☆Lorosae(太陽が昇る)ブログ☆

ロロサエという言葉は、東ティモールで使われているテトゥン語で、つまりは「日の丸」です。

きいろいネズミとにゃんこのツバキ⑤<完>

2020-08-12 23:13:23 | 作品
めがみさまはへんじをせず、そのままとなりのきいろいネズミにこえをかけました。きいろいネズミはまっすぐなめで、めがみさまをみあげていいました。
「わたくしはこのさきのぎょこうからやってきました。ぎょこうで、にんげんに、とてもだいじにされました。だからあのひ、たいへんなことがおきるようすをみて、おんがえしができないかとめがみさまのことをおもいだし、まいりました。どんなことでもやってみます。わたくしにちからを、あたえてください。おちえを、おかしください。」
クマもイノシシも、もう、それぞれのねぐらにかえったのでしょう、すがたはみえませんでした。
めがみさまはすこしばかりうつむいたあと、かおをあげていいました。
「うみのちかくのまちで、さんりくてつどうをにんげんたちがはしらせたの。それがみんなのげんきにつながっているのよ。きいろいネズミもれっしゃになってみたらどうかしら?なかまをあつめてひとつの、とくべつなれっしゃになって、うみのまちへ、たのしむヒトたちをおくりとどければ、うみのまちに、げんきをとどけられるのではないかしら。そして、にゃんこのツバキは、つばきいろのバスになって、せんろをなくしたみちを、はしってみたらどうかしら。おとしよりや、こどもたちがたすかるし、いつもいっしょにいられるのではないかしら。」
めがみさまはそういいおえると、あさつゆがきえるようにやまのすがたにもどっていきました。

そのひのゆうがた、にひきは、かっぱのかぞくにそのことを、そうだんしました。
「なかまといっしょにか。よし、みんなにつたえてみるから、まってなさい」
さっそくせんまやから、たぬきのおやぶんというのがやってきて、おんがえししたいなかまがたくさんひなんしていることをおしえてくれました。
「れっしゃになってはしるとしたら、いちのせきからけせんぬまだな」
たぬきのおやぶんがちずをかきます。きいろいネズミがねっしんにかきとります。
「もともとはおおきなりゅうのれっしゃがはしっているところだから、あんしんするといいよ。だけど、もんだいはせんろがなくなってしまったところだね。りゅうはね、ふつう、おおきなほうせきのたまをおいかけて、いったりきたりするものなのだけど、せんろがそのかわりだったからせんろがなくなってしまったとなるとなぁ。」
たぬきのおやぶんはでっぷりしたおなかに、ちいさなてをあててこまりがお。
「きみ、おおふなとのみち、くわしいかい?」
きいろいネズミが、にゃんこのツバキにたずねました。
にゃんこのツバキはポンとむねをたたきました。「くわしいもくわしくないも、めをつむったってあるけるよ。うみのにおいのとおいちかいでそこがどこかがわかるぐらいだよ。なみのおとだってききわけられるよ、うまれそだった、このよのなかに、たったひとつの、ツバキのまちだもの。」
それをきいたたぬきのおやぶんが、おなかをポーンとならしました。
「それなら、はなしはきまったね!」

こうしてめでたしめでたし、にひきはなかまといっしょに、おおきなりゅうのれっしゃのせんろを、せんろだったところを、はしることになったのでした。
いちのせきからしゅっぱつするきいろいネズミがひきいるとくべつなれっしゃは、こどもだけではなく、おとなにも、がいこくのひとにも、だいにんきです。
けせんぬまについてからは、つばきいろのバスがはしります。バスには、なかまがえがかれています。せんろだったみちだけではなく、にゃんこのツバキだからしっている、とくべつなみちもはしります。
まっかなまっかなツバキがさいて、おいしいりょうりがまっている。うみのいろはどこまでもとうめいでうつくしく、おおきなほうせきのたまが、そらにそのいろをうつしています。ふりかえればやまやまのむこう、めがみさまがみまもっています。ひだまりのえんがわにいるような、おおふなと。
きいろいネズミとにゃんこのツバキは、なかまといっしょに、このまちにいきています。

