたちが良かったから
これでも思ってたより評価高いんですよ、わたしの中では、、、、(笑)
ほんとは、相当つまらないと聞いてたから☆2とか☆3とかかなと思ってたので

中盤は長いなーとだらけちゃったけど
後半の30分が良かったナ。
返信する
こんにちは。 (隣の評論家)
2008-01-29 19:44:28
TB&コメントありがとうございました。
大丈夫ですか?体調の方は・・・

かなりの高評価なんですね。
何だか読んでいて嬉しくなってしまいました。
とても緻密なドラマでしたよね。
雑誌か何かで、ブラピ自身が「これは西部劇じゃなくて心理ドラマなんだ」って語っているのを読みました。
ロバートに一番感情移入しますが、兄のチャーリーが1人で気を揉んでいるように見えたり。
ジェシー自身にも葛藤があるように思えたり。しかも、誰にも見せていませんでしたよね。
ロバートにとってジェシーは特別な存在でしたが、ジェシーにとってもロバートは他の男たちとは違う存在だったのかなーなんて思います。他の面々は、ジェシーに対して慎重だった気がするけど、ロバートだけは真っ直ぐにぶつかっているようにも思えて。だからこそ、わざとロバートに背後から撃たれたのかと思っている今日この頃。
この作品、鑑賞直後よりも暫く時間が経ってからの方が色々と思いをめぐらせてしまう私でした。
返信する
リスクのあるスタート (えい)
2008-01-29 22:55:22
こんばんは。

この映画は、緊張感を強いる作品でした。

映画って、観るときの自分の体調一つで
いくらでも変わってきますよね。
ルールーさんにとっては
リスクのあるスタートが
結果、よかったのかもしれないですね。

ただ、2階観るかと聞かれると、
考え込んじゃうかな。
返信する
気分良好で何よりー (かえる)
2008-01-29 23:06:45
ルールーさん、こんばんはー。
うひょー。80点獲得嬉しいですー。
すんごい美しい映像に大満足でしたー。
緊張感に見舞われつつも美しさにクラッとしまくり。
ブラピもケイシーも素晴らしかったですよねー。
サム・ロックウェルのから笑いもサイコーでした。
返信する
migさん♪ (ルールー)
2008-01-29 23:56:09
コメントどうもです♪

へー!相当つまらないって噂だったんですか??
わたしはほとんど噂もなにも知らず、たまたまカードの有効期限が切れちゃっててすぐにでも更新しなきゃいけなかった映画館でやっていた映画の中で、この映画はたしかブラピがどっかで賞獲った映画だったなー、ついでに観るかーみたいな軽い気持ち&無知識で観たのでそれが逆によかったんでしょうかね。

最後の30分ほどはクライマックスからまたガラリと場面が変わって面白かったですよね。
あんな展開になるとはびっくりでしたわ。
返信する
隣の評論家さん♪ (ルールー)
2008-01-30 00:11:56
コメント本当にどうもありがとうございます♪
隣の評論家さんの記事は共感するところが多かったですわ。
本当に緻密で、心理合戦とでもいうような駆け引きにはゾクゾクしました。

>「これは西部劇じゃなくて心理ドラマなんだ」

いや~実はわたしはなんの予備知識もなかったので、最初から心理劇として観ていて、逆に鑑賞後にジェシー・ジェームスは西部劇のヒーローみたいなフレーズを読んで、ええー西部劇??と驚いた次第で・・・(^^;;;

>ジェシー自身にも葛藤があるように思えたり。しかも、誰にも見せていませんでしたよね。

そうですよね、そのあたりのブラピの演技には感服しました。
狂気を演じても、気持ちはこちらにわからせないみたいな、客観的な演技とでもいうか。

>ロバートだけは真っ直ぐにぶつかっているようにも思えて。だからこそ、わざとロバートに背後から撃たれたのかと思っている今日この頃。

ひや~そうですねっ!
隣の評論家さんに言われて納得です。
だからガンベルトを外して、無防備に背中を向け、ガラスに映っていたかもしれないのにやり過ごしたのでしょうね。
自分が狂気と怯えの世界から解放されたかっただけじゃなくて、ロバートだからこそだったのかも。
ホントあとからじわじわですね。

返信する
えいさん♪ (ルールー)
2008-01-30 00:17:33
本当に緊張感を強いるっていうのがぴったりの表現の映画でした。
最初ちらっと見逃して、早く追いつこうとしていたから最後まで集中して観れたのかも。

ただおっしゃる通り、2回目わざわざ行くかと聞かれれば、わたしも微妙です。
でもまた新しい発見もあるかもしれませんね。
返信する
かえるさん♪ (ルールー)
2008-01-30 00:22:45
かえるさんの記事読んだときは、おおー同志だーと思いましたわ。
他の方のには長いことがネックのようなのが多かったから、わたしはそりゃー長いとは思ったけどだからといって別に退屈では全然ないなーと思っていたので、かえるさんの高評価にかなり嬉しかったです。

そうそう、映像はとにかく美しかったですよね~
そして出演陣の演技もサイコーでしたわ。
ブラピがオスカーにノミネートされないのがメッチャ不思議です。
返信する