おしまい

※第29回ふるさと・おおふなとお話大賞に投稿した作品を自身のブログにて連載投稿しています。

きいろいネズミとにゃんこのツバキ④

2020-08-11 22:36:27 | 作品
にゃんこのツバキはきいろいネズミにそうだんしました。
「おおふなとにかえりたいのだけれど、きみはどうおもう?」
きいろいネズミはいいました。
「もうすこしたつとこのまちに、めがみさまがあらわれる。どうぶつとはなしができるからめがみさまにそうだんするといいよ。ぼくは、そのことをおもいだしてここまできたんだ。あのひ、すぐおもいだしたよ。」
きいろいネズミは、ぎょこうにくらしていたそうです。ながぐつのいろしかおぼえてないけれど、とってもきまえのいいおじさんがいて、サンマやサバのかけらをくれたことがあったそうです。つかまえたりしないでいてくれたのだそうです。
にゃんこのツバキはこどもかっぱにきいてみました。「このまちにめがみさまがくるって、ほんとう?」「ほんとうだよ。」こどもかっぱがいいました。なんでもいつもはやまなのだけど、そのひだけヒトのすがたになるのだと。そして、どうぶつたちにくらしぶりをきいて、にんげんにおしおきしたりおわびをしたりするのだと。みどりのはっぱがひときわキラキラかがやくあさが、そのひだとおしえてくれました。

ゆうべはとってもさむくって、あさひがのぼると、とたんにあつくなってきて、みどりのはっぱにつゆがうまれて、キラキラかがやきはじめました。
クマ イノシシ シカ などなど、さまざまなどうぶつがやまいりぐちに、あつまりだしました。「きょうだ!めがみさまがあらわれるんだ!」にひきはめをあわせました。
にゃんこのツバキもきいろいネズミといっしょに、ならんでまちました。
こどもかっぱがおしえてくれたとおり、そのほどにめがみさまはあらわれました。

はしからじゅんばんに、どうぶつのはなしをきいています。パーンとなってこわいのがイヤだとイノシシがいいつけたり、ビリビリするのがキライだとシカがいいつけたり、にんげんとくらしていることのようすを、めがみさまはどうぶつからきいて、なだめたり、どうじょうしたり、なにがしかへんじをしていました。にゃんこのツバキときいろいネズミはさいごでした。もうすぐじゅんばんがやってきます。たいようのひかりでからだがジリジリしてきました。もうすぐにゃんこのツバキです。そしてついに、めがみさまがめのまえにやってきました。
「めがみさま、わたしはおおふなとにかえりたいです。きょうだいネコやおばあさんや、にんげんのこどもにあいたいです。」

「にんげんにあいたいだなんて。」ほかのどうぶつがヒソヒソはなしながら、こちらのほうをみてきます。
にゃんこのツバキだって、いっぴきでいきているとおもっていました。にんげんとくらしているとおもったことなんて、ただのいちどもありません。だけど、きょうだいネコがだっこされたのをみたとき、むねがキューッとなりました。だっこしてほしいとおもいました。そしておなじひ、じめんがぐらぐらしたことで、もうあえないのかもしれないとおもうと、むねのなかのおさらがパリンと、われたおとがするのでした。

つづく

※第29回ふるさと・おおふなとお話大賞に投稿した作品を自身のブログにて連載投稿しています。

きいろいネズミとにゃんこのツバキ③

2020-08-10 23:01:19 | 作品
「ねぇ、きいろいネズミさん。きみのこと、
たべないから、こっちにおいでよ。さむいから、いっしょにいようよ。」
はるだというのに、ゆきがふっていたのでした。さむくてさむくてどうしようもないよるだけど、またたくほしぼしは、くらやみをさんさんと、あかるくあかるくしていました。きいろいネズミは、にゃんこのツバキのおなかでまるまってねました。あさになると、かっぱがたべものをわけてくれて、にひきでいっしょにたべました。こどもかっぱがききました。
「にひきは、どこからきたの?」
にゃんこのツバキは「おおふなとから」と、こたえました。
「おおふなとからここにきたの?きみしってる?きのう、かっぱぶちのおじさんがはなしていたけれど、たいへんなんだって、うみのほうは、たいへんなんだって。」「しばらくここにいるといいよ」、かっぱのおじさんとおばさんがいいました。
にゃんこのツバキはしばらくのあいだ、かっぱのかぞくと、きいろいネズミと、いっしょにくらすことにしました。
…おおふなとたいへんなんだ。きょうだいネコたちはどうしているだろう。さかのうえのツバキのきは、どうなっているのだろう…
にゃんこのツバキはたのしかったまいにちをおもいだし、とおく、おがわのさきをみつめました。
それはそれはたくさんの、おおきなおおきなおおきなくるまがくるようになりました。だまったままのヒトたちを、いくにんもみました。まえみたいに、ネコがいるからって、なでてくれるようすもありません。
…ツバキのきのしたで、ねむりたい…
ひにひに、そのおもいはつよくなりました。
きょうだいネコにあいたいし、おはなしずきのおばあさんに、なでられたいです。あのいえの、あのえんがわで、のんびり、あくびがしたいのです。

つづく

※第29回ふるさと・おおふなとお話大賞に投稿した作品を自身のブログにて連載投稿しています。

きいろいネズミとにゃんこのツバキ②

2020-08-09 22:34:02 | 作品
あるひ、きょうだいネコのいえのコの「そつぎょうしき」にさそわれ、にゃんこのツバキはからだをなめなめ、みだしなみをととのえ、はるのうみのにおいをかぎながら、きょうだいネコといっしょにさかをくだっていきました。しきがおわったらしく、どんどんヒトがでてきます。あまりにもヒトがおおくて、だれがそのコなのか、にゃんこのツバキにはわかりません。ふとあらわれたヒトのコが、きょうだいネコをだきあげました。にゃんこのツバキは、うまれてはじめて、うらやましいとおもいました。
「じゃあね、ばいばい。」
にゃんこのツバキはいっぴきでさかみちをのぼりかけたとき、まさに、そのときです。ゆらゆらゆらゆらごうごうごうごう。じめんが、やまが、うみが、きが、いえが、からだが、おおきくおおきくおおきくゆれたのです。にゃんこのツバキはおどろきました。そしてさらに、まさにそのときです。サッとめのまえを、きいろいネズミがはしりぬけたのです。
にゃんこのツバキは、くるまのまえにとびだしてしまい、つよくつよくしかられたことがありました。そういうのと、にていることがおきているのかもしれません。むねのドキドキがおさまらないけれど、きいろいネズミがきになってしかたありません。
にゃんこのツバキはまわりをぐるりとみわたしました。
「きいろいネズミ、どこにいったかな。」
きゅうに、えんがわのおばあさんのことをおもいだしました。きんがうまっているとなりまちのおおきなへびのむかしばなしをしてくれたこと。おおきなへびは、つまりはおおきなりゅうのことだって、おおふなとをはしるれっしゃのはなしになったっけ。おばあさんがおおきなりゅうのれっしゃにのったはなしを、みんなでいっしょにきいたっけ。
もしかして…きいろいネズミはれっしゃのほうにいったのかな?
にゃんこのツバキはれっしゃのほうへはしりました。くろくておおきなみずのかたまりが、さかのしたから、こちらにむかってくるのがみえました。
「こわい、こわい」
そのときまた、きいろいネズミが、あらわれました。
「あ!あそこにいる。まって!まって!!まって!!!」
きいろいネズミはピカピカひかっているようにみえました。にゃんこのツバキにいるところをおしえてくれているようでした。
やまのほうへ、たかいほうへ。こっちだ、こっちだ。にげろ!にげろ!!にげろ!!!
にゃんこのツバキはきいろいネズミをおいかけて、はしってはしっていつのまにか、かっぱがくらしているおがわのところにたどりつきました。あたりはくらくてかっぱのかぞくがこちらをみているめがむっつ、ひかってます。きいろいネズミもこちらをみています。

つづく

※第29回ふるさと・おおふなとお話大賞に投稿した作品を自身のブログにて連載投稿しています。

世界の時間